00000JAPAN 4月14日発生した「平成28年熊本地震」は、収束のめどが立たないまま3日目の夜を迎えました。亡くなられた方々のご冥福をお祈りするとともに、被害を受けた皆さまにお見舞い申し上げます。
 今回の地震災害では、被災地で無料のWiーfi「00000JAPAN」(ファイブ・オー・ジャパン)が初めて解放されました。iPhoneなどのスマートフォンから接続すれば、月々の通信量の上限に関係なくアプリケーションなどが利用でき、情報収集や連絡手段として使えます。ネットを活用した音声会話(facebookのメッセージ機能、LINE電話、Skype)アプリを利用すれば、通常の会話も無料で可能です。
 NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクなどが、普段はそれぞれのスマートフォン、携帯電話を使っている人向けに設置しているWi−Fiを、被災地で誰でもつなげられるようにしたものです。
 スマートフォンのWi−Fi設定でSSIDを「00000JAPAN」 を選択すれば利用できます。携帯電話事業者のWi−Fiサービスを契約していない人でも利用できます。

遅れるWi−Fiスポット整備、「費用対効果が低い」自治体は消極的
 スマートフォンが普及するにつけて、無線LAN(Wi−Fi)は、大規模災害時の通信手段として重要視されるようになりました。
 Wi−Fiの施設別普及率は、総務省の研究会が2015年5月に取りまとめた報告書によると、役場などの庁舎施設が9%、避難所1%、避難場所0.1%と、ほとんどWi−Fiが整備されていません。全国の庁舎施設は約9000カ所、避難場所・避難所は約8万8000カ所あることから、それぞれの普及施設は900カ所弱、1000カ所程度にとどまっています。
 外国人観光客らのニーズが高く、経済効果が見込める施設は、民間事業者によるWi−Fi整備が望めるが、防災拠点のように“いざという時”への備えは自治体主導で進めなくてはいけません。しかし、「コスト(費用)に見合う効果が期待できない」と後ろ向きな自治体が多いの現実です。
 そこで政府は、避難所などへのWi−Fi整備を進めるため、自治体などに対し費用の一部を補助する事業を実施中です。2020年の東京五輪・パラリンピックに向け、外国人観光客数や費用対効果を考慮して絞り込んだ「重点整備箇所」への設置完了をめざします。該当する避難場所・避難所は1万3000カ所。避難所は公立中学校区当たり1カ所が目安、庁舎施設は全てが重点整備箇所です。
徳島県の先進事例:107カ所に重点整備
Wi−Fi設定画面 Wi−Fi普及が全国的に低調な中、徳島県は2014年度、国の補助事業も活用し、防災拠点107カ所(避難場所・避難所88カ所、庁舎施設19カ所)に誰でも無料で使えるWi−Fiを整備。さらに15年度中に十数カ所増やしました。いずれも「南海トラフ巨大地震への備え」として力を入れています。
 徳島県がWi−Fi先進地になったもう一つの理由は、高速・大容量のデータ通信が可能なブロードバンド環境が県内全域に張り巡らされていることです。徳島県ではかつて、地上デジタル放送への移行で、約7割の世帯が近畿地方など県外の放送を視聴できなくなる可能性がありました。そこで2002年度から9年間かけて、全市町村にケーブルテレビ(CATV)網を整備。この全国屈指のインフラ環境がWi−Fi普及の土台になっているのです。
 Wi―Fiが整備済みの施設では、平時、災害時にかかわらず利用可能です。携帯電話などでWi−Fi接続をオンにして画面に表示されたSSID(アクセスポイントの識別名)から「Tokushima_WiFi」を選べば、利用できるようになっています。
 平時は安全上の観点から、利用時間30分ごとにメールアドレスを入力することになっていますが、災害時は入力も時間制限もなく使うことができます。徳島県では「日ごろからWi−Fiに親しむ中で、災害時の円滑な情報収集につなげてほしい」と語っています。

大規模災害時は、電話よりネットが有効
 東日本大震災の発災直後、家族や友人の安否を確認しようと、固定電話と携帯電話による音声通話が集中しました。NTTドコモの発表では、携帯電話の音声通信量が一時、通常の50〜60倍に上りました。110番などの緊急の通話を確保するため、ドコモは最大で90%の通信を規制。つまり、電話を10回かけて1回つながる程度でした。固定電話でも同じレベルの規制が行われました。
 一方、メールなど携帯電話によるインターネット利用は、通信規制が行われなかったり、規制を実施した事業者でも、割合が最大30%かつ一時的なものだした。その理由は、データを小包(パケット)のように分割して送る仕組み(パケット通信)を採用しているためです。一度に大量のデータを送る必要がある音声通話とは異なり、極端に通信量が増えることもないからです。そこで緊急時に強い連絡手段として注目されているのです。