災害弱者向け避難所、広報不足や施設損壊、支え手不足などが影響
福祉避難所のイメージ(愛媛県のホームページより) 一般の避難所での生活が困難な高齢者や障がい者ら災害弱者のために、自治体と協定を結んだ老人ホームなどに設置される「福祉避難所」について、熊本地震前に熊本市が約1700人の受け入れを想定していたのに、実際の利用者は100人強にとどまっています。
 福祉避難所は、高齢者や障害者、妊産婦ら配慮が必要な被災者向けに、災害時に開設される避難所です。自治体が災害救助法に基づき、福祉施設や公共施設などを指定します。国の指針によると、紙おむつや医薬品、車椅子などを備蓄し、対応にあたる「生活相談職員」を置くことが望ましいとされています。
 地震前、熊本市が協定を結んでいた施設は176カ所で、約1700人を収容できるはずでした。しかし、実際には破損により使えなくなったり、職員も被災して手が回らなくなったりして、受け入れられない施設が続出しています。
 熊本市によると、4月25日時点で避難者を受け入れているのは34施設で、想定の1割以下の129人にとどまっています。
 一方、熊本学園大は行き場がないと助けを求める声に応え、バリアフリーの新しい校舎を開放し、高齢者や車椅子の人、視覚障がい者ら60人を受け入れました。社会福祉学部の学生らが支援に当たる。ほとんどが口コミで集まったといわれています。
 なぜ、福祉避難所が利用されないのか。その理由は、福祉避難所そのものが知られていないという事実。もう一つは、その福祉避難所を担う人材の不足ということではないでしょうか。
 一般の避難所から移ってきた80代の女性は「福祉避難所があることすら知らず、相談先も分からなかった」とマスコミの取材に応じていました。一般の避難所で、個別の調査を徹底しながら福祉避難所に誘導することが重要です。
 福祉避難所の施設は確保されていても、災害弱者の支え手をうまく確保できず、事前に自治体と結んでいた協定が生かされていない、との指摘があります。(以下、朝日新聞の記事を参考に記します)
 今回の震災で福祉避難所の一つになったのが、知的障害者ら約130人が入所する熊本市東区の福祉施設。介助する家族も一緒に避難生活を送っています。
 地震を受けて入所したのは避難者4組の9人(4月24日時点)。足が不自由な小学生の長男と入ったウェブデザイナーの女性は「この子から長い間目を離すのは心配。避難所で食事をもらうため何時間も並べない。入れてもらえてありがたい」と語っています。
 一方で、この施設はトイレ介助が必要な全盲の夫婦ら3組の受け入れ要請を断りました。視覚障害の介助に特化した職員を配置するのが難しいためです。施設は停電や断水に見舞われ、職員も被災。施設長の男性は「困っている人たちを受け入れたいが、人材が不足している中、災害に備えて職員配置にゆとりを持つのは難しい」と打ち明けています。
 熊本県西原村の特別養護老人ホームでは受け入れが最大となっていた19日、食堂に置かれたベッドやマットに高齢者約80人が横になっていました。村で唯一、福祉避難所になる協定を結んでいたが、15日に5人を受け入れた後は要請を断っています。責任者の看護師は「本来の入所者の世話ができなければ、二次災害が起きてしまう」と話しています。
 こうした中で、熊本市は福祉避難所のボランティアの募集を始め、24日までに120人の申し込みがありました。希望があった約30施設の一部で約40人が活動を始めています。
 福祉・介護の専門職に関しては、県域を越えた大規模な動員を図るべきだと思います。平時から、こうした専門家を被災地に派遣できる仕組み作りが重要です。
(イラストは愛媛県のホームページから)