稲田の御影石(石切山脈) 5月10日、日本地質学会は全国47都道府県で産出する特徴的な岩石、鉱物、化石を一つずつ選び、計141種類を「県の石」(都道府県の石)として発表しました。
 各都道府県のシンボルとなる花や木などは既にあるが、石の選定はこれが初めてです。茨城県は岩石部門に花こう岩(八溝山地南部)、鉱物部門にリチア電気石(常陸太田市妙見山)、化石部門にステゴロフォドン(常陸大宮市)がそれぞれ選ばれました。
 茨城の岩石・花こう岩は、八溝山地南部の主要部をつくる深成岩類で、日本の大地が大陸縁辺部にあった約6000万年前に、地下でマグマが貫入・固結してできたものです。後に侵食を受けて関東平野に突出した筑波山塊の山並みは関東地方一円で親しまれています。
 また、稲田・真壁地域(笠間市、桜川市)では古くから花崗岩は御影石として採掘されており、日本有数の石材産業や地域に根ざした文化が育まれています。この御影石は日本各地で広く利用されています。
リチア電気石 茨城県の鉱物はリチア電気石です。リチア電気石は 常陸太田市妙見山の中腹に露出するリチウムペグマタイトの主要鉱物の1つで、紅、青、緑などさまざまな色をしたきれいな柱状結晶として多く産出されます。これはマグマが冷え固まっていくときの残液にリチウム元素が濃集してできた珍しい鉱物で,日本での産出は他に福岡県、岩手県など数カ所にのみ限られています。
 リチア電気石を多産する妙見山のリチウムペグマタイトの露頭は、常陸太田市指定の天然記念物として保護されています。

ステゴロフォドン 茨城県の化石は、常陸大宮市でみられるステゴロフォドン。ミュージアムパーク茨城県自然博物館に復元、骨格標本が展示されています。ステゴロフォドンは、新生代中新世〜鮮新世に南アジアから日本にかけて生息していた、切歯(牙)を4本もつ古いゾウ類です。2011年に高校生が、常陸大宮市の中新世の地層からその頭蓋化石を発見して、大きな話題となりました。発見された化石は切歯を含む頭部がほぼ完全に残っており、そのすばらしい保存状態から、ステゴロフォドンの形態やゾウ類の進化過程などを解明する上で極めて重要な標本です。
参考:茨城県北部の棚倉堆積盆における新第三紀中新世の長鼻類化石(茨城大学安藤研究室)

 「県の石」は日本地質学会の全国アンケートで、自治体で選定しているという回答がなかったため、「大地の歴史と成り立ちを知って、郷土の地質を愛する心を再認識してもらおう」との主旨で
企画されました。2014年に一般公募し、専門家らでつくる選定委員会の審査を経て認定されました。
参考:日本地質学会「県の石」