G7科学技術閣僚会議(つくば市のHPより)
 5月17日、「G7茨城・つくば科学技術大臣会合」は、つくば国際会議場で最終日の会合が開き、女性研究者の活躍支援などを柱とする共同声明の「つくばコミュニケ」を採択して閉幕しました。ホスト役を務めた島尻安伊子科学技術担当相をはじめ、先進7カ国(G7)の大臣らは共同会見を行い、高齢化や格差社会など地球規模の課題解決に取り組んでいく決意を示しました。世界中の自然災害に対し、G7が中心となって、科学技術による防災・減災に貢献していくことも表明しました。
 G7と欧州連合(EU)の大臣らは、「次世代の科学技術イノベーション人材育成・女性活躍推進」や「グローバルヘルス」など6つの議題について意見を取りまとめ、共同声明に盛り込みました。
  • グローバルヘルス・保健医療と科学技術
  • 次世代の科学技術イノベーション人材育成・女性活躍推進(STIにおける女性の活躍および次世代のグローバルリーダーの人材育成を目指して)
  • 海洋の未来(科学的知見に基づく海洋環境の保護と持続可能な海洋利用に向けて)
  • クリーンエネルギー・革新的なエネルギー技術の開発
  • インクルーシブ・イノベーション・社会的に包摂的で持続可能なイノベーションの創出(経済成長と社会的平等の両立を目指す)
  • オープンサイエンス・サイエンスの新たな時代の幕開け

 グローバルヘルス(保健医療)では、高齢化に伴う認知症やアルツハイマー病のメカニズム解明を目指すほか、発展途上国で大きな問題となる貧困に伴う病気や熱帯感染症の研究開発を促進するとしました。
 女性活躍推進は、島尻氏をはじめ、参加大臣らの8人中6人が女性ということもあり、今回の主要テーマの一つ。女性の科学者や研究者、技術者と女子生徒・学生の国際的ネットワークづくりの支援などで、科学技術分野での女性の活躍を後押ししていくことを盛り込みました。
 また、日本が熊本地震などを踏まえて、 防災・減災に向けた国際協力の推進を緊急提案し、各国が同意しました。
 つくばコミュニケの序文(仮訳・暫定版)は以下の通りです。
つくばコミュニケ(仮訳:暫定版)
G7茨城・つくば科学技術大臣会合 2016年5月15-17日

 我々、カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、日本、英国、米国の科学技術担当大臣と、欧州委員会の研究・科学・イノベーション担当委員は、2016年5月15日から17日に、日本の茨城県つ くば市で会合した。
 我々は、社会や経済の発展、および保健医療・エネルギー・農業・環境などの地球規模の課題に取り組むためには、科学技術イノベーション(STI)が不可欠であることを認識した。我々は、STI が持続可能でインクルーシブな社会開発に貢献すべきであると強調する。
 我々は、社会全体がSTIのメリットを享受すべきであること、および、デジタル化の進展、Internet of Things(IoT)の普及、情報通信技術(ICT)や人工知能(AI)などのイネーブリング・テクノ ロジー(実現技術)の発展を通じて、STI のプラスのインパクトを加速すべきであることを認める。すべての人にSTIのメリットをもたらすというビジョンを明らかにするために、日本は、市民社会を中心に据えた科学技術の開発によってインクルーシブで豊かな社会の実現を目指す「Society 5.0」という考え方を提唱している。
 現在、我々は、人口の高齢化、ジェンダー不平等、エネルギー安全保障、環境問題などの長期的に持続する地球規模の課題に直面している。東日本大震災の経験を踏まえ、我々は、特に、危険 や災害への社会の回復力を強化することの重要性を認識している。また、社会の中で成功を収めている人と成長から取り残されている人との格差が、国内外で拡大している。我々は、STI、特にICTの力を活用したSTIが、年齢・ジェンダー・言語・地域を問わず、すべての人に繁栄をもたらす大きな可能性を持っていることを認識した。したがって、我々は、インクルーシブ・イノベ ーションの推進に取り組んでいくこととする。
 さらに我々は、オープンサイエンスは研究開発(R&D)のあり方を変えることができ、その結果として国際連携の強化や参加者・ステークホルダーの拡大につながる可能性があることを認めた。 また我々は、市民科学の台頭に代表されるようなR&Dにおける包摂性を推進する上でも、オープンサイエンスが重要な役割を果たすことを認識した。
 このような問題に取り組むために、我々は、G7茨城・つくば科学技術大臣会合で議論すべき個別課題に対して、インクルーシブ・イノベーションとオープンサイエンスを分野横断的課題と位置づけ結論を導き出すようにした。その個別課題とは、グローバルヘルス、次世代の科学技術イノベーション人材育成・女性活躍推進、海洋の未来、クリーンエネルギーである。また、STIの社会的インパクトを最大化するために、我々は他のG7関係閣僚会合と協力し、その他の省庁と密に連携を図るものとする。
 我々は、次回のG7科学技術大臣会合がイタリアで開催されることを歓迎する。
 本日、我々は、「つくばコミュニケ」を承認し、2016年5月26-27日のG7伊勢志摩サミットに向け、首脳の検討のためこのコミュニケを発出する。
 「G7茨城・つくば科学技術大臣会合」は、5月26日、27日両日の主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)に伴う関係閣僚の10の会合の一つです。15日に開幕し、大臣らの議論のほか、シンポジウムや科学技術関連の展示会、歓迎レセプションなどが行われました。
 終了後の会見で、橋本昌知事は「茨城の発信に向け、大臣らに農産物や料理を喜んでいただけた。そういう意味でも会合は成功だった」と語りました。