広島県議会を調査
 5月18日、井手よしひろ県議ら茨城県議会改革検討会議は、県議会の定数と選挙区割りの調査のため、広島県議会を県外調査しました。
 広島県議会では、県議会事務局ならびに検討を行った当時の特別委員会の副委員長であった2県議から、検討の内容を聴き取りました。
 広島県議会の定数は現在64人、選挙区は23あります。人口は284万人余りで、議員一人当たりの人口は4万4453人となっています。茨城県が定数63人、選挙区36、人口291万人余り、一人当たり人口が4万6315人であり、規模的にはほぼ同等です。
 しかし、広島県は平成の合併が進んでおり、市町村数が23(14市、9町)となっているに対して、茨城県は44市町村(32市、10町、2村)であり、市町村を基本とする公職選挙法の規定から、1人区が非常に多くなっています(広島8選挙区、茨城22選挙区)。一票の格差は広島県が2.36倍、茨城県が2.90倍となっています。
 ちなみに県議会議員の報酬は、広島県が月額85万5950円に対して、茨城県は75万円と10万円余り低くなっています。
 定数と人口が逆転している“逆転区”は、茨城県が10通りと非常に多くなっています。
 広島県議会の総定数は、平成15年の県議選時で70人、平成19年、23年が66人、平成27年は64人と、削減されてきました。
 平成27年の県議選を前に、平成24年から「広島県議会議員定数等調査特別委員会」を設置し、定数・選挙区割りの検討が行われました。
 特別委員会は、平成24年3月16日に設置、9回に渡って開催されました。茨城県議会のように学識経験者や市町村長会や議長会、県内各界各層からの意見聴取、公聴会などは行いませんでした。
 検討に当たっては、論点を「総定数の方向性」「一票の格差」「選挙区(合区の必要性)」「人口比例原則の特例適用」を4点に整理しました。
 総定数の方向については、大幅な定数削減を求める意見がある一方、削減ありきの前提条件はいかがなものかとの意見が出されました。協議の結果、総定数は増やす方向でないことで一致し、具体的な定数に関しては、試算結果を踏まえて協議することとしました。
 合区(任意合区)の必要性については、合区は例外的措置であり、安易な合区は地域の一体性や住民の共同体意識を低下させる、選挙区の面積が広くなりすぎるなどの弊害が指摘されました。選挙区の合区は行わないこととなりました。
 一票の格差については、現行の格差を拡大させない方向性で検討すべきであり、試算結果を踏まえて全体を通した議論の中で総合的に協議することとしました。
 人口比例原則の特例適用については、政令市の取り扱いについて議論を深める必要があるなどの意見が出されました。試算結果を踏まえて総合的に協議することとなりました。
 こうした4つの論点を明確にしたうえで、10通りの試算を明示して、具体的な協議を行いました。
 人口比例原則に基づき、定数を現状(66人)から4減までの5つのケース。特例選挙区を適用し、増員となる選挙区を作らない4つのケース。格差3倍以内で政令市や中核市を最大限削減するケースを1ケース。この10通りの試算を総合的に判断しました。
 そのうえで、1増3減案、1増5減案、13減案の3通りの案に絞り込みを行い、協議をすすめました。
 最終的には、定数を2減し、議席を人口比例原則通り配分し、一票の格差が2番目に小さい(2.109倍)、「1増3減案」広島市安佐南区(4->5)、呉市(6->5)、尾道市(4->3)。福山市(11->10)に採決の結果、決まりました。
 広島県議会は、政令市、中核市の取り扱いや中山間部の取り扱いなど特別に配慮すべきという議論を極力抑え、人口比例の原則を貫いた結論を導いたということになります。総定数を増やさない、合区も行わないという基本も確認していましたので、定数を大幅に削減することは、一票の格差を拡大することになりますので、2減という結果となりました。
 そもそも広島県は市町村合併が進んでおり、県議選選挙区の広域化も茨城より先行しています。この事情の違いが、検討の論点の違いに現れているところです。
広島県議会の選挙区と定数

茨城県議会の定数と選挙区割りの5つの論点
 この広島県議会の取り組を参考にすると、今回の茨城県議会の定数と選挙区割りの見直しの論点は、「総定数は現状維持もしくはこの5年間の人口減少分に比例する程度」「10通りある逆転区の減少」「一票の格差を2倍以内に抑える」「できるだけ1人区を少なくする」「合区については地域性を考慮しながら積極的に検討する」との5つに集約されるのではないかと個人的には考えています。
 また、常設の特別委員会の設置や定数を減員した場合の一票の格差のシミュレーションの公開など、参考となる内容を聴き取ることができました。