年金運用益の増減
 公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が、2015年度に5兆円超の運用損を出していたことが明らかになったとマスコミ各社が報道しています。それに便乗して民進党など野党は、政府の国内株式への投資の失敗が原因であり、政府・与党の責任であると騒ぎたてています。「年金運用は失敗した」「消えた年金の二の舞だ」といった具合に騒いでいる人たちがいますが、はっきりいってこれはかなり的外れなコメントです。
 冷静に見て見ると2012年の自公政権発足以降の運用益は、すでに約38兆円に達しています。今回の損失を引いてもなお30兆円以上に上ります。また、自主運用を始めた2001年度から15年末までの累計の運用益は、計約50兆円とも上っているのです。
 GPIFは積立金約140兆円(2015年12月末139兆8249億円)を株式や債券で運用し、2015年12月末の資産構成比率は、国内債券37.76%、国内株式23.35%、外国債券13.50%、外国株式22.82%、短期資産2.57%となっています。2014年には資産構成割合を変更して国内外の株式比率を計50%に倍増しました。超低金利政策の中で、債権に偏重した運用では大事な年金の積立金を活用することが難しく、さらにGPIFが国内株式の保有を1%増やすだけで、株式市場には1兆円以上の資金が流入することから、市場の活性化につながるとの判断です。
 GPIFの運用は、その時々の相場観で機敏に株の売買をやっているというよりも、運用方針を決めて一定の割合の資産比率を決めたら、その割合を維持するという方向で運用されています。国内株式が大きく上がるとその分を売却して、比率が減少した他の資産を買い付ける、といったいわゆる“リバランス”を定期的にやっています。なんら恣意的に運用しているわけではありません。
 マスコミや野党は株が下がって評価損が出ている時は大々的に報道したり、批判したりします。反対に、上がって評価益が出ている時は一切、国民のその事実を伝えません。
 そもそも、こうした情報は常にGPIFのホームページで公開されています。現在は、2015年12月現在の数字が誰でも見れれます。4半期ごとの収益が公開され、平成27年度第1四半期+2兆6489億円、第2四半期▼7兆8899、第3四半期+4兆7302億円という結果が明確になっています。昨年末にすでに5108億円の損失が発生しています。平成27年度トータルで5兆円の損失が出たと今更騒ぎ立てる必要もないことは明らかです。

年金制度は安定して運用されている
 そもそもこの年金積立金は、今まで年金を払う人のほうが、もらう人より多かった時期が長かったので、その「余ったお金」を積み立てて運用した結果です。その貯金がこの140兆円になっています。
 公的年金というのは賦課方式といって、毎年の年金保険料の払い込みを毎年の年金の支給原資に充てています。つまり単年度決済です。年によってはプラスの時もあればマイナスの時もあります。プラスになれば、この年金積立金特別会計140兆円に繰り入れます。マイナスの年があれば、この積立金から取り崩します。今後は少子高齢化で、年金を払う人よりもらう人が増えてきますので、この貯金を取り崩しながら運用することになります。
 様々な課題はあるものの、日本の公的年金の運用自体は非常に健全に機能しています。マスコミや野党の空騒ぎに騙されることなく、ご自身でGPIFのホームページにアクセスして、自分自身の目で公的年金運用の実態を確認してみて下さい。
参考:年金積立金管理運用独立行政法人のHPhttp://www.gpif.go.jp