産総研北海道センター
 7月13日、井手よしひろ県議ら県議会総務企画委員会は、産業技術総合研究所(産総研)北海道センターを視察しました。このセンターは、北海道工業開発センターとして誕生し、現在はバイオ技術を活用したものづくりを中心に研究を進めています。
 遺伝子組み換えが可能な植物工場を有しており、組み換え植物を原薬とする医薬品を世界で初めて製造することに成功しました。この研究施設は「グリーンケミカル研究所」といわれ、2012年12月に誕生した世界的にも希有な完全密閉型植物研究の実証施設です。
 従来型の植物工場とは全く異なる目的と可能性を持ち、最先端のバイオテクノロジーを集結、植物で機能性成分や工業原料などの高付加価値有用物質を生産するための実証・実用化研究を行っています。そして、大学・産業技術総合研究所などが保有する最先端の異なる技術シーズを有機的に結び付け、産学官が連携して新たなグリーンケミカル生産技術を開発していく研究拠点でもあります。
 この施設は、国の補助金に加え、北海道内の自治体・産業界が資金を出したノーステック財団が立ち上げました。ノーステック財団では、産学がひとつ屋根の下で実証・実用化研究を行い、新製品、新事業および新産業の創出、新たな高効率農業の生産方法の構築、さらには人材の育成などを図り、最終的には世界から注目される中核的研究開発拠点(COE)の形成を目指して「グリーンケミカル研究所」を運営しています。
グリーンケミカル研修所
 通常の遺伝子組み換えは、植物の生産量の拡大や質的向上を目指すものと理解していますが、産総研北海道センターでは、医薬品の製造研究を行ってきました。この施設は、P2レベルの完全密閉型植物工場です。天候によらない計画裁培が可能、外界への組み換え体が拡散しない、開放圃場と比較して求められる基準(GMP)への適応が容易などの特徴があります。
 この研究所から、犬の歯周病の治療薬である「インターベリーα」が商品化されました。
 「インターベリーα」 は、産総研とホクサン株式会社(本社:北海道北広島市)、北里第一三共ワクチン株式会社が共同開発しました。
 イヌインターフェロンαを産生する、遺伝子組換えイチゴの果実を原料としたイヌの歯肉炎軽減剤です。口腔内に塗り込み投与することで、歯周病の初期症状の一つである歯肉炎に対して炎症軽減効果を示し、優れた安全性が確認されています。
 イヌインターフェロンαを産生する遺伝子組換えイチゴは、「グリーンケミカル研究所」 の完全密閉型植物工場で栽培されます。この植物工場は栽培中に遺伝子組換えイチゴそのもの及び花粉が工場外に出ることは全くありません。また、外からの不純物がない管理が出来るため収穫されたイチゴは、清浄度からも医薬品原料として問題ありません。乾燥粉末を製剤化し小分け包装するところまで植物工場内で行います。このような医療用成分を産生する遺伝子組換え植物そのものを原薬とする医薬品の承認は世界で初めてです。
 説明聴取、研究施設を視察した後の意見交換では、井手県議は開発コストや製造コストの比較について質問。一般的な薬品の製造コストは20%程度と劇的に下がったと説明を受けました。また、今後ヒトのがんなどへの応用などの可能性について質問しました。産総研自体が積極的に研究をすすめるというよりは、製薬会社からなどの共同開発を行う方向性で検討したとの回答でした。


産総研北海道センター:http://www.aist.go.jp/hokkaido/