動物愛護団体の譲渡会
 犬、猫の命が絶たれるのを防ごうと、県議会の最大会派「いばらき自民党」は「(仮称)県犬猫殺処分ゼロを目指す条例」を12月定例議会に提案する方向で、会派案をまとめ県民のパブリックコメントを求めています。罰則はありませんが、県や飼い主などの責務を明確化することで、全国的にも最悪クラスの殺処分の根絶を目指した条例です。成立すれば、同様の条例は全国初となります。
 県生活衛生課によると、2014年度に県動物指導センターに収容された犬と猫は計5251匹。引き取り手がなければ原則1週間で殺処分となり、犬は全国ワースト2位の1751匹、猫は同17位の2218匹が、処分されています。犬の殺処分数は12年度まで8年連続で全国最多。15年度は1279匹に減少しましたが、猫は逆に2333匹に増加しています。
 県は、23年度までに犬と猫の殺処分数を計1000匹未満にする計画を推進。一方、自民会派は殺処分ゼロの実現に向け、昨年9月にプロジェクトチームを設立し、勉強会や動物愛護団体との意見交換を経て、今月までに条例案をまとめました。
 条例案では、県は飼い主に対する啓発や販売業者への指導、飼い主は犬猫が命を終えるまで飼養する、ペット業者は最期まで飼えない人に販売しない−−などそれぞれの立場での責務や努力義務を明記しました。さらに飼い主にはマイクロチップ装着、県には殺処分ゼロを実現するための基金設置なども促しています。
 いばらき自民党は11月11日まで、県民から意見を募集するパブリックコメントを実施しています。意見を反映させた上で、会派案として正式決定します。
 井手よしひろ県議ら茨城県議会公明党は、犬猫の殺処分ゼロ条例について賛成いたします。その基本的姿勢を確認した上で、自民党案に具体的な対案を提示、出来れば議案提出前に統一案を取りまとめたいと考えています。
 議論の視点としては、販売業者の犬猫の適正な販売に対する責務をさらに明確化できないか、市町村の動物愛護に対する積極的な姿勢を誘導できないか、などを追加することを検討します。
 また、犬猫愛護週間(第7条)については、現行の動物愛護週間との関係性を明確にする必要があります。
 さらに、第8条に記載されたて「TNR活動」や「地域猫活動」については、専門家の議論も煮詰まっておらず、条例化には慎重な姿勢が望まれます。

(仮称)茨城県犬猫殺処分ゼロを目指す条例(案)

犬や猫は、人間に最も身近な動物の一つであり、家族同様の存在として私たちの生活に癒やしと潤いを与えてくれる。その一方では、飼い主の犬や猫の習性に対する理解不足による身勝手で無責任な飼養放棄、県民からの苦情及び相談に基づく犬の捕獲等により、多くの犬や猫が殺処分されている。
特に、本県は、犬の殺処分頭数が長年にわたり全国上位に位置するほど多く、県民が深く憂慮すべき状況にある。
犬や猫の命を尊ぶことがひいては人間の命の尊厳の確保につながることに鑑み、今こそ、犬や猫を飼養し、又は業として犬や猫を取り扱う者には、それらの命の大切さに対する認識を新たにして行動することが求められている。
ここに、県民が一体となって、犬や猫の殺処分ゼロを目指すことを声高らかに宣言し、犬や猫と共に幸せに暮らせる社会の実現に向けて行動する決意を明確にするため、この条例を制定する。
(目的)
第1条 この条例は、犬及び猫の殺処分ゼロを目指すため、犬及び猫の適正な飼養及び保管に関する県、犬又は猫の所有者、販売業者等の責務その他の必要な事項を定め、殺処分となる尊い命を生じさせない取組を県、犬又は猫の所有者、販売業者等が協働して推進し、もって県民が犬及び猫と共に幸せに暮らせる社会の実現に寄与することを目的とする。
(定義)
第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
(1) 販売業者:動物の愛護及び管理に関する法律(昭和48年法律第105号。以下「法」という。)第10条第1項の規定による第一種動物取扱業の登録を受けた者のうち、犬又は猫の販売又は繁殖を業として営む者をいう。
(2) 購入者:犬又は猫を販売業者から購入し、かつ、飼養又は保管を行おうとする者(犬又は猫を購入しようとする者と当該犬又は猫を飼養又は保管を行おうとする者が異なる場合は、飼養又は保管を行おうとする者)をいう。
(3) 譲渡者:自らが所有する犬又は猫を他人に譲り渡そうとする者(法第24条の2の規定による第二種動物取扱業の届出をした者のうち、犬又は猫を他人に譲り渡そうとする者を含む。)をいう。
(4) 殺処分ゼロ 犬及び猫の殺処分(人の生命及び身体の安全の確保、公衆衛生の向上等のためにやむを得ずなされる殺処分を除く。)がなくなることをいう。
(県の責務)
第3条 県は、犬又は猫の所有者及び占有者に対し、適正な飼養及び保管についての知識の普及啓発に努めるものとする。
2 県は、販売業者に対し、適正な販売に関する指導を行うものとする。
3 県は、この条例の目的を達成するため、犬又は猫の殺処分頭数の減少に資する活動を行う人材及び団体の育成に努めるものとする。
(犬又は猫の所有者の責務)
第4条 犬又は猫の所有者は、動物の福祉に鑑み、自らが所有する犬又は猫がその命を終えるまで適切に飼養すること(以下「終生飼養」という。)に努めるとともに、その所有する犬又は猫を、やむを得ず飼養することができなくなった場合には、自らの責任において新たに飼養を行おうとする者に譲り渡すよう努めなければならない。
2 犬又は猫の所有者は、自らが所有する犬又は猫がみだりに繁殖して、適正に飼養することが困難となるおそれがある場合には、その繁殖を防止するため、不妊去勢手術その他の必要な措置を講ずるよう努めなければならない。
3 犬又は猫の所有者は、自らが所有する犬又は猫が自己の所有に係るものであることを明らかにするため、マイクロチップの装着その他の必要な措置を講ずるよう努めなければならない。
(販売業者等の責務)
第5条 販売業者は、購入者が終生飼養をすることが困難であると認められるときは、犬又は猫を販売しないよう努めなければならない。
2 前項の規定は、譲渡者について準用する。この場合において、同項中「販売業者」とあるのは「譲渡者」と、「購入者」とあるのは「譲受者」と、「販売しない」とあるのは「譲渡しない」と読み替えるものとする。
(犬及び猫の命の尊さを学ぶ場の設定等)
第6条 県は、広く県民が犬及び猫の命の尊さを学ぶ場を設けるよう努めるものとする。
2 県は、学校等の教育において、子どもたちが犬及び猫の命の尊さを学ぶ場を設けるため、学校等に対し、必要な情報の提供、技術的な助言その他の支援を行うものとする。
(犬猫愛護週間)
第7条 県は、犬及び猫の愛護と適正な飼養について、広く県民の関心と理解を深めるようにするため、犬猫愛護週間を設けるものとする。
2 県は、犬猫愛護週間においては、その趣旨にふさわしい行事が実施されるよう努めるものとする。
(所有者がいない猫に対する取組への支援)
第8条 県は、所有者がいない猫を新たに生じさせないための地域住民等による取組を支援するよう努めるものとする。
(市町村への支援)
第9条 県は、市町村が次に掲げる施策を講じようとする場合においては、必要な情報の提供、技術的な助言その他の支援を行うものとする。
(1) 犬及び猫の愛護並びに適正な飼養及び保管に関する知識の普及啓発に関する施策
(2) この条例の趣旨を尊重した活動を目的とした協議会等の設置
(収容される犬及び猫の頭数を減ずるための協議)
第10条 県は、県に収容される犬及び猫の頭数の減少を図るため、必要な施策について、法第39条の規定に基づき組織した協議会において協議するものとする。
(動物愛護管理推進計画における条例の趣旨の尊重等)
第11条 県は、法第6条第1項の規定に基づく動物愛護管理推進計画(次項において「推進計画」という。)を策定し、又は変更するときは、この条例の趣旨を尊重するものとする。
2 県は、推進計画の進捗の状況について、これを公表するものとする。
(財政上の措置)
第12条 県は、殺処分ゼロを目指すための施策を総合的かつ計画的に推進するため、基金の設置その他の必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。
付 則
この条例は、公布の日から施行する。