SDGs
 12月18日、日本は国際連合に加盟して60年の節目を迎えます。1956年の加盟以来、日本は国連貢献を続け、90年代からは新らたな平和の理念「人間の安全保障」の主導役を務め、国連がめざす「持続可能な開発」の実現をめざしています。
 地方自治体においても、「持続可能な開発」の17の目標達成をめざすことは重要です。このブログでは、改めて「人間の安全保障」「持続可能な開発」について、その考え方と課題をまとめました。

「人間の安全保障」個人に光を当て、人権侵害と貧困から一人一人を救い出す
 「人間の安全保障」は、国連開発計画(UNDP)が1994年版「人間開発報告書」で提唱し、一気に注目を集めました。一般的に安全保障とは、外交と軍事によって国家を守る国家安全保障のことを言います。国連では、憲章第7章の集団安全保障のこととして議論されてきました。
 一方、途上国の開発を担うUNDPは、現場の声として紛争やテロの「恐怖」、「貧困などの欠乏」、さらに差別や暴力といった「人権侵害」から人間一人一人を守らなければ、平和の基礎は固まらないと問題提起をしたことで、国連はこの新らたな平和理念と向き合うことになりました。
 日本では1998年に小渕恵三首相(当時)が、「人間の安全保障」を日本外交の理念とする考えを表明、国連に「人間の安全保障基金」を設立しました。
 その後も、日本は国連を舞台に「人間の安全保障」の理念を定着させるために、様々な提案や行動を重ねてきました。2012年9月国連では、「人間の安全保障に関する国連総会決議」が全会一致で採択されました。
 この決議は、開発と人権と平和安全は「相互に連関し合うもの」と宣言しました。また、「人間の安全保障」を口実とする武力介入を否定した点は非常に重要です。
「持続可能な世界に」と、途上国も先進国も共に地球を守る行動を
 「人間の安全保障」が理念として国連で定着する中で、地雷処理や医療援助、難民支援、公共施設の補修、整備、教育普及など多様な分野の活動が「人間の安全保障」の中に位置づけられました。しかし、NGOなどからは「現場では『人間の安全保障』の実感がない」との声が上がっています。
 理念をどう具体化させるか――国連は新たな挑戦として、2016年1月から20年までの達成をめざす「持続可能な開発目標(SDGs)」をスタートさせました。 
 「貧困撲滅」「人や国の不平等をなくす」「ジェンダー平等の実現」「気候変動の対策」など17目標からなるSDGsは途上国だけでなく、先進国が抱える課題も含まれます。このことは、途上国支援の理念と見られがちな「人間の安全保障」を、先進国も将来世代と地球を守るために取り組むべき政策理念であることを示しているのです。
 SDGs推進には政府、地方自治体、国際機関と、NGOや企業などの連携が不可欠です。その推進体制は、(1)関係者と幅広く連携できる体制の整備(2)民間企業の取り組みを後押し(3)地方自治体との連携強化(4)国内の認知度を高めるための広報・啓発――などが重要となります。また、未来を担う子どもたちにSDGsを根付かせるため、教育に取り込むことが最も重要です。
 特に、17項目の目標の中でも優先して取り組むべき事項として子どもの貧困対策です。「子どもの貧困」は、子どもの将来に大きな影響を及ぼすだけでなく、社会全体にとっても大きな損失をもたらします。ジェンダー(社会的性差)の平等と、途上国のSDGs達成を支援する政府開発援助(ODA)予算の拡充も重要です。

【SDGs17の目標】
 1、貧困をなくそう
 2、飢餓をゼロに
 3、すべての人に健康と福祉を
 4、質の高い教育をみんなに
 5、ジェンダー平等を実現しよう
 6、安全な水とトイレを世界中に
 7、エネルギーをみんなにそしてクリーンに
 8、働きがいも 経済成長も
 9、産業と技術革新の基盤をつくろう
 10、人や国の不平等をなくそう
 11、住み続けられるまちづくりを
 12、つくる責任 つかう責任
 13、気候変動に具体的な対策を
 14、海の豊かさを守ろう
 15、陸の豊かさも守ろう
 16、平和と公正をすべての人に
 17、パートナーシップで目標を達成しよう