
12月22日、茨城県議会本会議が開かれ、井手よしひろ県議も提出者となった「茨城県犬猫殺処分ゼロを目指す条例」が採決され、全会一致で可決成立しました。
犬や猫は、人間に最も身近な動物の一つであり、家族同様の存在として私たちの生活に癒やしと潤いを与えてくれています。しかし、その一方では、飼い主の犬や猫の習性に対する理解不足や、身勝手で無責任な対応によって、飼養放棄、県民からの苦情や相談に基づく犬の捕獲等により、多くの犬や猫が殺処分されています。
茨城県は、犬の殺処分頭数が、平成17年度から24年度まで全国ワースト1位、平成25年度以降は全国ワースト2位と、長年にわたり全国上位に位置するなど、深く憂慮すべき状況にあると言えます。
このような状況を踏まえ、犬及び猫の殺処分ゼロを目指すため、適正な飼養及び保管に関する関係者の責務などを定め、殺処分となる尊い命を生じさせない取組みを推進し、県民が犬や猫などのペットと共に幸せに暮らせる社会の実現に寄与することを目的として、議員提案として「茨城県犬猫殺処分ゼロを目指す条例」 が提案されました。
殺処分ゼロに向け県、市町村、県民、ペット業者の役割を規定
今回成立した「茨城県犬猫殺処分ゼロを目指す条例」条例案の主な内容に要約します。
この条例の特徴は、単なる動物愛護をうたうことではなく、犬及び猫の殺処分ゼロを目指すことに特化したところにあります。
まず、県の責務として、犬又は猫の飼い主に対しては、適正な飼養及び保管についての知識の普及啓発に努めるとともに、販売業者に対しては、適正な販売に関する指導を行う旨を規定しました。
また、犬又は猫の飼い主の責務として、動物の福祉に鑑み、自らが所有する犬又は猫がその命を終えるまで適切に飼養する「終生飼養」、みだりに繁殖することを防止するための「不妊去勢手術などの措置」、自己の所有に係るものであることを明らかにするための「マイクロチップ装着などの措置」について、それぞれ努力義務として規定しました。
さらに、販売業者等の責務として、購入者や譲受者に対して終生飼養を促すとともに、購入者や譲受者が終生飼養が困難であると認められるときには、犬又は猫を販売・譲渡しないよう努めなければならない旨、規定しました。
そして、県による、犬及び猫の命の尊さを学ぶ場の設定や、所有者がいない猫に対する取組への支援、関係施策を講じようとする市町村への支援などについても規定しました。
県は、殺処分ゼロを目指すための施策を総合的かつ計画的に推進するため、ふるさと納税制度等を活用した寄付金の募集及び受入れ、基金の設置、その他の必要な財政上の措置を講ずるよう、努めるものとしました。単なる理念条例ではなく、基金の造成などを明記したのは画期的だと思います。
井手県議ら公明党が条例制定への流れつくる
県議会いばらき自民党が中心となって条例案の検討を行い、県や市町村、獣医会や動物愛護団体などとの協議を続けてきました。こうした県議会の取り組みのキッカケとなったのは、平成27年9月10日に井手県議が行った公明党の代表質問でした。井手県議ら公明党は、神奈川県や群馬県、長野県、栃木県などの先進事例を調査した結果を踏まえて、動物愛護の拠点施設の整備、市町村の動物愛護行政の充実と連携強化の2点を橋本知事に訴えました。
参考:井手よしひろ県議が代表質問【動物愛護行政の推進】(http://blog.hitachi-net.jp/archives/51610150.html)
さらに、11月には自民党の条例案に対して、公明党として市町村の役割やペット販売業者の役割などを明確にする条文を加えることを提案しまた。
具体的には、犬猫の殺処分をゼロにするためには、犬猫の飼い主に一番近い行政体である市町村の協力が不可欠です。現状の法の枠組みでは、市町村には動物愛護の所管業務がありません。その意味で、市町村に殺処分ゼロへの取組を要請する内容を前文と第3条加えるべきと提案しました。殺処分ゼロを実現するためには、犬猫を販売する業者の責任は大きく、第5条に2項に「販売業者は犬猫の適正飼育に関して、購入しようとする者に対し、終生飼養の考え方、適正な飼育方法、しつけ方法などの普及・啓発に努めなくてはならない」との、条文を追加し終生飼養や適正飼育の情報の普及啓発に努めるべきことを明記すべきと提案しました。
参考:犬猫の殺処分ゼロを目指す条例に、市町村の協力を求める条文を(http://blog.hitachi-net.jp/archives/51642616.html)

参考:井手よしひろ県議の代表質問(平成28年9月10日)
茨城県の平成25年度の犬の殺処分頭数は、前年度1019頭減の2158頭となり、8年連続の全国最悪を返上しました。しかし、最下位を脱出したとはいえ、いまだ多数の殺処分があるという現状には何ら変わりはありません。平成26年度の状況は、犬が1751頭、猫が2218頭と、合計で3969頭が処分されています。犬が407頭の減、猫が555匹の減、合計962頭減となりました。数多くのボランティアの皆様、県獣医師会、そして動物指導センターの関係者の皆様の献身的なご努力の結果であると深く敬意を表するものであります。
茨城県は、動物愛護の事業の強化や県の枠を超えた広域譲渡の試行的な実施、飼い主のいない猫への不妊去勢手術の実施など、新たな試みも含めて、殺処分ゼロを目指す活動を本年も展開をしております。本日は、こうした着実な努力を積み重ねた上で、県が検討すべき課題を2点指摘をさせていただきたいと思います。
まず、動物愛護の拠点の整備であります。2007年9月県議会で、我が会派の田村けい子議員は、動物指導センターとは別に動物愛護啓発のための拠点施設を整備することを提案をしました。私も2009年10月の保健福祉委員会で動物愛護センターの整備を提案しています。
私は、この夏、群馬県と神奈川県、政令指定都市である横浜市の動物愛護の拠点施設を現地調査してまいりました。
群馬県では、ことし7月1日、これまで殺処分中心であった県動物管理センターにかわる施設として、群馬県動物愛護センターを県南部の玉村町に開設をしました。群馬県動物愛護センターは、犬猫等の動物の保護や苦情相談に加え、保護期間が過ぎた犬猫等について、感染症の有無や社会適応性のチェックを行い、譲渡可能と判断した場合には希望する県民に譲渡をしたり、動物愛護及び動物福祉の啓発事業を中心に業務を行います。また、動物愛護に対する県民の啓発事業の拠点としてさまざまな活動を行う施設です。この施設には殺処分を行う機能はありません。建設費は約1億4000万円、年間の運営経費は約5750万円です。鉄筋コンクリートづくり、平屋建てで全室冷暖房完備、大変コンパクトな施設ですが、使い勝手はよいようです。群馬県は、今回新設された愛護センターを中心に、きめ細やかな動物愛護行政を今後展開していくことになります。
一方、神奈川県では、動物保護センターに収容された犬の殺処分が、平成25年度にゼロになりました。平成26年度も犬の殺処分ゼロを継続し、さらに猫についても初めて殺処分ゼロを達成しました。保護された犬猫はもとの飼い主に返還されるか、新たな飼い主に譲渡されます。神奈川県動物保護センターは、設置以来40年以上を経た老朽化が目立つ施設でした。しかし、保護センターでは動物愛護のさまざまな団体や獣医師会などと協力をし、例えば保護された犬の処分するまでの期間を最低でも1カ月間程度とすることや、反対に猫は保護された当日からボランティアによる給餌、ミルクやりを行うなど、保護された動物を生かすための取り組みを行ってきました。平成21年度からは、炭酸ガスによる処分をやめてしまいました。保護センターには42のボランティア団体や個人が登録し、譲渡先を探したり、子猫や子犬を育てたりする活動をしています。こうした善意の団体と連携強化が殺処分ゼロの原動力となっています。
神奈川県は、この7月、この動物保護センターの建て直しを決定いたしました。新たな動物保護センターは犬猫の殺処分ゼロの継続を目指し、犬猫を生かすための施設として位置づけています。殺処分室の廃止や収容室の個室化、ボランティアの活動場所の提供も含め、2018年度末の完成を目指しています。総工費11億円を予定しており、全額寄附で賄うという条例を成立させました。
一方、茨城県では、笠間市にある動物指導センターにおいて、狂犬病予防法、動物の愛護及び管理に関する法律、茨城県動物の愛護及び管理に関する条例などに基づいた業務を行っています。動物指導センターは、人と動物の共生する地域社会の実現を目指して、動物愛護精神と生涯飼育、適正飼育の普及啓発に努めています。
私は、譲渡や返還を進める上では、収容期間を大幅に延長する、炭酸ガスによる処分法を変更するなど、目に見える改革が必要ではないかと訴えるものです。さらに、殺処分ゼロを進めるためには、群馬県や神奈川県のような動物愛護の拠点施設整備が必要条件であると考えます。保護された犬猫の譲渡を進めるための施設、ボランティアの活動拠点としての施設、動物愛護の啓発活動の中心施設、県民と動物が触れ合うための施設、愛玩動物の大規模災害時などへの対応の拠点施設など、多目的に活用できる施設がどうしても必要なのです。
整備手法については、今後、水戸市やつくば市が、中核市として保健所の機能を担っていくことも十分想定できますので、今後連携していくことも視野に入れて検討するべきだと思います。
二つ目の課題は、市町村との連携強化です。そもそも住民に近い地方自治体である市町村には、狂犬病などの動物由来の伝染病などの担当部署はあっても、動物愛護の担当部署がありません。茨城県内での殺処分ゼロを達成するためには、茨城県だけの力で運動を進めるには限界があります。殺処分ゼロを達成した多くの自治体は、政令指定都市、中核市となっています。また、県にあっては、県内に政令指定都市や中核市が存在する自治体です。つまり、住民に身近なところで動物愛護の精神の啓発や譲渡活動が目に見える形で行われている自治体が多くなっているのです。
県内市町村でも、動物愛護条例を制定し、独自に動物愛護行政を進めている守谷市や牛久市、阿見町などの自治体があります。こうした自治体では、明らかに殺処分頭数が減っています。市町村との連携がいかに重要なのか、その証左であると考えています。
できれば、県内のすべての市町村が条例を制定し、動物愛護の体制を整備することが理想であると主張いたします。県は、昨年度から動物愛護地域連絡会議を設置し、市町村との連携強化に力を入れていますが、知事の積極的なリーダーシップに期待をするところは大であります。
以上、動物愛護の拠点施設の整備、市町村の動物愛護行政の充実と連携強化、この2点について知事のお考えをお聞かせください。
今回成立した「茨城県犬猫殺処分ゼロを目指す条例」条例案の主な内容に要約します。
この条例の特徴は、単なる動物愛護をうたうことではなく、犬及び猫の殺処分ゼロを目指すことに特化したところにあります。
まず、県の責務として、犬又は猫の飼い主に対しては、適正な飼養及び保管についての知識の普及啓発に努めるとともに、販売業者に対しては、適正な販売に関する指導を行う旨を規定しました。
また、犬又は猫の飼い主の責務として、動物の福祉に鑑み、自らが所有する犬又は猫がその命を終えるまで適切に飼養する「終生飼養」、みだりに繁殖することを防止するための「不妊去勢手術などの措置」、自己の所有に係るものであることを明らかにするための「マイクロチップ装着などの措置」について、それぞれ努力義務として規定しました。
さらに、販売業者等の責務として、購入者や譲受者に対して終生飼養を促すとともに、購入者や譲受者が終生飼養が困難であると認められるときには、犬又は猫を販売・譲渡しないよう努めなければならない旨、規定しました。
そして、県による、犬及び猫の命の尊さを学ぶ場の設定や、所有者がいない猫に対する取組への支援、関係施策を講じようとする市町村への支援などについても規定しました。
県は、殺処分ゼロを目指すための施策を総合的かつ計画的に推進するため、ふるさと納税制度等を活用した寄付金の募集及び受入れ、基金の設置、その他の必要な財政上の措置を講ずるよう、努めるものとしました。単なる理念条例ではなく、基金の造成などを明記したのは画期的だと思います。
井手県議ら公明党が条例制定への流れつくる
県議会いばらき自民党が中心となって条例案の検討を行い、県や市町村、獣医会や動物愛護団体などとの協議を続けてきました。こうした県議会の取り組みのキッカケとなったのは、平成27年9月10日に井手県議が行った公明党の代表質問でした。井手県議ら公明党は、神奈川県や群馬県、長野県、栃木県などの先進事例を調査した結果を踏まえて、動物愛護の拠点施設の整備、市町村の動物愛護行政の充実と連携強化の2点を橋本知事に訴えました。

さらに、11月には自民党の条例案に対して、公明党として市町村の役割やペット販売業者の役割などを明確にする条文を加えることを提案しまた。
具体的には、犬猫の殺処分をゼロにするためには、犬猫の飼い主に一番近い行政体である市町村の協力が不可欠です。現状の法の枠組みでは、市町村には動物愛護の所管業務がありません。その意味で、市町村に殺処分ゼロへの取組を要請する内容を前文と第3条加えるべきと提案しました。殺処分ゼロを実現するためには、犬猫を販売する業者の責任は大きく、第5条に2項に「販売業者は犬猫の適正飼育に関して、購入しようとする者に対し、終生飼養の考え方、適正な飼育方法、しつけ方法などの普及・啓発に努めなくてはならない」との、条文を追加し終生飼養や適正飼育の情報の普及啓発に努めるべきことを明記すべきと提案しました。

茨城県犬猫殺処分ゼロを目指す条例
(前文)
犬や猫は、人間に最も身近な動物の一つであり、家族同様の存在として私たちの生活に癒やしと潤いを与えてくれる。その一方では、飼い主の犬や猫の習性に対する理解不足による身勝手で無責任な飼養放棄、県民からの苦情及び相談に基づく犬の捕獲等により、多くの犬や猫が殺処分されている。
特に、本県は、犬の殺処分頭数が長年にわたり全国上位に位置するほど多く、県民が深く憂慮すべき状況にある。
犬や猫の命を尊ぶことがひいては人間の命の尊厳の確保につながることに鑑み、今こそ、犬や猫を飼養し、又は業として犬や猫を取り扱う者には、それらの命の大切さに対する認識を新たにして行動することが求められている。
ここに、私たちは、県、市町村及び県民が一体となって、犬や猫の殺処分ゼロを目指すことを声高らかに宣言し、犬や猫と共に幸せに暮らせる社会の実現に向けて行動する決意を明確にするため、 この条例を制定する。
(目的)
第1条 この条例は、犬及び猫の殺処分ゼロを目指すため、犬及び猫の適正な飼養及び保管に関する県、犬又は猫の所有者、販売業者等の責務その他の必要な事項を定め、殺処分となる尊い命を生じさせない取組を県、犬又は猫の所有者、販売業者等が協働して推進し、もって県民が犬及び猫と共に幸せに暮らせる社会の実現に寄与することを目的とする。
(定義)
第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
(1)販売業者動物の愛護及び管理に関する法律(昭和48年法律第105号。以下「法」という。)第10条第1項の規定による第一種動物取扱業の登録を受けた者のうち、犬又は猫の販売又は繁殖を業として営む者をいう。
(2)購入者犬又は猫を販売業者から購入し、かつ、飼養又は保管を行おうとする者(犬又は猫を購入しようとする者と当該犬又は猫の飼養又は保管を行おうと
する者が異なる場合は、飼養又は保管を行おうとする者)をいう。
(3)譲渡者自らが所有する犬又は猫を他人に譲り渡そうとする者(法第24条の2の規定による第二種動物取扱業の届出をした者のうち、犬又は猫を他人に譲り渡そうとする者を含む。)をいう。
(4)殺処分ゼロ地方公共団体による犬及び猫の殺処分(人の生命及び身体の安全の確保、公衆衛生の向上等のためにやむを得ずなされる殺処分を除く。)がなくなることをいう。
(県の責務)
第3条 県は、犬又は猫の所有者及び占有者に対し、適正な飼養及び保管についての知識の普及啓発に努めるものとする。
(1)県は、販売業者に対し、適正な販売に関する指導を行うものとする。
(2)県は、この条例の目的を達成するため、犬又は猫の殺処分頭数の減少に資する活動を行う人材及び団体の育成に努めるものとする。
(犬又は猫の所有者の責務)
第4条 犬又は猫の所有者は、動物の福祉に鑑み、自らが所有する犬又は猫がその命を終えるまで適切に飼養すること(次条第1項において「終生飼養」という。)に努めるとともに、その所有する犬又は猫を、やむを得ず飼養することができなくなった場合には、 自らの責任において新たに飼養を行おうとする者に譲り渡すよう努 めなければならない。
(1)犬又は猫の所有者は、 自らが所有する犬又は猫がみだりに繁殖して、適正に飼養することが困難となるおそれがある場合には、その繁殖を防止するため、不妊去勢手術その他の必要な措置を講ずるよう努めなければならない。
(2)犬又は猫の所有者は、 自らが所有する犬又は猫が自己の所有に係るものであるこ とを明らかにするため、マイクロチップ又は名札の装着その他の必要な措置を講ずるよう努めなければならない。
(販売業者等の責務)
第5条 販売業者は、購入者に対して終生飼養を促すとともに、購入者において終生飼養が困難であると認められるときは、犬又は猫を販売しないよう努めなければな らない。
(2)前項の規定は、譲渡者について準用する。この場合において、同項中「販売業者」とあるのは「譲渡者」と、「購入者」とあるのは「譲受者」と、「販売しない」とあるのは「譲渡しない」と読み替えるものとする。
(犬及び猫の命の尊さを学ぶ場の設定等)
第6条 県は、広く県民が犬及び猫の命の尊さを学ぶ場を設けるよう努めるものとする。
(2)県は、学校等の教育において、子どもたちが犬及び猫の命の尊さを学ぶ場を設けるため、学校等に対し、必要な情報の提供、技術的な助言その他の支援を行うものとする。
(犬猫愛護週間)
第7条 県は、犬及び猫の愛護と適正な飼養について、広く県民の関心と理解を深めるようにするため、犬猫愛護週間を設けるものとする。
(2)県は、犬猫愛護週間においては、その趣旨にふさわしい行事が実施されるよう努めるものとする。
(所有者がいない猫に対する取組への支援)
第8条 県は、所有者がいない猫を新たに生じさせないための地域住民等による人と猫との共生に配慮した取組を支援するよう努めるものとする。
(市町村への支援)
第9条 県は、市町村が次に掲げる施策を講じようとする場合においては、必要な情報の提供、技術的な助言その他の支援を行うものとする。
(1)犬及び猫の愛護並びに適正な飼養及び保管に関する知識の普及啓発に関する施策
(2)この条例の趣旨を尊重した活動を目的とした協議会等の設置
(収容される犬及び猫の頭数を減ずるための協議)
第10条 県は、県に収容される犬及び猫の頭数の減少を図るため、必要な施策について、法第39条の規定に基づき組織した協議会において協議するものとする。
(動物愛護管理推進計画における条例の趣旨の尊重等)
第11条 県は、法第6条第1項の規定に基づく動物愛護管理推進計画(次項において「推進計画」という。)を策定し、又は変更するときは、この条例の趣旨を尊重するものとする。
(2)県は、推進計画の進捗の状況について、 これを公表するものとする。
(財政上の措置)
第12条 県は、殺処分ゼロを目指すための施策を総合的かつ計画的に推進するため、ふるさと納税制度(個人が都道府県、市町村又は特別区に対し寄付を行った場合に、当該寄付に係る寄付金について個人住民税の寄付金税額控除を適用する制度をいう。)等を活用した寄付金の募集及び受入れ、基金の設置その他の必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。
付則
この条例は、公布の日から施行する。

参考:井手よしひろ県議の代表質問(平成28年9月10日)
茨城県の平成25年度の犬の殺処分頭数は、前年度1019頭減の2158頭となり、8年連続の全国最悪を返上しました。しかし、最下位を脱出したとはいえ、いまだ多数の殺処分があるという現状には何ら変わりはありません。平成26年度の状況は、犬が1751頭、猫が2218頭と、合計で3969頭が処分されています。犬が407頭の減、猫が555匹の減、合計962頭減となりました。数多くのボランティアの皆様、県獣医師会、そして動物指導センターの関係者の皆様の献身的なご努力の結果であると深く敬意を表するものであります。
茨城県は、動物愛護の事業の強化や県の枠を超えた広域譲渡の試行的な実施、飼い主のいない猫への不妊去勢手術の実施など、新たな試みも含めて、殺処分ゼロを目指す活動を本年も展開をしております。本日は、こうした着実な努力を積み重ねた上で、県が検討すべき課題を2点指摘をさせていただきたいと思います。
まず、動物愛護の拠点の整備であります。2007年9月県議会で、我が会派の田村けい子議員は、動物指導センターとは別に動物愛護啓発のための拠点施設を整備することを提案をしました。私も2009年10月の保健福祉委員会で動物愛護センターの整備を提案しています。
私は、この夏、群馬県と神奈川県、政令指定都市である横浜市の動物愛護の拠点施設を現地調査してまいりました。
群馬県では、ことし7月1日、これまで殺処分中心であった県動物管理センターにかわる施設として、群馬県動物愛護センターを県南部の玉村町に開設をしました。群馬県動物愛護センターは、犬猫等の動物の保護や苦情相談に加え、保護期間が過ぎた犬猫等について、感染症の有無や社会適応性のチェックを行い、譲渡可能と判断した場合には希望する県民に譲渡をしたり、動物愛護及び動物福祉の啓発事業を中心に業務を行います。また、動物愛護に対する県民の啓発事業の拠点としてさまざまな活動を行う施設です。この施設には殺処分を行う機能はありません。建設費は約1億4000万円、年間の運営経費は約5750万円です。鉄筋コンクリートづくり、平屋建てで全室冷暖房完備、大変コンパクトな施設ですが、使い勝手はよいようです。群馬県は、今回新設された愛護センターを中心に、きめ細やかな動物愛護行政を今後展開していくことになります。
一方、神奈川県では、動物保護センターに収容された犬の殺処分が、平成25年度にゼロになりました。平成26年度も犬の殺処分ゼロを継続し、さらに猫についても初めて殺処分ゼロを達成しました。保護された犬猫はもとの飼い主に返還されるか、新たな飼い主に譲渡されます。神奈川県動物保護センターは、設置以来40年以上を経た老朽化が目立つ施設でした。しかし、保護センターでは動物愛護のさまざまな団体や獣医師会などと協力をし、例えば保護された犬の処分するまでの期間を最低でも1カ月間程度とすることや、反対に猫は保護された当日からボランティアによる給餌、ミルクやりを行うなど、保護された動物を生かすための取り組みを行ってきました。平成21年度からは、炭酸ガスによる処分をやめてしまいました。保護センターには42のボランティア団体や個人が登録し、譲渡先を探したり、子猫や子犬を育てたりする活動をしています。こうした善意の団体と連携強化が殺処分ゼロの原動力となっています。
神奈川県は、この7月、この動物保護センターの建て直しを決定いたしました。新たな動物保護センターは犬猫の殺処分ゼロの継続を目指し、犬猫を生かすための施設として位置づけています。殺処分室の廃止や収容室の個室化、ボランティアの活動場所の提供も含め、2018年度末の完成を目指しています。総工費11億円を予定しており、全額寄附で賄うという条例を成立させました。
一方、茨城県では、笠間市にある動物指導センターにおいて、狂犬病予防法、動物の愛護及び管理に関する法律、茨城県動物の愛護及び管理に関する条例などに基づいた業務を行っています。動物指導センターは、人と動物の共生する地域社会の実現を目指して、動物愛護精神と生涯飼育、適正飼育の普及啓発に努めています。
私は、譲渡や返還を進める上では、収容期間を大幅に延長する、炭酸ガスによる処分法を変更するなど、目に見える改革が必要ではないかと訴えるものです。さらに、殺処分ゼロを進めるためには、群馬県や神奈川県のような動物愛護の拠点施設整備が必要条件であると考えます。保護された犬猫の譲渡を進めるための施設、ボランティアの活動拠点としての施設、動物愛護の啓発活動の中心施設、県民と動物が触れ合うための施設、愛玩動物の大規模災害時などへの対応の拠点施設など、多目的に活用できる施設がどうしても必要なのです。
整備手法については、今後、水戸市やつくば市が、中核市として保健所の機能を担っていくことも十分想定できますので、今後連携していくことも視野に入れて検討するべきだと思います。
二つ目の課題は、市町村との連携強化です。そもそも住民に近い地方自治体である市町村には、狂犬病などの動物由来の伝染病などの担当部署はあっても、動物愛護の担当部署がありません。茨城県内での殺処分ゼロを達成するためには、茨城県だけの力で運動を進めるには限界があります。殺処分ゼロを達成した多くの自治体は、政令指定都市、中核市となっています。また、県にあっては、県内に政令指定都市や中核市が存在する自治体です。つまり、住民に身近なところで動物愛護の精神の啓発や譲渡活動が目に見える形で行われている自治体が多くなっているのです。
県内市町村でも、動物愛護条例を制定し、独自に動物愛護行政を進めている守谷市や牛久市、阿見町などの自治体があります。こうした自治体では、明らかに殺処分頭数が減っています。市町村との連携がいかに重要なのか、その証左であると考えています。
できれば、県内のすべての市町村が条例を制定し、動物愛護の体制を整備することが理想であると主張いたします。県は、昨年度から動物愛護地域連絡会議を設置し、市町村との連携強化に力を入れていますが、知事の積極的なリーダーシップに期待をするところは大であります。
以上、動物愛護の拠点施設の整備、市町村の動物愛護行政の充実と連携強化、この2点について知事のお考えをお聞かせください。