松村克弥監督(中央) 映画監督、ドキュメンタリー制作者と著名な松村克弥氏が、「天心」「サクラ花−桜花最期の特攻−」に 続く、茨城県を舞台にした歴史シリーズ第3弾として、「ある町の高い煙突」の映画化を企画しています。1月5日、日立市内のホテルで開かれた日立市賀詞交換会で、井手よしひろ県議は、松村監督らの取り組みを紹介しました。
 「ある町の高い煙突」は、昭和の文豪、新田次郎さんの未だ映画化されていない最後の傑作ともいわれています。茨城県の日立鉱山の実話をもとにドキュメント映画として制作、2018年春撮影、秋完成予定を目指しています。
 富国強兵のために多くの町や人々が無残な犠牲になり続け、日本のいたる場所で深刻な環境破壊が行われていた時代にあって、日立鉱山は、地域住民との共存共栄をめざす決意をします。そこには、多くの困難に立ち向かい、煙害の克服と自然環境保護に取り組んだ英知と人間愛のドラマがありました。
 それは、当時東洋一と評された日立の大煙突と万朶と咲き誇るサクラに象徴されています。今も日本・世界で続く公害・環境汚染問題という世界史の中で、企業と地域住民が成し遂げた奇跡の協働作業であり、今日の企業の社会的責任(CSR)の原点とも言えます。「ある町の高い煙突」の高いという言葉には、物理的に煙突の高さが高いという意味とそこに住む住民と企業、双方の“志が高い”という意味が込められていると理解しています。この奇跡の実話を、日立から、茨城から発信することは、大きな意義があると考えます。
 時あたかも、本年(2017年)は、1917年に日立にソメイヨシノが煙害克服の象徴として植えられて100年の節目となります。松村監督の「ある町の高い煙突」映画化の取り組みは、誠に時機にかなった挑戦です。
 今後、松村監督らは、3月までに日立市の住民を中心とする実行委員会を立ち上げ、4月に日立市で行われる“2017全国さくらシンポジウム”前後に、具体的な企画発表したと準備を進めていく予定です。

「ある町の高い煙突」のストーリー
松村克弥監督100年前、すでに命をかけて環境破壊と戦い、愛と誇りを守った人たちがいた。
前途有望な道を捨て、住民たちのために奔走した農村の若者。その情熱と信念が世界にも類例のない“奇跡”を生んだ。
明治38年、茨城の地に開業した日立鉱山(現・日立市)。やがて鉱山の宿命とも言える“煙害”が発生。亜硫酸ガスが山を荒らし、農民たちの命である畑作物まで、も奪っていく。
そこで、立ち上がったのが23歳の地元の若者、関右馬充(せき・うまのじょう)だった。
関は郷土であった名家に生まれ、名門旧制一高に合格。前途洋洋の未来が待っていたが、祖父、兵馬が煙害による心労で、病に倒れ、関は誓う。「おれは村に残る。祖 先の墓と祖父様の遺体を汚した、この煙を絶対に許すことはできない!」
こうして、関たち地元住民と、日立鉱山との苦闘のドラマが幕を開けるのだった。
やがて、関は住民との交渉役である社員の角弥太郎や妹の女学生・千穂に会い、心を通わしていく。さらに煙害に向かう関の熱意は社長の久原房之助も動かし、世界一の大煙突を建てることになる。
日立鉱山は一丸になり、宿命の煙害に挑んで行くのだった。
(写真は「日立の大煙突アルバム復刻版」より転載させていただきました。http://ksplan.sub.jp/daientotsu/
在りし日の大煙突

映画「ある町の高い煙突」を応援します。