ジニ係数の推移
 昨年行われた英国の欧州連合(EU)離脱を巡る国民投票や米大統領選では、社会に生じた深刻な亀裂が浮き彫りになりました。その要因の一つとして指摘されているのが所得格差の拡大です。
 グローバル化によって富める者はますます裕福になり、中低所得層の多くが取り残されます。その結果、怒りの矛先が既存の政治へと向かったとの見方が有力です。グローバル化は止めようもありませんが、国民の声に真摯に耳を澄ますことの重要性を、あらためて痛感しないわけにはいきません。
 日本でも格差や貧困の問題が国民生活に影を落としています。この現実に向き合い、解決に努めることは政治の重大な責務です。
 グローバル化の下で格差の拡大を防ぐにはどうするか。労働者の賃上げと並んで、成長の果実を社会に適切に分配することが重要です。この点で自公政権は着実に成果を挙げてきています。
 例えば、厚生労働省が昨年発表した所得再分配調査では、所得格差を示す「ジニ係数」が過去最高を更新し、所得格差が最大となりました。しかし、当初所得から税金や社会保険料を差し引き、年金などを加えた再分配後のジニ係数は低下し、再分配による改善度は過去最高を記録しているのです。このことは、あまりニュースなどでも取り上げられていません。
 わが国では、所得の再分配機能が格差拡大の防止に効果を発揮していると言えます。  
 また、格差是正や貧困の連鎖解消をめざして公明党が推進した政策が数多く実現しました。公的年金を受け取るために必要な保険料納付期間を25年から10年に短縮した無年金者救済法や、学ぶ意欲がある若者を支援する返済不要の給付型奨学金制度、配偶者控除の年収要件を150万円以下に拡大したことは、その一例です。
 国内外を問わず先行きが不透明な中で、政治に求められるのは目に見える形で果実を示すことです。保守中道の連立政権の一翼を担い、政治を前進させている公明党の役割はますます大きくなっています。
 「公明党が掲げる『大衆とともに』との理念が、米国と同じような状況をつくり出さないための最大の“処方箋”になる」(作家の佐藤優氏)との期待の声に応えていかねばなりません。

所得の再分配
 厚生労働省は、昨年9月に「平成26年所得再分配調査」結果を公表しました。所得再分配調査は、社会保障制度における給付と負担、租税制度における負担が、所得の分配にどのような影響を与えているかを明らかにし、今後の施策立案の基礎資料を得ることを目的として、昭和37年度以降、おおむね3年ごとに実施されています。
 これによると、所得格差を示すジニ係数は過去最大となりましたが、所得再分配後の格差は、自公政権の政策実現の結果もあり、むしろ縮小しています。

所得格差を示す「ジニ係数」は0.5704と過去最大
 ジニ係数とは所得の格差を表す指標で、1に近いほど貧富の差が激しいことを示しています。この数字が年々大きくなっているわけですから、日本の格差は拡大しているということになります。
 格差が拡大している最大の原因は高齢化と考えられます。高齢者は働き盛りの世代と比較すると、所得が大幅に減少します。日本では高齢化が進んでいることから、所得が低い人の割合も増えるわけです。また、大家族から核家族への移行も、結果的に所得の低い世帯を拡大しています。当然ですが、非正規労働者が増えていることも、格差拡大に拍車をかけているのも事実です。

中間層以下の所得税は実質的に無税に
 しかし、この数字はあくまで名目上の所得から得られたものです。わたしたちは、名目上の所得をすべて消費や貯蓄に使えるわけではありません。そこから税金などが差し引かれるため、実際に使える金額(可処分所得)はもっと小さくなります。日本では累進課税制度が導入されているため、特に高額所得者には多額の税金が課されます。
 年収が600万円以下の人は各種の控除があり、実質的には数%以下の税金しか徴収されていません。中間層以下の人は、所得税については実質的に無税に近い状況です。一方、年収が2500万円を超える人には実質的に35%程度の税金が課せられます。日本で1000万円以上の給与所得がある人は、給与所得者全体のわずか4%ですが、高額所得者が支払う所得税は給与所得者全体の半分近くに達します。つまり日本の所得税は高額所得者に依存しているわけです。

所得再分配後の「ジニ係数」は0.3759と格差は縮小
 累進課税や各種社会保障給付など所得再分配が実施された後のジニ係数は0.3759となり、格差は大幅に縮小しています。しかも所得再分配後のジニ係数は前回調査よりも、わずかですが小さくなりました。つまり、お金持ちからたくさん税金を取ることで、最終的な所得格差は縮小したということになります。

所得階層別の所得再配分状況
参考:平成26年所得再分配調査結果について
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000131775.html