経済的な困難を抱える高校生が大学などに進学できるよう返済不要の「給付型奨学金」が2017年度に一部先行実施され、18年度から本格実施されることになりました。
 今月20日に召集された通常国会では、関連法案や、経費を盛り込んだ17年度予算案の審議が行われます。文部科学省での制度設計の議論にも携わった東京大学の小林雅之教授に創設の意義などについて、1月23日付の公明新聞より掲載します。

大学進学への強い後押し、公明の尽力を評価“経済的理由で断念”防ぐ
東京大学小林雅之教授 公的な奨学制度が「貸与型」のみだった日本で、「給付型」が創設されることは非常に画期的だ。制度創設へ公明党がどの党よりも早くから一貫して主張し、実現に尽力してきたことを高く評価したい。
 制度設計に当たっては、「経済的理由で進学が難しい子どもの背中を押せる制度」かどうかがポイントだった。拡充される無利子奨学金なども併せて活用することで、生活費を含めて支援する一つの態勢が整った。かなり教育費の負担が軽くなる。進学への強い後押しになると期待している。
入学金支援の対象拡大を
給付型奨学金 18年度からの本格実施では2万人が対象となる。決して少ない数ではない。私たちの調査でも、経済的な理由で進学できなかった人のうち、給付型奨学金をもらえれば進学を希望するという人は、大学だけで8000人程度、短大・専門学校も含めると2万人程度いることが分かっている。
 給付の要件は、高校などの推薦によることとなった。一律の学力基準ではなく、個々の状況を考慮しつつ校長が推薦する。高すぎる学力基準に慎重姿勢を示し、学力以外の要素も考慮するよう求めた公明党の考えが反映されたと言えよう。

学生の実態にもよく目配りされた設計になっている
 例えば、公明党が提案した児童養護施設出身者などへの24万円の追加給付は非常に重要だ。入学金を含めた初年度納付額は高く、どうしても最初の“関門”をクリアできない人は多い。追加給付の対象範囲は今後、さらに広げてもらいたい。
 奨学金に関する相談窓口が設置された意味も大きい。今回、卒業後の所得に応じて返還額を変える新たな「所得連動返還型奨学金」が始まることもあり、制度をどう利用するか、学生は選択しなければいけない。進学に必要なトータルの費用も含めて十分な説明を受け、納得でき無理のない形にしていくことが必要だ。相談窓口設置という公明党の提案は、地味だが大事な視点だ。
 来年度予算案では、幼児教育の無償化や高校生等奨学給付金の拡充など教育費の負担軽減が少しずつ前進していることを評価したい。
 ただ、やるべきことは残っている。「給付型」はようやく「生まれた」が、給付額の増額や、家計が急変した在学生への対応など、今後さらに「大きく育てる」必要がある。公明党には、さらなる取り組みを期待している。