ふるさと納税サイト
ふるさと納税制度で8億4000万円以上の寄付(平成27年、28年度)
 広島県の中東部に位置する、人口9500人余りの小さな町・神石高原町への「ふるさと納税」が激増しています。犬の殺処分ゼロへ「あなたの支援でワンコの命が救えます」と呼び掛けるNPO法人への支援を、使い道の一つに指定したことが支持を集めている理由です。ふるさと納税は、地元の特産品など“お礼の品合戦”が話題を呼ぶ一方で、寄付による“政策選択”の側面からも注目され始めています。

平成26年12月末の犬の収容状況 神石高原町が、ふるさと納税の使い道を選択できる仕組みを導入したのは2014年度。寄付する人自身に、子育て支援など町の5つの施策のほか、町内の31自治振興会、6つのNPO法人の中から支援する取り組みを選んでもらいます。選ばれた団体には寄付の95%が交付され、残り5%は町の財源になる仕組みです。この制度に、全国から想定を超える反響が寄せられました。
 2015年度のふるさと納税は13年度比の240倍で約3億8500万円。今年度は、さらに増える見通しです。この劇的な増加の鍵は、神石高原町に本部を置く認定NPO法人「ピースウィンズ・ジャパン(PWJ)」(大西健丞代表理事)の活動が広く共感を呼んだことです。
 PWJは、犬の保護・譲渡活動「ピースワンコ・ジャパン」事業(大西純子プロジェクトリーダー)を進め、2016年4月から広島県内で殺処分対象となった全ての犬の引き取りを開始しました。2011年度に、犬・猫の殺処分数で全国ワーストを記録した広島県は、昨年4月から9月まで犬の殺処分ゼロを実現しています。
 「一匹でも多くの命を救って」、「素晴らしい取り組み。継続的に応援していく」などと、ふるさと納税した全国の人々からエールが次々と神石高原町に届いています。犬舎の建設や運営、えさ代、スタッフの人件費など活動費用は膨大ですが、善意の広がりが、犬の保護活動の「広島モデル」として定着しつつあります。
ピースワンコ・ジャパンの拠点施設
 2017年2月9日現在、ふるさと納税サイトでの実績は(2016年10月5日〜2017年10月4日)、目標10億円に対して、3億5924万円(達成率35.9%)となっています。支援者数は1万4394人となっおり、平均寄付額は2万4957円です。その95%がPWJの活動に充てられます。
ふるさと納税サイトに掲載された活動趣旨
広島県神石高原町のピースウィンズ・ジャパンが運営する「ピースワンコ・ジャパン」プロジェクトでは、2016年までに広島県内の犬の殺処分をゼロに、そして世界中の方が訪れる2020年の東京オリンピックまでに日本の犬の殺処分をゼロにする、という目標を掲げています。
皆さまからのご支援によって保護施設を拡充し、今年(2016年)4月以降は広島県の殺処分対象犬を全頭引き取り、広島県の犬の殺処分ゼロを維持しています。ワースト県でゼロを実現し、全国にその流れを広げようとするこの勝負の年に、さらなるご支援をどうかよろしくお願いいたします。

ドイツ流のシェルター施設
 2月8日、井手よしひろ県議は、PWJを訪問し、国内事業部長國田博史さんからお話を伺い、主な施設を実際に視察しました。
 PWJはドイツや北欧の動物愛護モデルを、日本で進めようと考えています。動物の保護舎(シェルター)は間口2メートル、奥行き3メートルの長方形で、1匹から数頭の犬を収容します。その部屋の裏には、専用の小さな区画の屋外スペースがあり、さらに、その奥には広いドックランが作られています。床は、清掃がしやすく滑りにくい特性のタイルが貼られていました。すばらしい施設で、管理も行き届いていました。

シェルターに収容された犬
不妊去勢に対する考え方
 PWJは、犬については、不妊去勢によるメリット・デメリットを生物学的、医学的観点から総合的に検討した上で、保護舍運営においてはコントロール(犬の管理)によって繁殖を制限することを優先しています。年齢や病気の有無、性格などを考慮し、個体ごとに不妊去勢すべきであると判断した場合には、処置を行っています。繁殖のシーズン中の雌犬を隔離することで繁殖制限を行っており、保護犬同士の新規繁殖件数は現在のところないということです。
 譲渡に関しては、里親希望者がきちんと繁殖制限管理ができる状況かを個別に家庭訪問などで確認し、繁殖制限の必要性を丁寧に説明した上で保護犬を渡することにしています。その後の不妊去勢の実施については里親様に判断を委ねていしています。また、譲渡する保護犬には、すべてにマイクロチップを入れ、モニタリングが可能となるようにしています。
 受け入れ時にすべての犬に不妊去勢処置をしないことに、一部の愛護団体から批判も寄せられているようです。國田さんは、「私たちのフィロソフィーであり、ドイツや北欧では広く認められた考え方です。様々なご意見をいただいておりますので、真摯に情報を公開するなど、ご理解をいただけるよう努力していきたいと思います」と、話していました。
参考:ピースワンコ・ジャパン「私たちの殺処分ゼロに向けた取り組みについて」 http://peace-wanko.jp/news/205

施設の充実と県外の譲渡拠点拡大
 また、今後、保護すべき犬が相当数増えることも想定し、保護舍の建設も進めるとしました。
 さらに、県外における譲渡拠点も、増やす計画があることを表明しました。広島県の譲渡対象犬を全国に拡散するのではないかとの批判には、「その地元、地元の殺処分削減に協力していきたい」と語りました。藤沢や世田谷の拠点でも、神奈川や都内の処分対象犬を受け入れていると説明しました。

殺処分ゼロを目指す他団体への応援事業
 さらに、4月からは、PWJは犬猫の殺処分ゼロを目指す団体に対して、「殺処分ゼロ・チャレンジ推進助成事業」を立ち上げることになりました。この事業は、犬猫の殺処分ゼロの実現を目指す普及啓発、人材育成、引き取り、譲渡等の取り組みにたいして、最大300万円の財政的支援を行おうとするものです。来年度助成事業の採択案件数は5〜10件程度を予定しています。
参考:ピースワンコ・ジャパン「【公募助成】殺処分ゼロに向けたチャレンジを応援する助成事業を開始します」 http://peace-wanko.jp/news/206

 ピースワンコ・ジャパン・プロジェクトは、国際的なNGO活動から派生した取り組みです。日本政府は、紛争地帯での人道支援や大規模な自然災害への支援のために、ジャパンプラットフォームを整備して、財政的な支援などを行っています。動物愛護についても、民間団体を中心とした動物愛護のプラットフォームの国として整備する必要性があると痛感した視察となりました。
参考:ピースワンコ・ジャパンのHP http://peace-wanko.jp/