東海第2原発
 2月9日、日本原子力発電(日本原電)東海第2原発の周辺自治体が、再稼働の事前了解に関与できるよう、原電に原子力安全協定の見直しを求めている問題で、周辺自治体の首長らは、日本原電の村松衛社長に「あらためて安全協定の見直しを要求する」とする要望書を手渡しました。
 要望書は日本原電の今までの説明に対し「失望極まりない」と強く非難した上で、改めて協定の見直しを要請しています。首長懇の座長を務める山田修・東海村長は「これが最後の要請。重く受け止めてもらいたい」と、マスコミ関係者の発言しました。一方、村松社長は「真摯に対応していきたい」と語りました。
 東海第2原発の再稼働や40年を超えての運転延長をめぐる議論の中で、周辺市町村との原子力安全協定の範囲拡大の議論が盛り上がりを示しています。
 東海第2原発の周辺住民の健康や生活環境を守るために、茨城県、東海村、日立、常陸太田、那珂、ひたちなかの4市が、原発を運営している日本原電との間で安全確保に関する取り決めを定めた原子力安全協定を結んでいます。
 安全協定には強制力はありませんが、施設の増設などをするときに、日本原電は、「事前に県と村の了解を得る」との一文があります。これに対して、市村長側は隣接する日立市、常陸太田市、那珂市、ひたちなか市に、県庁所在地の水戸市を加えたうえで、周辺5市を東海村と同等の扱いにするよう求めています。
 昨年(2016年)12月、東海第2原発周辺5市の市長と東海村長でつくる懇談会で、市長側は、原発再稼働の際に原電が同意を取り付ける必要がある自治体を増やすことを、改めて求めました。しかし、「株主の大手電力会社から理解を得るのは困難。原電1社では判断できない」と、日本原電の担当者は難色を示しました。
 2011年の福島第1原発事故を受け、原発を再稼働するには、新しい基準に対応した工事が必要になりました。安全協定では、こうした工事をする際、日本原電が事前に県と東海村から同意を得ることとしています。現状では、周辺5市は再稼働を認めるかどうかの判断に加わることができません。
 ひとたび福島第1原発のような事故が起きれば、東海村以外の周辺にも甚大な放射能被害が及ぶことが予想されており、周辺市は危機感を強め、2012年7月、東海村と同等に再稼働などに承認が必要な権利を与えるよう主張しました。
 福島第一原発事故後、原発の寿命が原則40年に決まり、東海第2原発は来年11月に、その40年を迎えます。この運転延長の申請は、今年11月までに提出する必要があります。
 日本原電は運転延長の申請をすると見られており、再稼働と運転延長という大きな節目を迎えています。日本原電は昨年12月の会合で初めて周辺5市の要求に対して、「原発への立ち入り調査を無条件で認める」などを認めましたが、東海村と同等の権利を認めることはゼロ回答でした。
 日本原電が市長側の要求に応じない理由は、大株主の大手電力会社の存在があります。東京電力や関西電力など電力5社に電気を売る原発専業の卸会社の日本原電は、大手電力9社が株の85%を保有し、経営陣にも大手電力出身者が名を連ねています。
 日本原電が、運転していた原発3基のうち、東海第2は2011年の東日本大震災で停止したまま。福井県にある1基は廃炉が決まり、もう1基も再開のめどは立っていません。発電を一切していない企業が、大手電力会社による維持管理費の負担や資金繰りの支援で、運営されている状況です。仮に、安全協定を拡大して、自治体の反対で再稼働や運転延長が出来なければ、日本原電の存在基盤自体がなくなってしまいます。

■東海第2原発を巡る主な動き
2011年3月 東日本大震災で東海第2原発が停止。福島第1原発事故が発生
2012年7月 原発周辺の首長懇談会が原電に、原発再稼働の際に同意を取り付ける必要がある自治体を増やすよう要求
2014年5月 原電が東海第二原発の再稼働に向け、新しい規制基準での審査を申請
2017年11月 運転延長の申請し締め切り(?)
2018年11月28日 東海第2原発の原則40年の運転期間が終了