茨城県北芸術祭のイメージ
 昨年(2016年)、9月17日から11月20日までの65日間、日立市、高萩市、北茨城市、常陸太田市、常陸大宮市、大子町の6市町で、65日間開催された茨城県北芸術祭は、目標30万人を大きく上回る77万6000人の来場者を迎え、大成功の内に終了しました。77万6000人という来場客数は、全国的にも大きな盛り上がりを示す地域芸術祭の中でも、瀬戸内国際芸術祭についで、全国第2位という驚異的な数字です。
 県北地域の住民にとっても、「こんな多くの若い人がパンフレットを抱えながら街を闊歩する姿は見たことがなかった」「カフェの売上げが通常の5倍を超え、毎日が土日のような盛況だった」「茨城県の県北地域が、こんなに魅力的な場所だということを初めて知った」などとの声が、私どもにも寄せられています。
 井手よしひろ県議らは、県北芸術祭の魅力を多くの県民に発信したいと、2万枚の案内チラシを作成し配布。県北芸術祭のキュレーターを迎えての講演会も日立市と常陸太田市で開催しました。また、県北芸術祭の特設ホームページを作成し、そのアクセス数は4万5000件を超えました。さらに、常陸多賀地区でワークショップを展開した和田永さんの演奏を動画配信したところ、全世界からアクセスが集中し20万回以上再生されました。
 県北芸術祭の成功に一定の貢献ができたと自負しています。
去る2月6日、茨城県は、県北芸術祭の経済波及効果について集計結果を公表しました。それによると、県北芸術祭の経済波及効果は、35億3300万円に達しました。また、広告費に換算したパブリシティー効果(広告費換算額)は42億4200万円となりました。
 この経済波及効果の分析は、常陽産業研究所が行いました。総来場者数77万6000人から、アンケート調査結果をもとに、実際の来場者数を21万5000人と推計しました。県内の来場者のうち、日帰り客(15万6511人)を5819円、宿泊(9008人)は2万350円。県外からの来場者は、日帰り(1万9580人)9050円、宿泊(2万9901人)は2万7660円と推計。来場者の飲食代や交通費、宿泊費などを含んだ直接的な経済効果を、23億3800万円としました。来場者の消費活動などを機に、周辺で生産活動が活性化した効果(1次間接効果)が6億9000万円。生産活動が活発化したことで、雇用者の所得が向上し、消費行動が活発化たことによる2次間接効果が5億600万円としました。
 パブリシティー効果は、2015年9月30日から2017年1月20日までの16ヶ月間に、県北芸術祭は、述べ3042件のテレビ、新聞、ネットなどの報道、紹介がありました。この効果を実際に有料で行なった場合、42億4500万円の費用がかかったと計算しました。
 しかし、会場が首都圏の一角であり、宿泊客の割合が低いという特性があるため、経済波及効果は相対的に小さくなりました。反面、パブリシティー効果は非常に高く、茨城県のイメージアップに大きく貢献したといえます。

県北芸術祭知事要望004
 昨年11月18日、井手県議ら茨城県議会公明党議員会は、橋本昌知事に「茨城県北芸術祭の継続開催に関わる要望書」を提出しました。この要望活動には、会場となった県北6市町の公明党所属の地方議員の代表も参加しました。
 地域芸術祭については、様々な意見があります。現代アートの芸術祭が乱立するために、アートそのものの質が下がっているのではないかとの指摘があります。絵画や彫刻などの既存の芸術(クラシカルアート)家や団体の一部からは、一過性のイベントに公的な予算を出すことに批判もあることも事実です。
 しかし、こうした議論を乗り越えて、県北地域で芸術祭を行う意義は、第1にこの地域が持つ特殊性にあります。海と山の多様な自然、岡倉天心の事績や、クリストの作品が実現した歴史、この特徴を生かせば新たなアートの祭典が生まれるのではないかという挑戦です。
 第2に、都道府県別魅力度ランキングで4年連続全国最下位の茨城県にとって、県北地域の魅力を全国に発信できれば、茨城県のイメージアップにつながります。
 第3に、県北地域を元気するためには、県北の住民が変わることが必要です。その方法はみんなが創造的に生きること、新たな価値を見いだすこと、ここが一番重要です。芸術祭をきっかけに、昨日とは違うことをやってみようという発想を持つこと、違う生き方に挑戦してみること。それが県北に住む人々を元気にして、新たな経済効果をもたらし、結果的にはその社会を活性化するのではないでしょうか。そのキッカケに今までやったことのない地域芸術祭という挑戦は大きな意味がありました。
 こうしたことから考えると、今回の県北芸術祭は様々な課題を今後克服しながら、次につながる大きな結果を出せたと考えています。というよりも、一度の芸術祭だけではその本当の意義は伝わりませんし、役割を果たせません。これは継続することが何よりも重要という結論に至ります。
 また、今回の県北芸術祭の最大の課題は、開催市町との話し合いが不十分で連携が充分にとれていなかったことです。4年後開催という目標を明確にし、市町の独自の企画や運営によるプログラムも充実させ、本当の意味で6市町と県が一体となった芸術祭を開催すべきです。その意味で、県北芸術祭の閉会までに、開催6市町のすべての首長と直接面会し、継続開催について意見交換を行いました。6人の首長全員が、県北芸術祭を継続することに賛意を表明していました。

 こうしたことを踏まえて、井手県議は3月3日行われる県議会代表質問で、橋本知事に以下の提案を行います。
 県北地域の更なる活性化と芸術文化の振興を図るために、茨城県北芸術祭を3年に一度開催するトリエンナーレ形式で継続することを改めて提案します。
 そして、次回開催は3年後の2019年ということになりますが、この年は茨城国体の開催時期と重なりますので、1年遅らせて2020年とします。
 オリンピックイヤーの2020年に、東京オリンピック文化プログラムの一環として、第2回県北芸術祭を催すべきと考えます。