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 茨城県では、一昨年(2015年)「茨城県がん対策推進条例」が議員提案で成立しました。国では、がん患者が安心して暮らせる社会の構築に向けた取り組みを強化するための「改正がん対策基本法」が、昨年成立しました。
 2006年成立のがん対策基本法に加えて、13年にはがん登録推進法が成立するなど、公明党の推進でがん対策の基盤が大きく整いましたが、新たな課題も浮き彫りになっています。
 例えば、がん患者の3割以上が離職している実態は深刻です。がん対策改正法には、事業主に対し、就労継続への配慮とともに、がん対策への協力を求める「事業主の責務」を明記しました。治療と就労の両立をめざす患者への、応援のメッセージになります。
 また、患者と家族らの苦痛の軽減や、療養生活の質の向上に向けた緩和ケアの強化も打ち出しました。専門人材の育成ととともに、診断時から適切に緩和ケアが提供されるようになりました。
 予防できるがんを確実に予防するため、胃がんや肝がんの原因となり得る感染症対策が盛り込まれました。胃がんと肝がんの罹患は、がん患者全体の4分の1を占めます。胃がんの場合、原因となるピロリ菌の除菌への健康保険の適用が拡大され、死亡率が減少する効果も見え始めています。
 その上に、検診後、必要かつ適切な診療を受けることを促す環境の整備も明記されました。これまで検診で出た結果の対応は本人に任されてきましたが、受診を避ける人が少なくありません。これでは、せっかくの検診も意味がありません。市町村や健康保険組合などの保険者に対し、検診結果に基づく受診を促す施策への協力を求める内容も盛り込まれました。発見からスムーズに治療につなぐことで重症化を防ぐことが期待できます。
 さらに重要なのは、学校や社会における、がん教育の推進も明記されたことです。小中学校の学習指導要綱も改訂される見込みです。子どもころからがんを学び、その対策を講じることは、今後、がん撲滅への中心的な施策になります。
胃がん撲滅のために、ピロリ菌のリスク検査の導入促進を
 公明党の働きかけで2013年2月から、胃がんの原因とされるヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)の除菌治療に対する保険適用が慢性胃炎にまで拡大されました。今や除菌治療を受ける人は年間約150万人にまで増え、胃がんによる死亡数も、統計学的なエビデンスをもって減少しつつあります。
 国立がん研究センターは、がんの罹患者数や平均余命などの項目を加味し死亡数を予測しています。しかし、実際は14年、15年ともに予測数より3000人ずつ少ない結果となっています。
 正確な要因はまだ解明されいませんが、「内視鏡検査」の機会が増えたことで、胃がんの早期発見につながっているのことは確実です。保険診療で除菌治療を行う場合に必要となる内視鏡検査で、胃がんが見つかる人が増えています。
 胃のバリウム検査をはじめ、最近、注目されている胃がんリスク検診などを通し、できるだけ多くの人を内視鏡検査に誘導することが非常に重要です。
 70歳以上の高齢者のピロリ菌感染率は70%以上と高いままだすが、中年から若年世代の感染率低下が顕著となっています。この感染率の推移と並行するように、胃がんによる死亡数も著しく減っているのです。80歳以上の死亡数はまだ増加していますが、若い世代の感染率の低下が死亡数の減少に大きく関連しているのは間違いありません。従って、今後、胃がん死を抑制していくためには、中高年への対策がより重要だといえます。
 胃がんは早期発見によって、ほぼ100%助かるがんです。今後、死亡数をさらに減らすには、ピロリ菌の有無を調べる検査体制の確立とともに、高齢者をがん検診へと導く取り組みが急務です。例えば、今も多くの国民が受けているバリウム検査においても、ピロリ菌の検査を併用することは有効です。一刻も早く検査に追加すべきです。
 全国どこでも除菌治療ができる体制はほぼ整っているので、一人でも多くの国民にピロリ菌の感染を知る機会があれば、胃がんで亡くなる方は確実に減少します。
 茨城県内でも、いち早く水戸市と牛久市が胃がん検診のメニューにピロリ菌のリスク検査を導入しています。他の市町村も、導入を県が積極的に奨励すべきだと思います。
 一方、若年層のピロリ菌検査導入は、将来の胃がん発生リスクを大幅に減少させます。佐賀県は2016年度から、県内の全中学3年生を対象に胃がんの主な原因であるヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)の検査を実施しました。佐賀県は長年、がんの死亡率が全国でも高く、中でも75歳未満の胃がんの死亡率は2014年、全国でワースト2位と、深刻な状況です。
 そこで佐賀県は、子どもたちの40年先の胃がんリスクを取り除きたいと、ピロリ菌除菌に用いる薬の対象が15歳以上であることから、中学3年生を対象に検査を実施することにした。検査費用は県が負担し、要治療生徒の除菌治療費も、県が自己負担分を全額助成しています。
 また、鹿児島県も来年度予算に3900万円を計上。ピロリ菌と胃がんとの関連について、子どもや保護者の理解を深めるため、ピロリ菌検査を導入するとしています。
 中学3年生へのピロリ菌検査導入を茨城県でも早期に実現すべきだと提案します。