
40年後の胃がんリスクを限りなくゼロに
水戸市は来年度(平成29年4月)から、市内の公立中学校の2年生を対象に、採血によるピロリ菌検査を実施することになりました。
ピロリ菌への感染は将来的な胃がん発症リスクを高めるとされ、幼児期までに感染するケースが多いことから、早期の発見と治療の必要性が指摘されています。全中学の生徒を対象にした検査の実施は県内初で、井手よしひろ県議ら公明党が、その導入を強く求めていました。ピロリ菌はほとんどが5歳以下の乳幼児期に家族などから感染し、長い時間をかけて徐々に胃を荒らし、胃炎や胃がんを引き起こすため、感染している場合、なるべく若い時期に除菌治療をすることで胃がんなどの病気を予防する効果があると考えられています。一度除菌に成功すれば、再感染することはほとんどないと言われています。
検査の対象は、市立中学校15校の2年生と市立国田義務教育学校(小中一貫教育校)の8年生で、17年度は計2112人に上ります。検査のための採血は、9〜12月中に各校内で、従来から2年生を対象に実施している「貧血検査」とあわせて行います。生徒・保護者の同意を得て、ピロリ菌検査のために採血量を増やします。市議会で予算が承認されれば、市が1人当たり1404円の検査費用を全額負担します。(予算の総額は300万円です)
検査結果は学校経由で生徒に直接通知されます。結果の陽性・陰性にかかわらずピロリ菌感染に伴う胃がん発症のリスクや除菌治療の方法なども案内していきます。
なお、内視鏡などによる2次検査やピロリ菌除菌の費用に対する助成は、今回の水戸市の事業には含まれていません。

2013年2月より、ピロリ菌感染のある慢性胃炎の患者も、除菌治療を保険で受けられるようになりました。胃がんの主な原因はピロリ菌による慢性胃炎であり、除菌治療による胃がん予防が正式に認められたことになります。除菌により、中高年では胃がんのリスクを3分の1に、中学生や高校生であればほぼゼロにできるといわれています。
現在、日本人の死因の三割を占めるがんですが、その中でも胃がんは肺がんに次ぐ位置にあり、年間5万人が死亡しています。その意味でも確実な効果の望めるピロリ菌の除菌による胃がんの予防は大きな意義を持っています。
平成19年から松本市内の高校で、高校2年生を対象とした尿検査によるピロリ菌の学校検診が継続して続けられています。平成24年までの6年間に2641人がピロリ菌検査を受けており、その結果が、信州大学の消化器内科から報告されています。このピロリ菌検診では、尿検査で116 人(4.4%)が陽性となり、その内60人が内視鏡による二次検診を受けました。さらに、感染が確認された49人に対し除菌治療を行い、治療後の検査を受けた46人は一回の治療で除菌に成功しています。
大阪府高槻市では、平成26年度から中学2年生を対象にピロリ菌の抗体検査と除菌治療を無料で行っています。平成26年度に高槻市のピロリ菌検査を受けた中学2年生は1764人で、その内57人(3.2%)が感染していました。高槻市の制度を利用して除菌をした人のほとんどが、治療に成功しています。
井手県議は、中学生を対象とするピロリ菌検査を、全県で実施するよう3月3日の県議会代表質問で提案する予定です。