4月27日、京都府は大規模災害時の「車中泊の課題と対策」を取りまとめ、府庁内で開催された府戦略的地震防災対策推進部会で公表しました。
京都府は亀岡市と協力して検討を行いました。亀岡市で、最も大きな被害を及ぼすことが予想される「埴生(はぶ)断層」による亀岡市内の地震被害を想定、亀岡市での避難者は約1万9千人と試算した上で、車中泊避難者は約3800人、車両は約1200台と想定。昨年9月から課題と対策を検討してきました。
それによると、車中泊避難は「災害時は指定避難所への避難が基本であり、推奨されるものではない」との前提で、余震の不安やプライバシー確保、ペット同伴などの理由で否定はできない、としています。
車中泊は被災者がそれぞれに避難場所を選ぶため、避難者数や救援物資の数量の把握と取りまとめが複雑化する上、駐車スペースの確保、エコノミークラス症候群による関連死などの問題も想定しています。
その対応策として、あらかじめ車中泊専用として大規模な避難場所をリストアップし、指定避難場所でも一定対応できるように駐車場を区分けする。管理運営の効率化のため分散化を避け、電気や水道、トイレが確保できる場所が望ましいと提案しています。
また、地域・地区ごとの駐車場区分け、車中泊避難者の名簿作成、班の構成、健康被害防止のチラシ配布などのルールづくりをするとし、運営面でも、行政が行うのは開設当初までで、中長期的には避難者・ボランティア・NPO法人に移行できるような関係づくりを求めています。
その一方、車中泊を選ばず指定避難所に避難できるように、個室確保、周囲の視線を遮る間仕切り設置、要配慮者に対応した福祉避難コーナー設置、ペット受け入れのスペース確保などを、日頃から進める必要があるとしました。
国も車中泊への対応を検討中と聞き及んでいますが、災害は何時やってくるかも分かりません。茨城県でも、具体的な研究や検討を早期にスタートさせる必要があります。
熊本地震を踏まえた車中泊避難対応検討会取りまとめ【京都府・亀岡市】
1 車中泊避難の課題
1-1 指定避難所への避難が基本としても、現実問題として車中泊避難を選択する避難者が発生する。
1-2 自然発生的な車中泊避難場所は、避難者数の把握を困難にし、救援物資が届かないなど、被災者支援が十分できない。
1-3 現行の避難所運営マニュアルは、屋内の指定避難所を想定しており、車中泊避難が発生した場合の対応方針等がない。
1-4 エコノミークラス症候群による健康被害が発生する。
1-5 車中泊避難を認めつつ、長期化や助長しない対応が必要である。(自宅への速やかな帰宅及び指定避難所への避難へのスムーズな移行)
2 課題を踏まえた対応方針
2-1 大規模災害時に車中泊避難が発生した場合を想定した専用避難場所(大規模駐車場等)をあらかじめリストアップする。
2-2 指定避難所においても、車中泊避難者に一定対応できるよう駐車場を区分けする。
2-3 行政として、避難者数を把握しやすいよう、車中泊避難についてのルールづくりや、車中泊避難を想定した運営マニュアル等を整備する。
2-4 エコノミークラス症候群防止をはじめとした環境整備及び健康対策を行う。
車中泊から、まずは速やかに自宅への帰宅ができるように、また、帰宅が困難な場合には指定避難所への移行をスムーズに行う環境を整備する。
3 車中泊避難対応案
今回の熊本地震でクローズアップされた車中泊避難であるが、その対応については多くの課題があった。自然災害の発生を防ぐことは難しいが、事前に災害時の対応を具体的に検討し、イメージし、備えることで、想定外を減らし、スムーズな避難者支援につなげることが何よりも重要である。
車中泊避難については、もはや想定内として、熊本地震のケースを踏まえ、それぞれの地域の実情を加味し、事前に対応を想定しておくことが大切であり、その参考とするための対応案を具体的に提案する。
3-1 大規模駐車場等で車中泊への対応が可能な避難場所(「車中泊避難場所」)のリストアップ
・市町村において、下記「リストアップに当たっての基準・留意事項」を参考とし、地域の実情も踏まえ、あらかじめ具体的に車中泊避難場所をリストアップする。
・「住民の屋外避難は、指定避難所への避難が基本(車中泊避難を推奨するものではない)」という考え方から、地域住民への車中泊避難場所の周知に当たっては、平時から行うのではなく、現に発災し、大規模な車中泊避難が発生すると見込まれる場合に行う方が適切と考える。
○リストアップに当たっての基準・留意事項
・指定避難所、仮設住宅建設予定地等とは別の場所とする。
・民間施設の活用も検討し、その場合、平時から協定等を締結して事前調整しておく。
・管理運営の効率化を図るため、細かな分散化を避け、一定の規模を確保できる場所として、市町村域の例えば北部・中部・南部等に分散しておくことが望ましい。
(一定規模の目安:車両200台以上の駐車場が確保できる場所)
・電気や水道、トイレ等が既存施設で確保できる場所が望ましいが、不足等が見込まれる場合は、他からの調達方法をあらかじめ決めておく。
3-2 指定避難所における車中泊避難者への対応
・指定避難所への避難は、徒歩による避難が基本であるが、一定規模の駐車場が確保できる小中学校等の指定避難所については、グラウンドを駐車場として活用し、何らかの理由で車中泊避難せざる得ない事情のある方への対応も想定する。
・必要に応じて、指定避難所内の緊急車両通行場所や物資積みおろし場所など、他の車両による駐車・進入禁止場所を明示する。
3-3 車中泊避難場所における運営マニュアル等の整備
<市町村における車中泊避難場所の運営方法(ルール)>
・地域の自治会、自主防災組織や消防団等への協力依頼・取付け(実態把握、巡回等)
・地域の自治会や自主防災組織等が車中泊避難者の状況を把握できるよう、車中泊避難場所において地域・地区ごとに駐車場所の区分けも視野・検討
・車中泊避難場所における班体制の構成(誰が・何を行うか役割分担の決定)
・指定避難所における避難者と同様な、車中泊避難者の名簿作成・整理(支援物資の把握・提供等に活用)
・健康被害防止のためのチラシ作成・配布、相談窓口の設置(案内ボードへの掲示等)
・テント設営や火気取扱いに係るルール・注意事項喚起について想定、作成
・車中泊避難場所を新たに設けた場合、職員の配置・確保を整理
・京都府をはじめとした他自治体からの応援・役割分担の決定
・行政による運営は開設当初とし、中長期的には、避難者、ボランティア、NPO法人、民間活用による運営へと移行できるよう平時からの関係づくり
<地域防災計画、市町村避難所運営マニュアルへの反映(例)>
○各主体の責務
・住民の役割(行政、消防、地域の自治会・自主防災組織等への現況連絡、行政への把握情報の提供 等)
・市町村の役割(車中泊避難体制の構築、車中泊避難に係る情報提供・環境整備、支援物資の備蓄・提供、保健医療サービスの提供 等)
・府の役割(市町村への支援、国・他府県等への支援要請 等)
○市町村業務の内容
・指定避難所における駐車可能台数の把握、車中泊避難場所のリストアップ
・車中泊避難場所を新たに設けた場合の広報、情報提供
・車中泊避難者の状況把握
・食料ほか支援物資の提供、仮設トイレほか避難所環境の整備
・健康管理、健康指導(チラシの配布、相談窓口の設置・案内、保健師等の定期巡回、足ふみ運動やマッサージ等の運動指導、弾性ストッキング等の備蓄・配布)
・エンジン騒音によるトラブル回避、排ガスの車内充満への危険性回避のための注意喚起
・指定避難所(屋内避難所)への移動働きかけ・誘導
3-4 エコノミークラス症候群防止をはじめとした環境整備及び健康対策
・まずは、被災者が十分な水分補給等ができるよう、必要な飲料水やトイレを確保する。
・災害関連死を防止するため、健康管理、健康指導を実施する。
(例)健康管理を促すチラシの配布による周知、健康相談窓口の設置・案内、保健師等の定期巡回、足ふみ運動やマッサージ等の運動指導、弾性ストッキング等の備蓄・配布等
3-5 車中泊避難から、自宅への速やかな帰宅及び指定避難所への移行
・まずは、個人宅をはじめとした被災建築物の応急危険度判定や、電気・水道・ガス等のライフライン復旧を速やかに進め、被災者が自宅に帰宅できるよう環境を整える。その上で、速やかな帰宅が困難な場合は、指定避難所への円滑な移行を進める。
・車中泊避難は、地震への恐怖のため屋内に入りたがらないことやプライバシーの確保、自宅の防犯等、さまざまな理由から選択されており、車中泊避難から指定避難所への円滑な移行を進めるに当たって、個々の事情を把握する。
・指定避難所への移行を促進するためには、開設されている指定避難所(福祉避難所を含む。)の施設情報・救援情報や、車中泊避難における健康への影響等について、車中泊避難者に対し、逐一きめ細やかに情報発信・周知を行い、車中泊避難者の理解を深め、指定避難所に誘導することが必要である。
・一方で、発災時に地域住民が車中泊避難を選ばずに、安心して指定避難所に避難できるよう、平時からの取組を進める。
(例)地域住民に対する指定避難所についての周知、情報発信
指定避難所の耐震化、より安全な指定避難所の確保
指定避難所の生活環境の改善(男女別洋式トイレの設置、夜間の照明や音への配慮、暑さ寒さ対策、電源確保など)
地域の自主防災組織や消防団等と連携し、課題となる事項への具体的な対応の検討
【想定される課題】指定避難所におけるプライバシーの確保のあり方、要配慮者対応、ペット同伴避難の受入れ整備など
【課題への対応例】着替えや授乳等に活用できる個室の確保、周囲からの視線を遮る高さの間仕切りの設置、指定避難所内の「福祉避難コーナー」の設置、ペット受入ルールや受入スペースの作成など