日本原子力機構大洗研究開発センターでの聞き取り調査
 6月14日、井手よしひろ県議は所属する防災環境商工委員会で、原子力機構大洗研究開発センターの作業員被ばく事故について質疑しました。(写真は6月14日行った茨城県議会公明党の原子力機構からの説明聴取の模様)

◆事故対応の基本は情報提供
 第1点目に、所管する委員会委員(県議会議員)に今回の事故の報告がなかったことを、強く生活環境部長に抗議しました。事故が発生した6月6日は、県議会6月議会の開会日であり、ほぼ全員の議員が議会に出席していました。事の重大性にかんがみ、事故発生の一報は所管委員に知らされるべきであり、それが、15日の委員会のこの日までなかったことは誠に遺憾です。

 2点目に、事故発生後の経過(タイムテーブル)をもとに、事故報告体制について確認しました。原子力機構が事故の第一報を関係自治体、関係機関に同報FAXしたのは12:27と報告されています。一方、県が連絡を受けたのは12:35としており、この8分間の差はなぜ発生しているのか質しました。県側は、FAXでの一報を受け、その着信確認を原子力機構側に行った時間が、8分後の12:35であったと説明しました。
◆破裂事故の初動対応への疑問
 3点目は、原子力機構の初動対応について2点具体例を挙げて、県の見解を質問しました。1つは、当初2万2000ベクレルと報告された作業員の被ばく量の問題です。事故直後のマスコミ報道では、「内部被ばく 国内最悪」(朝日新聞)、「健康被害の恐れ」(読売新聞)、「長期間 細胞に傷 がんリスク上昇」(東京新聞)など、県民の不安を煽る文言が飛び交いました。しかし、9日には「肺からはプルトニウム不検出」と原子力機構が発表し、12日には「計測を3、4回繰り返したがいずれも不検出」と作業員が検査入院していた放射線医学総合研究所(放医研)が公表しました。
 こうした経緯を踏まえ、井手県議は「そもそも原子力機構の測定に間違いがあったのか、なかったのか」、その認識を県側に質しました。原子力安全対策課は「測定の結果には誤りはなかった。ただ、その過程は問題がなかったか検証したい」と回答しました。今回作業員の内部被ばくを測定した「肺モニター」は、呼吸によって肺の中に入ったプルトニウムなどの放射性物質を測定する機器です。測定の正確性を確保するために、鉄製の部屋の中で外部の放射線の影響で出ないよう環境で測定されます。反面、体の表面、毛穴などの中に付着した放射性物質の値も拾ってしまう機器です。したがって、肺モニターで計測する前には、身体の除染を徹底することが何よりも重要です。今回の事故では、燃料研究棟108号室の出入り口の前にビニールで隔離した仮設の部屋(グリーンハウス)を架設して、その中で除染に当たりました。14:44〜16:07の間、83分間かけて入念な除染作業が行われたと報告されています。しかし、仮設のグリーンハウスの中で、どの程度の除染ができたのか疑問が残ります。その後、作業員は核燃料サイクル施設に19:41に到着。15:59には肺モニターによる検査が始まりました。このタイムテーブルを見る限り、核燃料サイクル施設では除染作業が行われていなかったのではないかと思慮されます。作業員の健康を守るためにも、設備が整った施設で確実な除染を行うべきではなかったのか。その上で、測定すれば、こうした課題な値は計測されなかったのではないかと指摘しました。
 もう一点、事故が発生した燃料研究棟108号室内では、5人の作業員は事故後現場に止まり、少しでも事故が発生した場所から距離をおいた場所に、移動すべきではなかったかと疑問を呈しました。
 県側はこうした点も踏まえて、原子力機構からの報告をしっかりと検証していきたいと答えました。

◆想定外は許されない
 4点目は、「想定外」発言の問題です。原子力機構は6月13日、2004年に原子力機構内の別の施設で、ビニール袋の膨張を確認していたことを明らかにしました。破裂の危険性を把握していながら、作業員への注意喚起などを怠っていたことになります。原子力機構によると、核燃料サイクル工学研究所のプルトニウム第1開発室で2004年4月、放射性物質入りの金属容器を二重に密封したビニール袋が膨らんでいるのを確認しました。内部の有機物が放射線で分解されてガスがたまった可能性が高く、破裂の恐れがあるため別の箱に入れ直しました。原子力機構は原子力規制庁から放射性物質の適正管理を求められたことを受け、今年1月にこの経緯を組織内に通知していました。しかし、具体的な作業手順への反映や注意喚起などは行っていませんでした。
 今回の事故も、容器を二重のビニール袋に入れて26年間、開封せずに保管し、破裂につながったとみられています。事故後の記者会見で原子力機構は「破裂は想定外」と繰り返し説明しています。(6月14日に茨城県議会公明党議員会が行った現地調査の際、井手県議と大洗研究開発センター所長との質疑の内容を動画でアップしましたのでご参照ください)
 井手県議は、今回の放射性物質容器の破裂事故は、「想定外」の問題ではなく「十分に想定できた」問題であり、「想定できなかった」とすれば機構自体の能力や意識の低さにあると厳しく指摘しました。


原子力機構大洗研究開発センター被ばく事故:容器破裂は“想定外”