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ITで市役所を変える
 神奈川県横須賀市の電子市役所へのアプローチ<その2>

横須賀市情報政策課長廣川聡美さんのインタービュー詳報

 横須賀市は行政手続き、行政サービスの電子化で日本の自治体の先頭を走っています。参事兼情報政策課長の廣川聡美さんに横須賀市の取り組みについて、井手県議らが伺いました。(2001年9月20日、横須賀市役所にて)

イントラネットの活用<1997年8月より稼働>

010920yoko_hirokawa2 情報政策課の前身の情報政策室ができたのが1996年4月で、この年の年頭記者会見で沢田秀男市長が市役所の電子化を推進すると宣言をしました。情報化とか電子化を前面に出した自治体は他になかったと思います。その時に、情報フロンティアプランを作りました。最初は市役所内の情報化のために作った組織です。まず職員が使うイントラネットを作りました。1997年8月です。

 庁内の情報伝達のための紙の使用を止めるのが目的でした。紙を使わないのはもったいないからではなくて、伝達に紙を使うと順番に回りますから、ロスがあるし、役職の上から回るのを止めて組織をフラットにしたいという考えがあったからです。

したがって様々な通達文や回覧は、一切紙では回さないことにしました。役所の上の者ほど、こういった改革には抵抗があるものです。部長や局長の秘書の皆さんにも、徹底しました。「絶対に上司の掲示板を開いて、印刷して渡すなどということはしないで下さい」と。何事も徹底することが大事です。ある若い女性秘書が、上司が掲示板を開いておくことを命じたのに対し、はっきりとノーといいました。「ご自分でされないと新しいシステムの目的が達せられません」と、言い切ったそうです。この話は一日で庁内に知れ渡りました。上の者から模範を示そう、そういう雰囲気に庁内が変わりました。

 庁内のイントラネットには、情報の伝達やメールの利用のほか、さまざまな機能があります。

 公用車の予約システムを作ったところ、車の効率的利用ができるようになって、公用車が20台減りました。契約旅館のあっせんや旅費計算システム、各種届け出用紙の書式などもあります。旅費計算システムは、市販の「駅すぱあと」のイントラネット版です。年に何度か変わる旅費や時刻表が非常に簡単に集計でき、間違いもありません。

ペーパレスを目指して財務会計システムを導入<1998年4月より稼働>

 ペーパーレスを目指して財務会計システムを作りました。パソコンで起票してパソコンで決裁します。ハンコの代わりにパソコンを使うわけです。送られてきた請求書はスキャナで読み込みます。このスキャニング画像の解像度や画像の形式の決定がなかなか難しかったです。私たちは、出来るだけ小さいデータにしたいと考えました。グレースケールや白黒階調でも良いのではと考えました。しかし、経理担当者は、ハンコは赤く写らないといけないと言って、カラーのデータを要求してきます。そこの調整が案外難しいのです。結局JPEGのフルカラーで、解像度は75dpi、圧縮率は75%、総データ量A4一枚当たり50KB以下と決めました。

 決裁書類は、どこで止まっているかが把握できます野で、決裁が早くなりました。出先に持ち歩かなくてよくなりましたからコストが軽減できました。効果を測定したところ、年間で3600万円の節減効果がありました。これまで紙に手書きしていたものがパソコン上でできるようになったことで、時間の節約にもなりました。

公文書管理システム<1999年4月より稼働>

010920yokosuka_2 1999年4月に公文書管理データベースシステムを作りました。財務会計以外の一般の稟議書もパソコンで作りパソコンで決裁します。使用するソフトはワード、エクセル、パワーポイント、スキャナーで読み込んだイメージの4種類に限定しています。作成した文書は、すべてデータベースサーバーに蓄えられます。個人や部門のパソコンには原本は残りません。決裁が完了すると文書はすべて保管され、その時点で、文書にロックがかかり以後絶対に改ざんが出来ないようになります。

 また、公文書管理システムは、情報公開制度ともリンクしています。データベースサーバーに登録された文書の目録は、インターネットで誰でも閲覧できます。開示請求を受ければ、個人情報を除いて原則的に公開されます。

 庁内のイントラネットからは、決裁が完了したほとんどすべての文書が目録、本文とも閲覧できます。こうしたシステムによって、いわゆる縦割り行政の弊害を破りたいと考えています。

 この公文書管理システムの導入に伴う経費節減効果は年間1億円です。紙の使用を従来の半分に節減しました。年間300万枚使っていたものが142万枚になりました。文書保管庫のスペースも小さくてすみます。

電子入札制度で公共事業費を20億円節減<2001年9月より本格稼働>

 横須賀市においては、1999年4月より、電子入札制度を導入しました。当初は、インターネット上で入札の情報を公開し、郵送によって入札し、その結果をインターネット上で公開するというものでした。

 一般競争入札制度と相まって、この電子入札制度の導入で20億円の経費が削減できました。市民にとって入札という密室での行為がオープンになり、入札の信頼性が高まりました。「談合」などの不正行為も排除されました。業者にとっては、入札への参加機会が増加し(入札参加者が2.5倍に増加)、市内業者の受注率が向上しました(68.4%から80.1%に向上)。更に、行政にとっては入札価格が低減し(予定価格に対する落札価格の割合である落札率が95.7%から85.7%に低下)、貴重な税金を効率的に運用できるようになりました。

 この電子入札制度を2001年9月25日よりは、いよいよ完全にインターネットによる電子入札制度に移行します。

工事が発生すると、毎週月曜日の夕方にサイトで掲示します。そこには工事名や場所入札の条件などが記載されています。

条件をクリアしていれば誰でも入札に参加できるのは今までと同じです。インターネット上の専用のページから直接入札金額を書き込みます。入札に当たっては、事前に登録している業者にアクセスのためのカギを渡します。そのカギを使ってサイトにアクセスして入札して電子署名を付けてなおかつ暗号化して送ります。

市役所内の公証担当(入札を担当する部署とは別の部署)が電子署名を確認して、公証局は札のハッシュ値(入札文書を単純化・暗号化したアルファベットと数字の列)だけを公表します。

入札の当日、決められた時間に、入札に参加した代表者3社に立ち会ってもらい、札を改札します。札を開いた時にそのハッシュ値と事前の公表ハッシュ値が同じなら入札は公正に行なわれたことになります。これで落札者が決まります。

入札が終わると、翌日には結果をすべて公表します。落札した業者とその金額だけではなく、どの業者がいくらで入札したかをすべて公表します。

 このシステムでは、公証局(公証用サーバー)を庁内に設置しているところに特徴があります。将来的には、公的な第三者機関に依頼することを計画しています。

書式屋本舗から171種類の届け出書類がダウンロード可能

 現在171種類の届け出書類を電子化し、ホームページ(書式屋本舗と名称です)で文書を提供しています。それをダウンロードして、必要事項を記入しプリントアウトして役所に提出してもらっています。それを近く500種類まで増やす計画です。

 まだインターネットによる届け出までは実現していません。できるものから始めようと思っています。施設利用や町内会の補助金などは法改正しなくてもできますが、法律の改正が必要なものもあります。法改正ができれば児童手当の請求などもネットで行なえるようにしたいと思っています。

まちづくり総合カードの実験

010920yoko_card まちづくり総合カードと言う名前のICカードシステムの実験を行っています。1枚のカードで何でもできるようにしようという考え方です。行政手続きもできる、電車にも乗れる、買い物の支払いもできて病院の診察券にもなるという多目的のカードを目指しています。役所だけでなく、民間のサービスと共用で使えるようにしたいと思っています。1999年7月から実験を行なっています。接触型カードで2000人のモニターにICカードを配布しました。

 ICカードのコストは高く、モデル事業をやった時でも1枚5000円かかりました。今後、実用化を考えた場合、1枚1000円としても43万人の市民全員に配布するとなると、4億3000万円かかります。これをだれが負担するのかという問題があります。市役所だけでなく、民間も含めてサービス提供者がシェアするのがいいのではないかと思います。

 経済産業省のIT装備都市研究事業の指定を受けていて、行政サービスをICカードで総合的に提供するモデル事業を行ないます。行政分野では施設の予約や応募の受けつけなどをカードで行ないます。民間分野では病院の診察券、商店街のポイントサービス、交通機関の切符購入、デビットカード機能などいろいろな使い方ができるカードにする計画です。2002年1月ごろスタートする予定です。

 このまちづくり総合カードは、納税や申請手続きなどのシーンで一番大切な個人認証(パソコンでアクセスしている人が本人かどうかの確認)のツールとしては不可欠なものです。是非、実験を成功させていきたいと思います。

ユニークな職員のIT教育

 電子市役所構築には、職員全体の情報化基礎能力を高める必要があります。と同時に、情報化推進のリーダとなる職員を発掘育成して、情報化の主幹部署だけではなく、庁内各組織に配置することが大事です。

 横須賀市の情報化研修体系は3段階に分かれています。初級は、グループウェアを使いこなすようになること。中級は、ホームページの作成、ワード・エクセル・アクセス・パワーポイントの研修。上級は、電脳職員を育成することが目標です。

 電脳職員とは、情報化推進のリーダーです。今までに、「電脳仕事人養成塾」「電脳管理職講座」「電脳マスター塾」などを開催しています。電脳仕事人養成塾では、政策企画書の作成や発表を課題としました。また1人1ホームページを作成してもらいました。30人規模で、年間30日、延べ210時間の徹底した研修を行いました。電脳マスターは、データベースアプリの設計からプログラミングまで行います。アクセスとビジュアルベーシックを学びます。庁内にこうした電脳の達人がいれば、仕事の改善も大いに進みますし、外部にソフトを発注する際も、そのソフトの仕様や予算がどの程度になるか、良くわかるようになります。

 こうした人材育成の結果、市役所の充実したホームページは、一部を除いて、職員の手作りで作り上げることが出来ています。
横須賀市のHP
入札の広場
市へのパブリックコメント
書式屋本舗(申込書や申請書のダウンロード)
押印改善日本一
よこすか情報フロンティアプラン
市議会のHP
サービス工房・仕事屋





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