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アセアン行政視察を終えての提言

今回のアセアン4カ国の視察を終えて、県政に対する私的な提案をまとめてみた。
まだまだ、一つ一つの提案に精査を加えてはいないし、意見のすりあわせも行っていない。
今後の議論のたたき台として皆さまのご批判をいただきたい。


県内中小企業の進出をサポートする県東南アジア事務所を検討

 人件費の安さ、労働力の量と質、そして広大な市場性、東南アジアは、県内の中小企業においても魅力的な市場であろう。特に、製造業においては、先行した大手日系企業がサポート企業の進出を心から欲している。そうした、企業に対して、東南アジアでの企業経営の水先案内を行う機関の検討が必要である。

 今回の視察で東南アジア諸国の国情は多様であり、複雑である。より中立で信頼のおける情報を提供する機関が、身近にある必要がある。

 県は昨年11月、中国上海に事務所を開設した。

 同じような性格を持つ東南アジア事務所の設置を検討すべきである。そして、その事務所は、今後の発展が大いに期待できるベトナム、タイ、ラオス、ミャンマー等も視野においた21世に対応できる性格を持たせるべきであろう。

環境問題を県民レベルで支援すべき

 東南アジア諸国の最大の課題は、環境問題であると実感する。

 インドネシアの首都・クアラルンプールは魅力的な活気溢れた街であった。

 この街で絶対してはいけないと教えられたのは、水道の水を飲むことであった。

 日本大使館の職員一人は「私は水を飲まなくても、顔を洗ったために、眼病を煩った。家内は、A型肝炎で大変な思いをした」と、語ってくれた。

 視察中、大半の視察団員は、生水を一切飲んでいない(ホテルの水道水も飲んでいない)。ミネラルウォーター(ビールより値段が高いのには驚かされた)で水分を補給するだけではなく、歯を磨くにも、顔を洗うのにも使っていた。水割りやジュースに使う氷さえ危険との指摘もあった。

 こうした水質が悪い原因は、水道施設の未整備が根本の原因ではあるが、都市の河川が生活排水で汚染されていることも見逃せない。

 クアラルンプールのホテルの前を流れている川には、ゴミが流れ、汚物が浮き、茶色に濁っていた。しかし、その水が貴重な水道の源水だという。

 フィリピンのスラムの問題も深刻である。マニラの空港近くのモンキーマウンテンは有名であった。エイペック国際会議のため、撤去されて今はその面影はないが、マニラ市内の至る所にそれににたスラムが林立する。

 都市環境の改善の問題に、私たちが協力できることはないのだろうか。

 樹木伐採による森林破壊の問題、産業廃棄物の問題、自動車の排気物の問題、東南アジアは、その経済発展と同時進行で環境破壊・公害が深刻化している。

 日本は、公害先進国として、その対策に最大限の協力をすべきである。

 国レベルの協力としては、ODAなどの抜本的見直し作業が進行しているという。

 茨城県としても、民間レベルでの協力体制を敷く必要があるのではないだろうか。県においては、一昨年霞ヶ浦を中心に世界湖沼会議を開催した。湖沼・河川の汚濁防止ノウハウは、一長のものがる。

 地球環境を守るためにグローバルな視点から、県民の広範な支援ネットワークを作ることが出来ないであろうか?

県民の海外での生活をサポート

 今後、茨城県内企業の国際進出は一層進展していくであろう。今回現地工場を視察した企業の社長は、私の住む団地の100メートルも離れていないところに住まいを構える方であった。

 4年から5年間、日本を離れ、夫妻で現地で暮らすという。その間、茨城の家は空き家。時々息子さん夫婦が掃除に通ってきてくれているという。

 その社長にふるさとが恋しくなりませんか?と尋ねてみた。

 「新聞や衛星放送などで日本の情報はリアルタイムで入手できます。ただ、地元や茨城県のローカルなニュースは全く入りません。出張してくる会社の人が持ってくる新聞の地方版が一番読みたいですね」との答えが返ってきた。

 現在県には、何人の県民が長期の出張や出向で海外で暮らしているかの数値も掌握されていない。

 こうした、海外で働く県民の皆さんをサポートする体制整備が不可欠になると思う。

 県の情報や、市町村の情報を伝える仕組みづくりを検討してはどうだろうか。

 県のインターネットは、その内容をもっと充実させるべきだ。市町村のレベルのホームページ開設も働きかけるべきだ。

 地元新聞社(茨城新聞や新いばらき新聞)のインターネット情報もほしい。

 こうした、情報入手拠点としても、県東南アジア事務所の必要性がクローズアップされるかもしれない。

海外邦人の参政権問題の解決を急げ

 地元の情報が知りたいとの要望とともに、複数の方から伺った要望が、「海外で選挙の投票が出来ないか」ということであった。

 外務省によると、94年10月時点の在外邦人数は約69万人(永住者・約26万人、3か月以上の長期滞在者・約43万人)。公職選挙法では、選挙人名簿の登録は市町村の住民基本台帳に基づくため、在外邦人に選挙権はない。

 84年には、在外邦人に選挙権を認める公職選挙法改正案が国会に提出されたが、実質審議のないまま2年後に廃案となっている。

 しかしほとんどの主要国で制度化され、在外邦人数も増えていることから、要望が強まっている。

 連立与党は96年10月、与党政治改革協議会で、84年の改正案を基礎に、

在外公館(大使館や領事館)での投票と郵便投票との併用
衆参両議院の比例代表選挙が対象

――との基本方針を決め、自治、外務両省に具体的検討を指示した。

 現在、両省間で進められいる調整の最大のポイントは「在外公館での投票」と「郵便投票」のどちらをメーンに据えるかだ。

 外務省は「郵便投票」を主張する。「投票は、全員が行使出来る方式がいい」との理由からだ。アメリカ、ドイツなどは、すべて郵便投票で行っていることも、導入可能とする根拠のひとつだ。また、同省で海外の180公館(大使館、総領事館)を調査したところ、投票所を設置出来るのは110公館。ニューヨーク、パリなど邦人が多い場所を中心とした残り70公館は設置不可能だった。

 一方、自治省は「郵便投票ではだれが投票したか分からず、選挙の公正さが確保できない」との理由で、公館での投票を主張する。実際、50年制定の公職選挙法には郵便投票が規定されていたが、翌51年の統一地方選で不正が多発したため、52年に廃止されている。

 選挙権は国民主権の柱であり、在外邦人に選挙権が与えられない状況は早急に解消されるべきだ。しかし自治、外務両省間の見解の相違は、簡単に埋まる状況にはないのが現実である。

 さらに、地方自治の問題になると論議のテーブルにも載っていない。地方自治とは、現にその地域にすむ人の問題であるから、在外邦人は地方自治の枠外なのである。その常識も、近い将来再検討を迫られる時が来るのではないか。今回の視察ではそんな予感を感じさせられた。

定住外国人の人権を守る体制整備を

 平成6年の統計によると、茨城県内の外国人登録者数は、26,617人となっている。そのうち、フィリピン国籍の人だけでも、2,881人にのぼる。短期の在留、または不法在留者を含めるとこの数字は、倍増すると言われている。

 今回の視察の感想でも述べたが、東南アジアを一つの範疇で括ることは出来ない。アジアの多様な民族性に対して、地方自治はその権利を守る活動を行わなくてはならない。

 現在、国際交流課では英語による広報誌の発行を行っている。県警でも通訳を採用し、取り調べや、事件に巻き込まれないような配慮をしている。

 しかし、その体制はまだまだ完全とはいえない。英語はまだしも、マレー語やタイ語などについてはほとんど手が着けられていないという。

 定住外国人の人権を守るためにも、言葉の壁を乗り越える体制整備が急務である。
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韓国又は朝鮮

中国

ブラジル

フィリピン

その他

総数

1991年

5,031

2,306

1,741

1,528

2,547

13,153

1992年

5,329

2,838

4,670

2,445

4,736

20,018

1993年

5,420

3,209

5,462

2,277

5,359

21,727

1994年

5,533

3,351

6,354

2,389

6,348

23,975

1995年

5,618

3,816

6,651

2,881

7,651

26,617




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