平成9年5月25日(日)、ALS患者・家族の集まりである日本ALS協会茨城支部が設立されました。設立総会は、水戸市の県青少年会館で、患者・患者家族・遺族・国会議員・県議会議員・県行政担当・医師・介護や福祉に携わる方、そして支援ボランティアなど150名近くが集まり、盛大に開催されました。
ALSとは、難病の一つで、足や腕の筋肉が萎縮して歩行や運動が困難になり、やがて呼吸も自分では出来なくなり、死に至る原因不明の病気である。
茨城県には、50名前後の患者がいるとされ、抜本的な治療法がないため、その患者や家族は大変なご苦労を強いられています。
昨年(平成8年11月2日)、総和町の海野佶さんの呼びかけで初めての「ALS患者・家族の集い」が開催され、席上、より連携を図り、療養環境の整備を訴えるために、この日の正式支部の決済となった。
井手県議も、公明県本部長の鈴木孝治県議とともに参加。今後、ALSの克服を目指し、同支部の活動に全面的に協力していくことを誓い合った。
以下は、筑波大学神経内科庄司進一博士の記念講演の抜粋を掲載させていただきます。
筋萎縮性側索硬化症と医療・福祉・保健のネットワーク創り
筑波大学神経内科 庄司 進一
『筋萎縮性側索硬化症とは』
この病気は、人体の紳経系以外の循環器系、呼吸器系、消化器系、腎泌尿器系、代謝・内分泌系、血液系、膠原病・リウマチ・アレルギー系などの臓器系などは正常です。すなわち、心臓、血管、肺臓、食道、胃、腸、肝臓、膵臓、腎臓、ホルモン、血液成分、免疫などは正常です。
神経系も、大脳高次機能、感覚系、自律神経系などの系は正常で、運動系だけが障害されます。すなわち、考える、記憶する、五感を通して感じる、汗をかく、排尿便するなどは正常です。運動を行うことのみが侵されます。
運動は、錐体路系と錐体外路系と小脳系の3つの系統でコントロールされていますが、この病気では錐体路系のみの障害が起こり、錐体外路系や小脳系は正常です。錐体路の働きは、運動を起こすことで、大脳の運動野から脊髄の前角へ上位運動神経細胞が、脊髄前角から筋肉へ下位運動神経細胞があって、その人が動かそうとする意思によって、筋肉を動かします。この場合の筋肉は、手足の筋肉、首や顔や喉の筋肉、呼吸をする筋肉が含まれています。尿や便の排泄に必要な筋肉や眼を動かす筋肉は侵されにくいのです。
『この病気の原因は』
この錐体路系の障害の原因は、運動神経細胞が死んでしまうことで起こります。
なぜ死んでしまうのかが、現在、精力的に研究されています。
家族性筋萎縮性側索硬化症は遺伝性で、スーパーオキサイド・ジスムターゼという酵素の異常が原因です。この酵素は体内でできる毒性物質を解毒する作用があります。この遺伝性の病気の日本人の中には、自然経過が長く足の筋肉の脱力で始まり車椅子使用まで10数年の家系があります。この関連から遺伝性でない大部分のこの病気の原因も体内でできる毒性の物質で起こるのではないかとも考えられています。
『この病気の経過は』
手足の筋肉と呼吸の筋肉の障害の速度に関しては、患者さん毎に、発病の部位毎に異なっています。手足の筋肉も呼吸の筋肉の力もほぼ直線的に減弱する進行期と緩徐な減弱の進行の晩期があります。しかし、手足の筋肉と呼吸の筋肉の力の減弱の速度が平行せずに、一方のみが進行するが、他方が長く保たれる患者さんもおります。
『この病気の根本的治療は』
治療では、毒性のあるグルタメートを抑制する薬としてリルゾールが延命効果が認められ米国で発売されています。これは高価で、効果が顕著でない欠点があります。大量メチルコバラミンの静脈注射、線維芽細胞増殖因子FGF−9、天然型脳由来神経栄養因子(met-freeBDNF)、セレプロリシン(FPF1070)、ナイトリックオキサイド・シンターゼ阻害薬、プロモクリプチン、アクチビンA、インスリン様成長因子、グリア細胞由来神経栄養因子などがヒトでの治験や実験動物や培養で効果があったと報告されています。
『この病気の患者の現状は』
1996年のわが国の本病の現状は、日本ALS協会会員のアンケートで、呼吸器装着患者は42%、その76%が入院しています。呼吸器の装着は家族が71%決定しています。79%が要介護で、主たる介譲者は家族が88%を占め、入院患者も家族の付き添いが62%です。在宅で緊急入院先が決まっていない患者は62%でした。
在宅人工呼吸療法ALS患者の関西・関東のアンケート調査(55人、回答率81%)では、期間は平均35カ月、病名告知は患者が57%と家族が80%、人工呼吸器装着の決定は65%は患者・家族であり、在宅人工呼吸療法を勧めたのは主治医が36%で最も多く、46%に呼吸器の事故があり、介覆は62%が日に19時間以上で、93%は一日中ペットで過ごし、50%は外出していませんでした。
『在宅療養を可能にするのは』
家族が患者のケアを不安なく行え、患者と家族が在宅療養を希望していること。
緊急時の支援システムが確立されていること。すなわち自宅近くの救急病院との連携がとれている。
社会的資源の活用ができること。すなわち患者・家族への経済的・人的支援システムの確立。
などが大切な前提になります。
『支援システムは』
支援システムについては、市町村によってそのサービスが異なります。
ショートステイは多くの市町村で実施しています。
機能訓練は通所訓練と在宅訓練があり、前者には送迎のある所もあります。
日常生活用具給付等事業では、特殊寝台、マットレス、エアーパット、ポータブルトイレ、車椅子、つえ、ファックス、電動車椅子などがあります。
車椅子用リフト車、交通費支援や福祉タクシー、巡回珍査、重度障害者住宅リフォーム助成、手話奉仕員、ガイドヘルパー、住民参加型有償在宅福祉サービス、地域ケアシステム、在宅介護支援センター、ヘルパー派遣、デイサービス(ミニデイを含む)は送迎のある所もあります、ミドルステイ、巡回入浴サービス、訪問指導、ホームケア、ナイトケア、相談事業、家庭介護教室などがあります。
こうした福祉関係のサービスは市町村や県の福祉の窓口へ電話したり、保健所、民生委員、社会福祉協議会、病院、診療所、訪問看獲ステーション、ボランティアなどに尋ねて下さい。
『茨城県支部の役割は』
日本ALS協会茨城県支部の事業の第一は、患者とその家族を中心に、医療・福祉・保健・教育の各種の職種やボランティアを組織して、ALS患者の生活を支援するネットワーク創りです。一人の患者の生活を支える支援のチームを医師、歯科医師、薬剤師、保健婦、看獲婦、PT、OT、社会福祉士、介護福祉士、管理栄養士、診療放射線技師、行政担当者、臨床心理士、家族、ボランティア、その他の医療・福祉・保健・教育の各職種などで創ることです。
これが患者の住む市町村で行われていく必要があります。この地域に根差し、包括的、心理社会的アプローチ、チームメンバーの専門性、人間的接触、近接性、協調性、継続性、責任性を尊重し、患者さんの満足できる支援をしていくことが望まれています。
ALSとは、難病の一つで、足や腕の筋肉が萎縮して歩行や運動が困難になり、やがて呼吸も自分では出来なくなり、死に至る原因不明の病気である。
茨城県には、50名前後の患者がいるとされ、抜本的な治療法がないため、その患者や家族は大変なご苦労を強いられています。
昨年(平成8年11月2日)、総和町の海野佶さんの呼びかけで初めての「ALS患者・家族の集い」が開催され、席上、より連携を図り、療養環境の整備を訴えるために、この日の正式支部の決済となった。
井手県議も、公明県本部長の鈴木孝治県議とともに参加。今後、ALSの克服を目指し、同支部の活動に全面的に協力していくことを誓い合った。
以下は、筑波大学神経内科庄司進一博士の記念講演の抜粋を掲載させていただきます。
筋萎縮性側索硬化症と医療・福祉・保健のネットワーク創り
筑波大学神経内科 庄司 進一
『筋萎縮性側索硬化症とは』
この病気は、人体の紳経系以外の循環器系、呼吸器系、消化器系、腎泌尿器系、代謝・内分泌系、血液系、膠原病・リウマチ・アレルギー系などの臓器系などは正常です。すなわち、心臓、血管、肺臓、食道、胃、腸、肝臓、膵臓、腎臓、ホルモン、血液成分、免疫などは正常です。
神経系も、大脳高次機能、感覚系、自律神経系などの系は正常で、運動系だけが障害されます。すなわち、考える、記憶する、五感を通して感じる、汗をかく、排尿便するなどは正常です。運動を行うことのみが侵されます。
運動は、錐体路系と錐体外路系と小脳系の3つの系統でコントロールされていますが、この病気では錐体路系のみの障害が起こり、錐体外路系や小脳系は正常です。錐体路の働きは、運動を起こすことで、大脳の運動野から脊髄の前角へ上位運動神経細胞が、脊髄前角から筋肉へ下位運動神経細胞があって、その人が動かそうとする意思によって、筋肉を動かします。この場合の筋肉は、手足の筋肉、首や顔や喉の筋肉、呼吸をする筋肉が含まれています。尿や便の排泄に必要な筋肉や眼を動かす筋肉は侵されにくいのです。
『この病気の原因は』
この錐体路系の障害の原因は、運動神経細胞が死んでしまうことで起こります。
なぜ死んでしまうのかが、現在、精力的に研究されています。
家族性筋萎縮性側索硬化症は遺伝性で、スーパーオキサイド・ジスムターゼという酵素の異常が原因です。この酵素は体内でできる毒性物質を解毒する作用があります。この遺伝性の病気の日本人の中には、自然経過が長く足の筋肉の脱力で始まり車椅子使用まで10数年の家系があります。この関連から遺伝性でない大部分のこの病気の原因も体内でできる毒性の物質で起こるのではないかとも考えられています。
『この病気の経過は』
手足の筋肉と呼吸の筋肉の障害の速度に関しては、患者さん毎に、発病の部位毎に異なっています。手足の筋肉も呼吸の筋肉の力もほぼ直線的に減弱する進行期と緩徐な減弱の進行の晩期があります。しかし、手足の筋肉と呼吸の筋肉の力の減弱の速度が平行せずに、一方のみが進行するが、他方が長く保たれる患者さんもおります。
『この病気の根本的治療は』
治療では、毒性のあるグルタメートを抑制する薬としてリルゾールが延命効果が認められ米国で発売されています。これは高価で、効果が顕著でない欠点があります。大量メチルコバラミンの静脈注射、線維芽細胞増殖因子FGF−9、天然型脳由来神経栄養因子(met-freeBDNF)、セレプロリシン(FPF1070)、ナイトリックオキサイド・シンターゼ阻害薬、プロモクリプチン、アクチビンA、インスリン様成長因子、グリア細胞由来神経栄養因子などがヒトでの治験や実験動物や培養で効果があったと報告されています。
『この病気の患者の現状は』
1996年のわが国の本病の現状は、日本ALS協会会員のアンケートで、呼吸器装着患者は42%、その76%が入院しています。呼吸器の装着は家族が71%決定しています。79%が要介護で、主たる介譲者は家族が88%を占め、入院患者も家族の付き添いが62%です。在宅で緊急入院先が決まっていない患者は62%でした。
在宅人工呼吸療法ALS患者の関西・関東のアンケート調査(55人、回答率81%)では、期間は平均35カ月、病名告知は患者が57%と家族が80%、人工呼吸器装着の決定は65%は患者・家族であり、在宅人工呼吸療法を勧めたのは主治医が36%で最も多く、46%に呼吸器の事故があり、介覆は62%が日に19時間以上で、93%は一日中ペットで過ごし、50%は外出していませんでした。
『在宅療養を可能にするのは』
家族が患者のケアを不安なく行え、患者と家族が在宅療養を希望していること。
緊急時の支援システムが確立されていること。すなわち自宅近くの救急病院との連携がとれている。
社会的資源の活用ができること。すなわち患者・家族への経済的・人的支援システムの確立。
などが大切な前提になります。
『支援システムは』
支援システムについては、市町村によってそのサービスが異なります。
ショートステイは多くの市町村で実施しています。
機能訓練は通所訓練と在宅訓練があり、前者には送迎のある所もあります。
日常生活用具給付等事業では、特殊寝台、マットレス、エアーパット、ポータブルトイレ、車椅子、つえ、ファックス、電動車椅子などがあります。
車椅子用リフト車、交通費支援や福祉タクシー、巡回珍査、重度障害者住宅リフォーム助成、手話奉仕員、ガイドヘルパー、住民参加型有償在宅福祉サービス、地域ケアシステム、在宅介護支援センター、ヘルパー派遣、デイサービス(ミニデイを含む)は送迎のある所もあります、ミドルステイ、巡回入浴サービス、訪問指導、ホームケア、ナイトケア、相談事業、家庭介護教室などがあります。
こうした福祉関係のサービスは市町村や県の福祉の窓口へ電話したり、保健所、民生委員、社会福祉協議会、病院、診療所、訪問看獲ステーション、ボランティアなどに尋ねて下さい。
『茨城県支部の役割は』
日本ALS協会茨城県支部の事業の第一は、患者とその家族を中心に、医療・福祉・保健・教育の各種の職種やボランティアを組織して、ALS患者の生活を支援するネットワーク創りです。一人の患者の生活を支える支援のチームを医師、歯科医師、薬剤師、保健婦、看獲婦、PT、OT、社会福祉士、介護福祉士、管理栄養士、診療放射線技師、行政担当者、臨床心理士、家族、ボランティア、その他の医療・福祉・保健・教育の各職種などで創ることです。
これが患者の住む市町村で行われていく必要があります。この地域に根差し、包括的、心理社会的アプローチ、チームメンバーの専門性、人間的接触、近接性、協調性、継続性、責任性を尊重し、患者さんの満足できる支援をしていくことが望まれています。
このページは、茨城県議会井手よしひろの公式ホームページのアーカイブ(記録保管庫)の一部です。すでに最終更新から10年以上経過しており、現在の社会状況などと内容が一致しない場合があるかもしれません。その点をご了解下さい。 |