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Nシステムの効力を検証する


Nシステムは犯罪捜査に大きな効力を発揮していると思われます。しかし、その実態は、秘密のベールに包まれているのも事実です。警察当局が捜査の内容を公表することは、他の犯罪の捜査にとってマイナスになることも充分考えられるからです。ここでは、新聞の記事を中心にこれまでの犯罪捜査で、Nシステムまたは同様な自動車ナンバー記録装置が効力を発揮した実例を検証してみたいと思います。

一連のオウム関連事件    
信用金庫OLの誘拐殺人事件 平成5年 中央高速
富士フイルム専務殺人事件 平成5年 東名高速
愛犬家殺人事件 平成5年 関越道
つくば市の医師による妻子殺人事件 平成6年 茨城〜横浜
美容師バラバラ殺人事件 平成6年 福岡県
小田嶋被告の狂言誘拐・殺人事件 平成8年 横浜〜山梨

参考資料(新聞各社の記事より転載)


読売新聞 95.05.20日付け朝刊より転載
走行車記録装置が広域犯罪捜査に一役 オウム事件でフル活用

 一斉捜索以来、全国を目まぐるしく移動したオウム真理教幹部の動きを追うのに役立ったのは全国の道路網に設置された走行車の記録装置だった。広域化する犯罪捜査に今後も貴重な捜査手段となりそうだ。       (解説部 杉下 恒夫)
 現代は普通のマイカーでも道路を走れば二種類の監視装置に見張られている可能性がある。その一つは日本道路公団などの無人料金所入り口に車種判別踏板などと共に設置されている撮像機。車の大きさなどを自動的に判断して通行券を出す発券機の数メートル手前に設置されているもので、全走行車の下二けたのナンバーを記録している。
 記録の目的はドライバー同士が料金所入り口で受け取った通行券を途中のサービスエリアなどで交換して料金をごまかすことを防ぐため。狙いはあくまで不正料金防止で犯罪捜査ではないが、最近高速道路の入り口料金所の自動化が急速に進んでおり、記録される車は膨大な数に上る。利用の仕方によっては犯罪捜査に汎用(はんよう)することも可能だという。
 さらに警視庁などが一般道路などに設置しているのが「ナンバー(N)システム(自動車ナンバー自動読み取り装置)」などと呼ばれるカメラ装置。道路に置かれるカメラ類の設置目的は広域犯罪の捜査よりも道路の渋滞状況や違法駐車を中央のコントロール室ですばやく把握することに重点が置かれているが、犯罪捜査にも大きな威力を発揮する。
 「Nシステム」は七年ほど前から東京都内の道路などに置かれ始めた。仕組みは道路の上に突き出した鉄骨アームにカメラが据え付けられ、二十四時間、下の道路を走る車を監視する。画像は同時に警察本部の中央制御室に送られ、コンピューターと連動して下を走る車の文字とナンバーを瞬時に読み取る。
 事前に目的の車のナンバーをコンピューターにインプットしておけば当該車両がポイントを通過した瞬間に居場所をキャッチすることができる。カメラは高性能で夜間でも車の判別は可能だという。ナンバーをインプットしておかない場合でも後から残された記録を調べれば、どの車がどこを通過したか、追跡することは簡単だ。
 これまでにも茨城県つくば市の医師による妻子殺人事件で犯人が遺体を放棄するために横浜に向かったところが、このシステムに捕らえられ犯人逮捕の決め手の一つとなった。このほか、山梨県で起きた信用金庫OL誘拐殺人事件、富士フイルム専務殺人事件でも「Nシステム」が活躍したと言われる。
 今回の一連のオウム真理教事件の捜査でも、数十台の車に乗るオウム幹部の動きを追うことが事件解決の足掛かりにもなるため、「Nシステム」がフルに活用された。
全国に拠点を持つオウム真理教が相手の捜査だっただけに、このシステムがなかったら捜査に支障をきたしたことは間違いない。
 「Nシステム」が全国道路網にどれぐらい設置されているのか警察庁は公表していないが、「Nシステム」に詳しいドライバーたちは、都内だけで二十か所以上あり、全国では百か所以上あるだろうと推測する。
 道路を走る車がこのように正確に見張られていることは確かに広域犯罪の捜査などには重要な武器となるが、自分の行動がわけもなくだれかに監視されているとなるとプライバシー保護の面では少々疑問が残る。
 これに対し警察庁も道路公団も「業務に必要のない記録は保存していない」とドライバーのプライバシー保護には配慮している。
 駅でも空港でも銀行やコンビニエンスストアの店内でも常に何かのカメラに監視されているのが現代人の宿命だ。映像の利用の仕方によって監視カメラはオウム捜査のように役に立つが、悪用すると人権侵害にもつながる。運用者は良い面だけをうまく活用する規約を作成して、それを順守する努力をしなければならない。

朝日新聞 95.10.17日付朝刊より転載
路上の目(「みる・きく・はなす」はいま 第14部:1)

 <見られている>
 見慣れぬ四角い箱が、道路をまたぐ橋上に置かれている。中にカメラがあり、夜には、車が通るたびに、 淡く赤い光がまたたく。
 速度違反取り締まりなど交通行政をめぐる訴訟を支援している「道路交通民主化の会」で、この箱が話題 になったのは六、七年前からだ。
 代表委員の高山俊吉弁護士は「警察に聞いても、『秘密』。新しい取り締まり機かと思ったが、分からな いまま、会員から『発見した』という報告が次々と届いた」と振り返る。
 やがて、運営委員の浜島望さん(六二)が交通制御の技術者らに聞き回って、「自動車ナンバー自動読み 取りシステム」(Nシステム)とわかった。事件発生時の検問を補うとして、警察庁が導入したもので、赤 外線ストロボを備えたテレビカメラで、下を通過する車を撮影、コンピューターでナンバープレートを読み 取って、手配車両のナンバーと照合する仕組みだ。
 浜島さんは「コンピューターを使うから、データはいくらでも蓄積できるはずだ」と指摘する。
 収集したデータをどう処理しているのか。警察庁は「所管は刑事局で、一九八六年度に導入した」という だけで、「システムの概要や設置個所、運用状況は、捜査上の秘密で、一切ノーコメント」。

 それでも、事件のたびに、運用の実態が漏れる。
 昨春の福岡市の美容師殺人事件。遺体の一部を福岡から熊本まで捨てに行った容疑者の車のナンバーをカ メラがとらえており、容疑の裏付けに使われた。警察が容疑者の車に目をつけた日から、撮影日までさかの ぼると、少なくとも数日間はデータが保存されていたことになる。
 実は、このカメラはNシステムではなく、「旅行時間提供装置」のものだった。車を撮影して移動にかか った時間をはじき出し、混雑情報を運転者に知らせるのだが、撮影の仕組みはNシステムと同じだ。
 警察庁交通規制課は「読み取るのはナンバーの四ケタの数字で、原則として保存しない。ただ、各県警が 独自に設置しているので、運用状況はつかんでいない」と説明する。
 昨秋には、富士写真フイルム専務殺人事件で、容疑者が事件当日に東名高速道路などを走っていたことが 、Nシステムの記録分析から分かった、と報じられた。

 二つの事件をきっかけに、「民主化の会」はNシステムの設置個所を探し、東京で約六十カ所、全国で約 百二十カ所を確認した。
 高山弁護士は「当局は犯罪発生の前から、両システムで得た個々の車のデータを蓄積している。データを 分析すれば、だれがいつどこにいたかがわかる。捜査には有効でも、市民にとってはプライバシーの侵害」 と話す。
 関係者によれば、Nシステムは昨年度末で全国に約百五十カ所。今年度中に一気に約二百カ所増える見込 みだ。旅行時間提供装置は九三年度末で、全国七十五路線に設置されている。
 警察庁はさらに新しい交通管理方式を開発中だ。
 車に光通信装置をのせ、走行中の車から固有の認識番号を発信させる。路上に設置した感知器で受信、す いている道路に誘導する構想だ。感知器は今年度中に関東を中心に約一万基、都心部ではほぼ一キロおきに 置かれる。
 「このままでは、車の動きはすべて警察に握られる」と、浜島さんは懸念する。

朝日新聞 94.10.18付けより転載
組員逮捕、残る「なぜ」(企業襲撃 富士写真フイルム事件:上)

 未解決の企業襲撃事件が相次ぐ中で、やっと一つの事件が解決に向けて動き始めた。
十七日、富士写真フイルム専務、鈴木順太郎さん(当時六一)刺殺事件で、関西の暴力団員が逮捕された。しかし、背後関係や動機はわからない。指示したのはだれなのか。なぜ、鈴木さんをねらったのか。発生から二百三十二日目、捜査はこれから正念場だ。
 容疑者逮捕のきっかけは、「大阪ナンバーの不審な車が止まっていた」という多数の目撃証言だった。その車は二月二十八日の犯行数時間前の午後五時過ぎから、鈴木さん宅の周囲をゆっくりと走り回ったり、停車したりしていた。車から降りた若い男が、電柱の陰から鈴木さん宅をのぞき込むのも目撃されている。
 この車は事件当日などに東名高速道路を走っていたことが、速度違反車両を撮影する「Nシステム」の記録の分析でわかった。
 車の尾灯や車の形から、捜査本部は七五年―八五年式のトヨタ・クラウンとみて捜査。山口組系暴力団員が所有し、当日は、東京に来ていた沖野進一容疑者(二八)と、岡本大介容疑者(二四)の二人が乗っていたことを突き止めた。さらに、沖野容疑者は暴力団関係者と一緒に下見に行っていたこともわかった。

産経新聞 96.11.26付けより転載
小田嶋容疑者 窃盗容疑再逮捕 自分の車を偽装 ナンバープレート盗み取付

 警視庁捜査一課と渋谷署は二十五日、窃盗の疑いで、狂言誘拐を自作自演した自称デザイナー、小田嶋透容疑者(三九)=有印私文書偽造容疑などで逮捕、処分保留=を再逮捕した。
 調べによると、小田嶋容疑者は今年一月、横浜市都筑区の駐車場で、駐車中の乗用車の前部ナンバープレートを盗んだ疑い。
 小田嶋容疑者は直後の二月五日、多額詐欺事件で指名手配中の東和証券元課長代理、西村秀容疑者(三四)を四輪駆動車に乗せ、山梨県小淵沢町の貸別荘に送ったと供述。
 捜査一課は自動車ナンバー自動読取装置(Nシステム)の分析などから、四輪駆動車に盗んだナンバーが取り付けられた疑いがあるとみている。
 西村容疑者は今年二月、顧客だった女性会社役員(四二)ら三人から計三億九千万円を詐取したとされ、この直後から所在不明。小田嶋容疑者の借りていた別荘近くの長野県富士見町の山中から西村容疑者とみられる男性の絞殺体が発見されており、関連を追及する。
 また平成二年のサントリー株をめぐる詐欺事件の当時も、盗んだナンバープレートを自分の車につけるなどの工作をしていた疑いがあることが判明した。

読売新聞 95.1.7朝刊より転載

 埼玉県行田市持田三、会社役員、川崎明男さん(当時三十九歳)の死体遺棄容疑事件で、同県大里郡江南町板井、犬猫繁殖販売業、関根元容疑者(53)は六日、死体遺棄について大筋で認める供述を始めたが、偽装工作とみられる川崎さんの乗用車移動の状況が速度違反カメラによって撮影されていたことが、同県警捜査一課と行田署の調べで分かった。また、遺体の搬送には関根容疑者の大型キャンピングカーが使われていたことも判明した。黙秘を続けていた関根容疑者から供述を引き出す状況証拠の一つになったとみられる。
 調べによると、川崎さんの車は失跡翌日の一昨年四月二十一日午前二時四十分ごろ、JR東京駅地下の八重洲東駐車場に別の一台の車とともに入庫、川崎さんの車だけが乗り捨てられたことが確認されている。同県警で調べたところ、数時間前、関越自動車道を東京方面に走る川崎さんの車が道路に設置されたNシステムと呼ぶ速度違反車両撮影カメラに撮影されていた。
 一方、埼玉県警と群馬県警は六日夕、この事件の合同捜査本部を設置した。

朝日新聞社 93.8.27朝刊より転載
借金7000万円超す 身代金授受は指定場所近くで 甲府の誘拐殺人

 山梨、静岡両県警の合同捜査本部は、二十六日も朝から宮川豊容疑者を追及、身代金の置き場所となった中央道・一〇四キロポスト(標識)近くの境川パーキングエリアに、同容疑者が受け渡し指定時間の約三十分後までいたことを確認した。また、借金は七千万円以上あったことをつかみ、裏付け捜査をしている。
 調べによると、宮川容疑者は十一日夕、中央道上り線の一〇四キロポスト左を現金の置き場所に選び、受け渡し時間を午後五時五分に指定した。だが、身代金が置かれたのは五十分後の五時五十四分で、宮川容疑者は受け取りに失敗した。
 この間、付近の車両のナンバーを調べていた捜査員が、午後五時三十分ごろ、境川パーキングエリアに宮川容疑者の外車「オペル」が止まっていたことを記録している。
 また、通行券の指紋から、宮川容疑者は甲府南インタから中央道に入り、同パーキングエリアを経て、次の一宮・御坂インタで下りていたこともわかった、という。
 一方、宮川容疑者には、犯行の動機としている「三千万円の借金」を大幅に上回る七千万円以上の借金があったこともわかった。
 借金のうち、四千百万円の債権者が甲府信用金庫。今年三月、自宅を担保に極(限)度額五千万円内で融資を受けている。残りの約三千万円は、山梨県金融業協同組合に加盟する約百二十社以外の業者や個人からの借金とみられる。
 捜査本部は、宮川容疑者から甲府信金への返済に問題がなかったことから、残りの約三千万円の借金を重視している。高利の借金で、返済を迫られていた可能性が強いとみている。

朝日新聞 95/5/11朝刊より転載

大災害発生…現地へ急げ 警察庁、緊急援助隊創設 4000人体制で
 阪神大震災や地下鉄サリン事件を踏まえ、警察庁は大災害が起きると真っ先に現地に飛ぶ警察官のチーム 「広域緊急援助隊」を創設し、毒ガス事件に備えた防護マスクや地下街でも通話できる無線通信システムな どの装備を大幅に拡充することにした。十日決まった政府の補正予算案に、計六百七十九億円が盛り込まれ た。
 (中略)地下鉄サリン事件などの犯罪捜査や警備の面では、現在五百セットの防護マスクと防護服を約一 千六百セットに増やし、全国の警察本部に配備する。猛毒のサリンの中和剤を用意し、毒ガスを検知、分析 するための鑑定機器も充実させる。また走行中の車両のナンバーを自動的に読み取って手配車両を洗い出す 「Nシステム」の設置個所を大幅に増やす。

朝日新聞 95/9/29夕刊より転載

防弾チョッキや密輸監視の特殊ゴーグル 補正予算案に銃対策次々
 二十九日開会の臨時国会に提出される政府の補正予算案には、銃器犯罪対策費として二百六十五億円が盛 り込まれることが、同日までに固まった。警察庁の補正予算案は計五百七億円で、全体の半額以上が銃器対 策に振り向けられた。
 銃器犯罪対策費の主な内容は防弾チョッキ六万六千着、広域犯罪捜査に威力を発揮する自動車ナンバー自 動読み取りシステム(Nシステム)九十三基、動く標的などを使った実践的な射撃訓練ができるようにする 射撃場の改修九カ所、携帯型の銃器検索装置の導入など。(後略)





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