
JCO事故への提言

(9月30日午後7:30頃)
平成11年9月30日に発生した株式会社ジェー・シー・オー東海事業所(以下JCOと記述)における核燃料加工施設の臨界事故は、作業員の被ばくに止まらず、多くの県民の生命を危険にさらしかねない重大な事態であり、国内ではじめて住民が避難し、31万県民が18時間にわたって屋内待避を強いられるなど、我が国の原子力史上最悪の事故となってしまいました。
加えて、今回の事故は、会社ぐるみの重大な作業マニュアル違反により惹起されたものであり、作業員個人の過失責任や、単に事業者の責任だけではなく、こうした状態を見逃してきた国の安全基準、原子力防災体制に欠陥があったといわざるを得ません。
今回の事故で、私たち茨城県民が被った肉体的・精神的被害、そして風評被害による損害ははなはだ甚大です。
こうした点を踏まえて、私は、当事者であるJCOをはじめ、国や県、地元市町村に対し以下の6点を緊急に要望するものです。
まず第一に、事故原因の徹底的な解明です。
事故原因は、2.4キロしか入れてはいけないウランを、16キロも入れてしまったという、常識では考えられないミスであったと伝えられています。
しかし、この事をもって単に人的な作業ミスとして今回の事故を片づけることは出来ません。技術の分野では、人間は間違いを起こすものであるという前提で、その人的な間違いを起こさないようなシステムを作ることが要求されます。これをフェールセーフといいますが、この基本的な考え方が、このJCOでは、全く機能していなかったわけです。
国が責任を持って原因を究明し、その結果を細大漏らさず正確に県民に公開することを要求したいと思います。
第二は、すべての原子力関連施設での総点検と安全基準の見直しを要求いたします。危険な核物質を扱う事業者が、一般の住宅地と隣接して設置されていて良いのか?こうした点も含めて、施設の点検と安全基準を再検討することが必要です。
第三点は、住民不安の払拭です。私は事故直後、東海村や日立市、ひたちなか市を、現地調査いたしました。
普段賑わう商店街がシャッターを降ろし、道路に車一台走っていない状況に戦慄を覚えました。東海村やひたちなか市の健康相談の窓口には、数万という単位で住民が押し寄せておりました。こうした状況は、住民の不安の反映であります。
不安の解消のため、国、県、そして市町村は10キロメートル圏内の住民への健康診断を、是非無料で実施していただきたいと要望するものです。また、住宅の汚染測定も希望者に行うべきです。井戸水の汚染調査も徹底して行う必要があります。たとえ些細な不安に対しても、行政は万難を排して、その解消に当たるべきです。
第四は風評被害の問題です。茨城産の農産物や漁業、畜産、加工食品などに、深刻な風評被害が出ています。
県だけではなく国が、農林水産物、食品の汚染調査を行い、安全宣言を発することが緊急に必要です。
さらに、こうした風評被害のすべての損害に、事業者だけではなく、国が責任を持って賠償に当たるべきです。
五点目に、事故即応体制、危機管理体制の抜本的な見直しです。今回の事故では、国、県、地元市町村そして当事者であるJCOの連携が全くとれておりませんでした。
JCOから県や市町村に事故の第一報が入ったのは、発生後1時間も経っていました。現場から、5キロ程度しか離れていない日立の小学校で、窓を閉め、校庭から教室に入るように指示があったのは、事故後4時間すぎた2時30分であったことが公明党の調査で判明しています。
30日夜、10キロ圏内の住民への屋内待避要請がテレビの臨時ニュースで報道された際も、茨城県庁の災害対策本部では「そのような呼びかけはしていない」と私の問い合わせに答えておりました。このような目に余る混乱ぶりが随所にみられたのが事実です。
最悪の事態を想定した、危機管理体制の構築と、住民参加の原子力防災体制の整備が急務です。
そのためには、国は原子力防災対策特別法を制定する必要があります。原子力災害が発生した際の避難や屋内待避などの判断は、法律によって国が対応するべきです。そのための法整備が不可欠と考えます。
私は、今回の事故の深刻な反省と万全な対応を、国、県、市町村そして当事者に求めてまいります。

室内待避要請が解除された東海村の目抜き通り、平日の午後とは思えない、まるでゴーストタウンのようだ
(10月1日午後4:30頃)

事故現場から10km圏内では、コンビニも多くが休業した。私の自宅には新聞、郵便、宅急便も配達されなかった。
(10月1日午後3:00頃)

国道6号線も交通止め、日立市大和田町の交差点で
(10月1日午後1:30頃)
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