平成12年3月県議会一般質問

1.県財政の再建について
1-1.県民の理解と協力を得るための方策(知事)
1-2.国への働きかけ(知事)
1-3.自主財源の確保策
1-4.収入未済対策・脱税防止対策
1-5.県有土地資産の再評価と管理システムの再構築


質問:井手義弘
公明党の井手義弘です。

  平成12年度予算案並びに県政の諸課題につきまして、知事及び教育長、警察本部長、関係部長にご質問いたします。明確なご答弁をよろしくお願いいたします。

  すでにご案内のように、平成12年度県予算案は、3年連続のマイナス予算となりました。県税収入は大幅に落ち込み、財政再建団体への転落という危機的状況も想定されております。

  聖域とされていた人件費も、当初予算ベースで初めて削減されました。職員定数の削減による効果を含めると、削減額は117億円に上ります。大型公共事業の休止、県単公共事業の15%カット、既存の事業の廃止や縮小など、歳出削減に大鉈を振るった予算編成です。

  しかし、財源不足は歳出のカットだけでは補えず、「一般財源基金」250億円の取り崩し、国の交付税措置がある「財源対策債」の発行増、国の交付税措置が期待できず、元利償還金を独力で返さなければならない「財政健全化債」250億円の発行に踏み切り、やっとの思いで収支を均衡させた、難産の末の予算であります。借金に依存した予算編成の結果、12年度末の県債残高は1兆3540億円に上る見込みで、300万県民で単純に割り算すると、一人約45万円の負債を背負っていく計算になります。

  こうした超緊縮型の予算案ではありますが、随所に私ども公明党の要望、提案を取り入れられ、少子高齢社会への対応や原子力安全対策、教育問題などに取り組んだ予算であると評価いたします。

  特に、少子高齢対策としての「介護慰労金の存続」、「子育てママ支援預かり保育事業」、「児童虐待対策推進事業」。環境保全対策としての「ダイオキシン類環境保全対策事業」、「ダイオキシン発生源調査」。教育分野での「学級改善支援事業」「社会人TT配置事業」「中学校社会体験事業」「子供ホットライン」「教育・子育て電話相談」などは、特記すべき施策であると思います。

  さらに、53億円を投じ、原子力防災対策に重きを置いたことも評価いたします。原子力安全等推進基金についても、東海村を中心とする周辺住民に十分納得していただける使い道、例えば専門的治療や健康診断が受けられる医療施設などを、ご検討いただきたいと思います。

  さて、県が憂慮するように財政再建団体に転落すれば、使用料の大幅引き上げや単独事業の停止、各種団体への補助金カットなど住民負担が増え、行政サービスの大幅な低下を招きます。

  それを防ぐために、県民の皆さまに最小限の負担増やサービスの低下をお願いしなくてはならない局面もあろうかと思います。

  こうしたことを考えると、県民のご理解を戴くことなしに、この財政危機を乗り越えることは出来ません。

  県は、全力を挙げて、県民へ財政の現状を伝え、具体的な対策を示し、ご理解を戴く努力を、更に進める必要があります。

  そこで、まず知事に、現状をどのように県民に伝え、県民のご協力を戴こうとしているのか、お尋ねしたいと思います。


答弁:知事
  井手義弘議員のご質問にお答えいたします。

  まず、県財政の再建について、県民の理解と協力を得るための方策についてでございます。この財政危機を克服するためには、ご指摘のとおり、県財政の実態を十分に知っていただいた上で、県民の皆様の理解と協力を得ていくことが極めて重要であると考えております。県としては、これまでも各種広報媒体を活用し、県民に対する情報の提供に努めてきたところであります。

  例えば、県内の全世帯に配布しております広報紙「ひばり」や「フォトいばらき」、新聞各紙による「県政キャンペーン」などにより、県財政の危機的状況や行財政改革への取り組みなどをお知らせするとともに、インターネット等を活用し、「中期財政収支見通し」についても公表してまいりました。

  また、昨年12月には、新たな取り組みとして「ラジオ県だより」を活用し、県財政の現状を説明し危機回避に向けた取り組みへのご協力をお願いしたところであります。

  さらに今般、財政再建プランの策定に当たり、県民の皆様の声を直接聞くパブリックコメント制度を試行的に導入したところであります。

  この財政再建プランでは、巨額の財源不足を解消するための具体的方策とその目標額をお示ししております。その基本方向は、まず内部努力によりあらゆる面での見直しを徹底して進めることとし、その上で県民の皆様に関係する事務事業についても、ご理解を得ながら抜本的な見直しを行っていくこととしておりますが、このプランに沿った財政再建ができない場合には、茨城県は財政再建団体転落という最悪の事態となり、結果として県民サービスの大幅な低下を招きかねないことを訴えていかなければなりません。

  県民生活への大きな影響を及ぼしかねない財政再建団体への転落という事態だけは何としても回避し、財政健全化への取り組みを確実に実行していくためにも、本県の財政状況をより分かりやすく説明していく必要があるど考えております。

  今後は、ひばりや新聞、ラジオなど多様な広報媒体を駆使するとともに、「明日の地域づくり委員会」をはじめ県が主催する各種の集会や商工団体との会合、大学の講座といった様々な場も活用し、県の職員が出向くなどして、県民に幅広く情報を提供してまいります。また、小中学生にも県財政の状況を分かりやすく情報提供するため、例えば、税に関する知識の普及を行っている県の租税教育推進協議会で作成している中学三年生向けの公民資料の中に県の財政状況を分かりやすく解説したり、小学生でも分かるように財政の仕組みなどをやさしく記述してインターネットで提供するなどの取り組みを行ってまいります。

  このような取り組みとともに、私自身もあらゆる機会を通じて県財政の状況をご説明し、県民の理解と協力が得られるよう努めてまいりたいと考えております。


質問:井手義弘
さらに、この財政危機を克服するためには、単に県だけの努力では、乗り越えられないものがあると認識しております。

  国と地方の財源のアンバランス、県債発行と地方交付税措置のリンクがもたらす県債依存体質、景気に大きく左右される地方税源のあり方、国の減税や税制変更が地方の意見を無視して行われる現状、などなど国を挙げて改革しなければ、地方自治体の財政改革はなしえません。

  私は、これまでの一般質問や予算特別委員会の質問を通して、外形標準課税の導入や消費税の地方分を2%とすることを、県が強く国に求めるよう、重ねて提案して参りました。

  橋本知事におかれましては、こうした点を踏まえて、今後どのよう点を、国に対して要望されていくのか、具体的にお聞かせいただきたいと思います。


答弁:知事
  国も地方公兵団体も、財政的に非常に厳しい状況にありますが、国は赤字国債の発行を含めた裁量的な財源調達手段があるのに対し、地方公共団体においては財源調達上の手段が制約され、弾力的な財源の確保が困難である分、より状況は厳しいと認識しております。

  本県におきましても、平成12年度の県税収入見込みでは、ピーであつた平成3年度の約350億円が約3100億円と大きく下回り、とくに基幹税目である法人二税は、景気低迷と減税の影響により約1500億円が半分以下の約740億円にまで落ち込むなど、極めて厳しい状況に直面しております。地方税の減税も、地方団体の反対にもかかわらず、国の景気対策として行われたことを思い起こすとき、国の責任はやはり大きいと言えます。

  巨額の財源不足に対して、歳入・歳出両面にわたり、可能な限りの取り組みを行つたとしても、ご指摘のとおり、本県独自の対策のみでは限界がございます。自助努力に加えて、現行の地方税財政制度の改正などの抜本的な見直しを、国に対して強く要望していくことが何としても必要であります。

  具体的には、まず、税源委譲等により租税総額に占める地方税のウェイトを高め、地方の税源を充実強化するよう要請していくとともに、とくに法人事業税については、税収の安定的確保、応益課税などの観点から、中小法人の税負担等に配慮しながら、できるだけ早期に外形標準課税を導入するよう、国に強く働きかけていく必要があると考えております。

  また、地方交付税の交付税率の引き上げ等による総額の安定的確保や、国庫支出金における超過負担が生じないよう、補助対象範囲の拡大や補助単価など補助基準の改善を求めていくことも必要です。

  国直轄事業負担金につきましても、事業実施に当たつては地方公共団体の意向を十分反映できる制度とするとともに、負担割合の引き下げや維持管理費に係る負担金の廃止を求めていくことが必要です。

  国も地方と同様財政事情が苦しい中にあつて、これらはいずれも一朝一夕に実現できるものとは考えておりませんが、県議会のご支援をいただき、全国知事会等とも連携を図り全力をあげて実現に努めてまいりたいと考えております。


質問:井手義弘
続いて、財政再建に関連して具体的に三点、総務部長にお伺いいたします。

  まず第一点目は、自主財源の確保策です。

  今年度、県は核燃料税を廃止し、核燃料等取扱税を導入しました。法定外普通税としては、全国的にも先進的な取り組みであり、その動向が注目されておるところです。

  しかしながら、現下の厳しい財政状況を考えますと、核燃料等取扱税の創設に止まらず、県民や負担者の理解を得られる形で、新税の導入を検討する必要があると思います。

  私は、産業廃棄物の県内廃棄に関して課税する「環境税」を、法定外普通税として導入することを検討すべきであると提案いたします。

  そこで、新税導入を中心に、県の自主財源確保の取り組みをお伺いいたします。


答弁:総務部長
  地方分権一括法の成立に伴い地方税法が改正され、法定外普通税が許可制から事前協議制に移行し、法定外目的税制度が創設されたところでございますが、本県におきましては、国において制度改正が論議されていた平成九年度に「茨城県自主税財源充実研究会」を設置し、本県独自の税財源充実・確保策について検討を行ってきたところでございます。

  この検討の過程におきまして、県民アンケートの調査結果などを踏まえ、本県独自の税源として、一般廃棄物や産業廃棄物、パチンコなどの遊興行為、核燃料廃棄物等への課税の可能性について、様々な観点から、検討を行ったところですが、核燃料廃棄物等への課税の実現性が最も高いとの結論を得て、「核燃料等取扱税」の創設を目指すこととした経緯がございます。

  地方税法の改正により、地方自治体としては、従来より選択の幅が広がったわけでございますが、新税を創設するには、担税力のある税源の存在、特別な財政需要の有無、納税義務者の理解といった解決すべき多くの課題がございますことから、制度が変わつたからといって、直ちに法定外税を創設できるものではないと考えております。

  しかしながら、地方分権を支える財政基盤の充実を図る上で、法定外税は有功な手段の一つであると考えており、議員ご提案の産業廃棄物に対する課税も含め、今後とも幅広い観点から研究を行ってまいりたいと考えております。


質問:井手義弘
第二点目は、県税の未収対策・脱税防止対策です。

  長引く景気低迷の影響を受けて、県税の収入未収額は増加の一途をたどっています。

  平成五年度の県税の収入未済額は、85億6500万円でしたが、平成10年度には、123億1300万円と1.44倍に増加しています。

  また、同じように県内の市町村税の未済額も、233億7600万円から418億2300万円へと1.79倍に増えています。

  こうした収入未済額の縮減は、財政再建の出発点であります。

  同様に、軽油引取税などの脱税対策もしっかりと取り組む必要があると思います。

  未収対策・脱税防止対策について、総務部長にお伺いいたします。


答弁:総務部長
  収入未済額の縮減を図ることは、税収確保という点ばかりではなく、税負担の公平性の観点からも極めて重要であると考えております。このため、県といたしましては、大口・特殊滞納対策プロジェクトチームの活動を強化し、広域・複雑化する滞納案件について、より機動的・効率的な滞納整理に努めているところでございます。さらに、県税事務所における休日や夜間の滞納整理に加え、昨年10月と12月には全県税事務所一斉に休日滞納整理を行うとともに、初めて、休日納税相談を実施したところでございます。

  また、昨年度からは、入札参加資格や制度融資の申請に際し、納税証明書の添付を義務付けるなど各種対策を実施しているところでございます。

  こうした対策を行った結果、平成10年度未の未済額は前年度比で約6億円程度の縮減が図られたところでございますが、依然として120億円を超える未済額を抱えているところでございます。

  このため、県といたしましては、新たに自動車税の口座振替の導入やローラー作戦による集中的な滞納整理の実施等、徴収対策の一層の充実・強化を図り、未済額の縮減に引き続き全力で取り組んでまいりたいと考えております。

  一方で、未済額の約4割を占める個人県民税につきましては、市町村が賦課・徴収することとされており、県といたしましては、これまで市町村との共同滞納整理を積極的に行ってきているところですが、未済額は年々累増する傾向にあり、その縮減が長年の懸案となつてきたところでございます。市町村におきましては、県以上に多額の未済額を抱えており、その縮減が大きな課題となつていることから、今般、個人県民税と市町村税の未済額を抜本的に縮減していくため、県と市町村が協力し、広域的な徴収体制を整備していくこととしたところであり、平成12年度はそれに向けた準備を進めてまいりたいと考えております。


質問:井手義弘
今回の予算案では、発生主義会計手法導入費が、初めて計上されました。私は、遅きに失した感は否定できませんが、一刻も早く具体化する必要がある重要な施策であると思います。

  発生主義会計手法の導入や、財政再建のため、未利用資産の売却などのためには、県有土地資産の評価をしっかりとする必要があります。

  現在、公有財産管理台帳の土地の価格は、取得価格を基礎に、5年ごとに一定率を加えて、現時点での価格を算出することになっています。

  したがって、台帳金額と周辺の土地の相場が著しく異なっている場合が見られます。例えば、水戸市元吉田町の自治研修所は、台帳価格が平米当たり、わずか4989円ですが、近傍の国税局の路線価は155,000円であり、台帳価格は路線価の3%に過ぎないという結果となっています。反対に、水戸市の長町アパートは、台帳価格が258,141円であり、路線価の115,000円を2倍以上上回っている場所もあります。

  更に、数度にわたって分割して取得された県有地は、一体的に利用されていても、管理台帳には複数の評価額が記載されております。

  こうした不都合を是正して、県の本来の姿を県民に明らかにするために、土地の評価を現状に即したものに改めるべきであると考えます。

  また、今般、外部監査人から意見として述べられておりますように、現在県が採用しております公有財産管理システムは、17年前に導入されたものであり、必要な検索や集計が出来ないなど、その機能に不足を生じていると伺っております。

  県民の大切な財産である県有地や建物などの有効活用を図る上でも、また売却を推進し財政再建に寄与するためにも、公有財産管理システムの再構築は、緊急の課題だと考えます。県有土地資産の再評価と、管理システムの再構築について、総務部長のご所見をお伺いいたします。




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