平成12年3月県議会一般質問

2.介護保険の円滑な導入と高齢者福祉の推進
2-1.在宅介護慰労金の存続の意義と概要
2-2.介護保険外の福祉サービス
2-3.要介護認定の精度の向上


質問:井手義弘
 次に、介護保険制度に関連して、保健福祉部長にお伺いいたします。

 今年度の予算案には、4月よりいよいよ導入されます介護保険関連の予算が盛り込まれております。こうした介護保険関連予算で、最も注目されるのは、私ども公明党の主張で、1978年から寝たきりや痴ほうの高齢者を在宅で介護する方に支給してきた「在宅介護慰労金」を、継続したことです。

 私ども公明党は、一昨年の秋以来、県内100名の地方議員の総力を挙げて各地で「介護保険セミナー」を開催して参りました。その延べ開催回数は、2000回を超えております。私も、150会場で直接お年寄りや介護をされている方との懇談の機会を持って参りました。

 その中で強く感じたことは、茨城県の独自性にマッチした「いばらき方式の介護制度」を確立する必要性です。

 親との近住率が88%と高い我が県は、平成八年度のヘルパー、ディ・サービス、ショートスティーなどの福祉サービスの利用状況が、高齢者100人当たり年間179日で、全国で二番目に少ない県であります。お年寄りの介護を社会全体で支えるという考え方より、家族みんなの努力で支えていこうとする傾向が強いことも事実ですし、そのこと自体は非難されることではありません。こうした現状を肯定的に捉えることが大事だと思います。

 その上で、旧来の措置制度から介護保険制度への円滑な移行をする必要があります。急激な制度の改革よりも、介護する人の負担を軽減することや、介護保険の枠外のサービスを充実させることも、我が県においては重要な視点となります。

 そういった意味で、私ども公明党は一貫して、「在宅介護慰労金」の存続を主張してまいりました。多くの自治体が廃止を決めている中での存続の決定に敬意を表するとともに、「介護慰労金制度」の意義と概要についてお伺いいたします。


答弁:衛生部長
   介護慰労金について、お答えいたします。

 県といたしましては、これまで、自宅において、重度のねたきりや痴呆性の高齢者を介護している家族の方のご労苦に対し、ご慰労するという目的で、年額5万円を支給してまいりました。

 国においても、介護保険の円滑な導入を図るため、介護保険制度とは別枠として、要介護4及び5の重度の高齢者を介護する低所得世帯で、介護サービスを一年間利用されない方々に対しまして、年額10万円を限度とし、平成13年度から介護慰労金を支給することが決められたところでございます。

 このような中で、介護保険制度のもとにあっては、介護サービスを利用していただくことが基本であり、慰労金の支給については、女性を介護に縛りつけることへの懸念、或いは介護サービスの基盤整備に振り向けるべきであるなどの議論もあり、全国的には平成12年度、6府県において廃止を決めているところでございます。

 しかし、本県におきましては議員ご指摘のとおり、親子の同居や近くに住むという近住率が高いことなどから、親も子供の介護を望み、また子供も是非、親を介護したいという家族も多くいることも事実であり、こうした家族の労をねぎらうという観点から継続することにしたところでございます。

 従いまして、来年度は、従来の対象者とほぼ同じと考えられる要介護3以上の方を介護されている家族の方々に対しまして、介護サービスを利用しない場合に、要介護3については年額3万円、要介護4及び5の場合には年額5万円を支給してまいりたいと考えております。


質問:井手義弘
 また、「いばらき方式の介護制度」を考えるとき、「配食サービス」や「紙おむつの支給事業」、「ディ・サービス事業」などを介護保険の枠外のサービスとしても、充実させる必要があると思います。

 更に、県が全国に先駆けて推進してまいりました「地域ケアシステム」の充実や介護保険との連携を強化する必要があります。

 一方、本年1月末現在の要介護認定の結果を見てみますと、要介護1〜5と判定された方が全体の88%で19,308人、要支援が7.9%で1,739人でしたが、介護保険サービスを受けられない自立と判定された方が2.8%、624名発生している現状があります。

 保険料を支払い、自立と判定され、介護保険のサービスを受けたいと思っても、受けられない方への対応策は、介護保険全体でも大きな課題です。

 そこで、介護保険の給付対象外サービスの充実及び、自立と判定されたお年寄りの支援策をお伺いいたします。


答弁:衛生部長
   次に、介護保険の給付対象外サービスの充実及び自立と判定されたお年寄りの支援策について、お答えいたします。

 議員ご指摘のとおり、要支援・要介護高齢者への介覆保険給付以外の保健福祉サービスの充実や、要介獲認定で「自立」と判定された方、或いは、ひとり暮らしや病弱などのため、何らかの生活支援が必要な高齢者の方々に対するサービスの一層の充実を図ることが介護保険の実施と併せ、極めて重要なこととなっております。

 このため、国におきましては、来年度から要支援・要介護高齢者やひとり暮らしの高齢者等の方々に、幅広いサービスを提供する、「介護予防・生活支援事業」を実施することとしております。

 この事業は、

・食事の調理が困難な方への配食サービス
・交通手段がない方への外出支援サトビス
・家に閉じこもりがちな高齢者が、老人福祉センター等で日常動作訓練や趣味活動等を行う生きがい対応型ディサービス
などの、多くのメニュー事業から、市町村が選択して実施するものであります。

また、「家族介護支援事業」として、介護教室や介護用品の支給、介護者の交流、痴呆性高齢者の徘徊探知システムの活用など六事業を実施することとしております。

さらに、県の単独事業としまして、

・高齢者の安否確認等を行う「愛の定期便」
・ひとり暮らし高齢者等に会食の場を設け、交流を図る「ふれあい給食」
・老人クラブの会員がチームを組んでひとり暮らし高齢者宅などを友愛訪問する「高齢者地域ふれあい事業」
などをメニュー化し、国補事業と併せ、新たに実施してまいります。
県といたしましては、それぞれの市町村がこれらの事業を通じ、地域ケアシズテムとの連携を図るなどして、地域の実情に即したきめ細かなサービスを提供し、高齢者の誰もが安心して生活できるよう、指導・支援してまいりたいと考えております。


質問:井手義弘
 介護保険について、もう一点、触れさせていただきます。

 要介護認定における一次判定と二次判定の結果を比較してみますと、コンピュータによる一次判定が二次判定によって24.4%変更されております。全国ベースで見ると、その変更率は19.7%でありますから、全国平均を5%近く上回る変更率となっております。

 また、市町村ごとに見ましても、私どもの調査結果によりますと、変更率が一番高いところは四割以上に達しているのに対して、反対に変更が全くないところもあり、市町村間の格差もかなり大きいことと思われます。

 いうまでもなく介護保険は、市町村が保険者であります。したがって、市町村ごとに全国共通の一次判定から、個別に行われる二次判定で変更があることは、無理からぬことです。しかし、その変更率があまりに高かったり、市町村ごとに差が大きかったりすることは、問題があると思います。

 要介護認定は、介護保険制度の根幹をなす、重要な作業であり、その精度の向上が介護保険の成否を決すると言っても過言ではありません。

 そこで、どのようにして要介護認定の精度を向上させようとしているのか、保健福祉部長のお伺いいたします。


答弁:衛生部長
   次に、要介護認定の精度の向上について、お答えいたします。

 要介護認定は、訪問調査員が認定申請された方を訪問し、心身の状況について調査した結果をコンピュータで判定したのち、介護の必要性を医学的な見地から記載した主治医の意見書などをもとに、介護認定審査会で判定が行われます。

 議員ご指摘のとおり、訪問調査の正確性を確保し、要介護認定基準を遵守することなどにより、公平、公正な要介護認定を確保していくことが、介護保険制度全体の信頼を得るうえでも、極めて重要でございます。

 このため、県におきましては、要介護認定の受付に先立ち、訪問調査員や最終判定に当たる介護認定審査会委員に対する研修を実施したほか、本県独自の対応として県医師会の協力のもとに、二次判定の重要な資料となる主治医の意見書を適切に記入していただくためのマニュアルを作成したところでございます。

 また、現在、適切な介護認定審査会の運営を確保するため、介護認定審査会の委員の方にも協力をいただきながら、審査会運営ビデオ及びマニュアルを作成しているところでございます。

 さらに、来年度新たに、主治医に対する研修会を開催するほか、市町村間で不合理な格差が生じないよう、審査会の代表の方の意見交換の場を設けることとしております。

 県といたしましては、今後とも、要介護認定の精度を高めるため、万全の対策を講じてまいります。




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