今こそ、「あっせん利得罪」の導入を
中尾栄一元建設相の逮捕をきっかけに、国会議員の地位利用による「あっせん利得収賄罪」の法制化に向けた論議が活発化しています。先の臨時国会では、野党4党が共同提案した法案が、十分な審議時間がとれず、継続審議となりました。
公明党は連立与党の中で、国会議員のあっせん利得収賄を処罰する法案の提出、成立を図るよう強く主張しています。秋の臨時国会では、より実効性の高い法案を是非成立させ、口利きが政治家の仕事という悪しき慣習をすっぱりと断ち切るべきです。
なぜ現在の法律ではいけないのか?
平成12年7月、建設省発注工事の指名競争入札参加の選定をめぐり、中堅ゼネコン若築建設から賄賂(わいろ)を受け取った中尾元建設相(前衆院議員・自民党)が、受託収賄容疑で逮捕されました。
国会議員の“口利き”と賄賂に関する問題は、古くは昭和電工疑獄事件やロッキード事件、近くは中村喜四郎元建設大臣の埼玉土曜会からの斡旋収賄事件、白川勝彦前衆院議員(平成12年総選挙で落選)の交通違反もみ消し事件まで、長い間、「政治家とカネ」の癒着構造を端的に示すものとして、政治改革の重要課題の一つとなってきました。
かつての事件の多くは立件される際、受託収賄罪の容疑か、あっせん収賄罪の容疑となっています。
受託収賄罪は、公務員が職務に関して一定の行為を行うことを依頼され(これを請託といいます)、それを承諾して(受託して)、収賄罪を犯すことです。
あっせん収賄罪は、公務員が、請託を受けて、その地位を利用して他の公務員に不正な行為をさせたり、相当の行為をさせないようにあっせんし、その報酬として賄賂を受けたり、賄賂を要求したりすることに対する罪です。
しかし、これらの罪の構成要件には「不法な請託」があります。国会議員の“口利き”に関連する、あっせん収賄罪は、他の公務員に不正行為をさせたり、すべき行為をさせないように働きかけてほしい、という「請託」がなければ成立しません。事件として立件するには「不法な請託」の立証が難しいケースも多いという問題点が指摘されています。
あっせん利得罪:議員の“口利きで金品を受け取ること”を処罰
公明党が法制化をめざしているのは、国会議員が“口利き”で報酬を得ることを禁止する「あっせん利得収賄処罰法」です。
あっせん利得罪を考える際に、明確にすべき点が3点あります。それは、第1に「どのような行為」をあっせん利得罪の対象とするかということ。第二に、何を「利得」の対象とするかとういうこと。第三に、「誰」をあっせん利得罪の対象とするかと言うことです。
まず第1の「どのような行為」をあっせん利得罪の対象とするかということについては、野党案では、「国会議員が、特定の者に不当に利益を得させる目的でその地位を利用して他の公務員にその職務に関する行為をさせ若しくはさせないようにあっせんをすること又はしたことにつき、その報酬として、賄を収受し、若しくはその要求若しくは約束をし、又は第三者にこれを供与させ、若しくはその供与の要求若しくは約束をしたときは、五年以下の懲役に処する」としており、行為が不当であるか否かは関係なく、「不当に利益を得させる目的」であれば、あっせん利得罪の対象になるとしています。
私は、野党案には1つの問題があると考えます。それは、「不当に利益を得させる目的」という「不当に」という文言の解釈です。実際の運用では、不当な利益を立証することが難しいのではないかと思います。この点は、ズバリ「不当に」という言葉をはずす必要があります。
第二の何を「利益」の対象にするかです。金品に関しては、野党案のように政治資金規正法に従った寄附、事業収入、会費等の受領も、報酬の収受に該当されるべきです。しかし、金品の収受の以外のサービスや役務の提供は、対象から外すべきと考えます。例えば、個人や企業、自治体、労働組合などが、口利きの謝礼として選挙応援などを無報酬で協力することは、正当な政治活動であると考えるからです。この点でも、野党案とは一線を画するものです。
第三に、あっせん利得罪の対象では、国会議員に限定するのではなく、その秘書(公設の秘書だけではなく、私設秘書も含む)や地方議員にも適用すべきです。
あっせん利得罪を今秋の臨時国会で成立させよ
ともかく連立与党は、公明党案をたたき台に、あっせん利得罪法案をまとめ、この秋の臨時国会に提案し成立させるべきです。
あっせん利得罪の導入によって、旧来の議員の行動パターンが一新される可能性があります。政治家と企業・団体そして役人(官僚)のカネと物による連鎖を断ち切る武器となることと確信します。
参考:民主・自由・社民・共産が提出した「国会議員の地位利用収賄等の処罰に関する法律案」(民主党のHPにリンク):リンク切れ
※最終更新日:08/25/2000 12:15:47
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