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Q11:難病患者は介護保険の適用外?

難病患者の在宅介護の体制整備を急げ

全身が動かなくなる難病の筋委縮性側索硬化症(ALS)の患者は、7割近くがつきっきりの介護が必要であるにもかかわらず、公的介護保険サービス対象者とはなりませんでした。
  参考:ALSについて

 96年の2月23日付けの毎日新聞朝刊には、次のような記事が掲載されていました。

「難病患者への適用を含め検討」−−公的介護保険で菅直人厚相

 菅直人厚相は(96年2月)22日、難病の筋委縮性側索硬化症(ALS)の患者団体から在宅療養患者に対する介護支援対策などを陳情され「公的介護保険制度に難病患者を加えることを含めて検討し、積極的に対応したい」との意向を示した。同省は今国会に公的介護保険の法案提出を目指しているが、素案での受給者は原則として高齢者に限定、65歳未満の難病患者や障害者は対象外になっていた。
 ALSは次第に全身の筋力が失われる神経系の難病で、陳情した「日本ALS協会」(東京都新宿区)からは、人工呼吸器をつけて在宅療養する高井綾子さん(72)=東京都杉並区=らが出席。長期療養で介護の手がかかるために受け入れる病院が少ないうえ、在宅療養では家族の重い介護負担が深刻化している実情を訴えた。(1996.02.23 毎日新聞朝刊 30頁 社会面)

介護保険法の審議の中で、こうした常に介護が必要な患者さんへの視点が、なぜ消えてしまったのか、大きな疑問です。

 65歳未満でも介護保険の対象となる「特定疾病」については、「加齢に伴う病気」、つまり事故を除く初老期痴呆(ちほう)、脳卒中、骨粗鬆症(こつそしょうしょう)など、人数にして約55,000人が対象になると見込んでいます。

 しかし、それ以上はの明確な定義は未だ明かされていません。「特定疾病は政令で定める」となっているだけです。

 一方、65未満で介護が必要な人について、厚生省は基本的に障害者プランで対応するとしています。しかし、このプランは水準が低く、サービス目標を盛り込んだ地方自治体の計画作りも、老人保健福祉計画と違って法律で策定が義務づけられていないため、あまり進んでいないのが現状です。

Aさんは、4人家族。ALSと診断を受けたのは、1980年。5年前、呼吸困難になって入院した。夜間と土、日曜日は家族の付き添いが必要で、さらに、人工呼吸器をつけると個室に入らなければならず、差額ベッド料が月15万円かかった。3カ月入院したが、自宅に戻った。

 体を動かすことができないから、定期的にたんを吸引すしなければならない。24時間の付き添いがないと危ない。ヘルパーを頼んだが、医療行為であるとの理由で、吸引はしてくれない。近くの会社で働く夫がポケットベルを持った。30分ごとに連絡を取り合い、急場をしのいだ。

 今、週4回各3時間のヘルパーが個人的な好意で吸引してくれる。午前中は看護学校に通う長女が付き添い、夕方の2〜3時間の空白の時間帯は、夫のポケットベルが頼りだ。「綱渡りの生活だけど、周囲の協力で暮らせています」と話す。

 だが、介護する家族や理解のあるヘルパーに恵まれる例は、ごく少数だ。ALS患者は全国で推定4000人以上といわれる。「治療が不可能だから」と病院を追い出され、「たんの吸引などの治療行為はできない」とヘルパーの派遣を断られるケースが続出している。介護者さえいれば暮らせるのに、世話する家族がいないばかりに、呼吸器の装着をあきらめ、死を選択しなくてはならない人もいるという。

埼玉県内の女性(35)はもう5年近く寝たきりの母親(65)Bさんを一人で介護している。発症直後の母が入院した病院で「24時間付き添ってほしい」と言われたのを機に、仕事をやめた。いまは在宅でBさんの面倒を見ている。週4回、夕方だけ妹に代わりを頼んでアルバイトに通うのがやっとだ。生活の糧は年140万円の亡父の遺族年金と、月約6万円のこのアルバイト代だ。

 自分一人ではたいへんな入浴介助だけでも手伝ってもらおうと、市役所にホームヘルパーの派遣を何度か頼んだが、「人工呼吸器をつけている患者には責任がもてない」と拒否された。

 女性は今後、再就職できるかどうかわからず不安だという。「市役所からくる医療費の明細書をみると、入院中に比べ、訪問診療だけになったいまのほうが毎月約60万円も安い。この差額はすべて家族の無料奉仕によって生まれている。

ALSなどの難病が介護保険の対象外とするならば、国はその在宅介護に真剣に取り組まなくてはならないと思います。ALSは、茨城県内でも50人以上の患者さんがいます。

 難病医療費の一部自己負担が話題にあがっていると言われています。国、県、市町村の責任ある対応を強く訴えていきます。

このページは、茨城県議会井手よしひろの公式ホームページのアーカイブ(記録保管庫)の一部です。すでに最終更新から10年以上経過しており、現在の社会状況などと内容が一致しない場合があるかもしれません。その点をご了解下さい。