2003年の介護保険見直しの概要
介護報酬と保険料を見直し、ホームヘルプサービスは「身体」と「生活支援」の2種類へ

 2003年4月に向けて、介護保険の見直し作業が進んでいます。
 介護報酬の改定や、1号被保険者の保険料再設定などが最大のポイントとなります。
 現段階での見直しの状況をまとめてみました。



 介 護 報 酬  

 介護報酬は、「施設サービスの報酬を引き下げて、訪問介護やケアマネジャーの分は引き上げる」という方向で議論が進んでいます。
 厚労省が2001年秋に実施した事業者の経営概況調査(1カ月分)では、特別養護老人ホームなどは収益率が高く、訪問介護などは赤字傾向という結果が出ました。

介護保険事業者の経営概況調査(2001年9月)各事業者の平均値(単位は千円)
 補助金を含まない補助金を含む
収益費用収支収益率収益費用収支収益率
特別養護老人ホーム22,96419,9523,01213.1%23,70919,9523,75715.8%
老健施設31,64528,2153,43010.8%31,64528,2153,43010.8%
療養型病床群26,71925,5951,1244.2%26,71925,5951,1244.2%

 補助金を含まない補助金を含む
収益費用収支収益率収益費用収支収益率
訪問介護2,6772,776-99-3.7%2,7722,776-4-0.1%
訪問入浴990931596.0%1,03993110810.4%
訪問看護ステーション1,7331,699342.0%1,7331,699342.0%
デイケア(通所介護)3,9013,36453713.8%4,0393,36467516.7%
デイケア(通所リハビリ)4,3043,61868615.9%4,3043,61868615.9%
シュートスティ3,0612,7603019.8%3,1172,76035711.5%
痴呆グループホーム2,8782,58629210.1%2,8952,58630910.7%
有料老人ホーム42,38040,5111,8694.4%42,38040,5111,8694.4%
居宅介護支援659765-106-16.1%683765-82-12.0%

 ケアプランを作成する「居宅介護支援事業」分野は1事業所平均、1カ月で10.6万円の赤字でした。地方自治体の補助金を加えても赤字額は平均8.2万円に上りました。特に、ケアマネジャー1人の担当件数が40件以下にとどまっている小規模事業所の赤字額は大きく、45.4万円となっています。
 「訪問介護事業」分野も赤字で、その平均は月額9.9万円。報酬単価の低い家事援助の割合が高い事業所ほど赤字額も大きく、家事援助の割合が30%以上、50%未満の事業所では5.1万円、50%以上の事業所では29.5万円となっています。 今後の改定作業では、身体介護、家事援助、複合の3類型で定めている訪問介護の報酬単価を見直し、複合型を廃止して2類型に整理する方向です。うち家事援助は、生活自立支援に位置づけて報酬単価を引き上げることを検討してています。
 「施設サービス」分野は、1事業所平均の1カ月の収支はいずれも黒字となっています。内訳は、特別養護老人ホーム301.2万円、老人保健施設343万円、療養型病床群112.4万円でした。厚労省には「医療保険下の診療報酬がマイナス改定になっている現状で、介護報酬を引き上げることは難しい」との意見が強く、在宅サービスの報酬を引き上げる一方、収益率の高い施設サービスの報酬を引き下げて全体の調整をはかる方針です。

その他の主な論点
3級ヘルパーの報酬を減額するべきか
通所介護と通所リハビリの機能区分
ケアマネジャーの報酬水準をどう考えるか
施設経営はスケールメリットが考えられることから、規模別に報酬を設定するべきか
全室個室の「新型特養ホーム」で利用者から徴収できる住居費の範囲と、利用者負担を軽減する低所得者の範囲
介護保険適用の病院(介護療養型医療施設)のオムツ代の扱い
現行では宿直体制を基準にしているグループホームで、夜間の勤務体制をどう考えるか

 保 険 料 

 介護報酬を引き上げれば、当然、費用が膨らみ1号被保険者の保険料が高くなります。そのため、介護保険を運営する市町村は、保険料の値上げ幅を抑えたいため、介護報酬引き下げを求めています。
 制度の定着につれて介護サービスの提供量は増大しています。そのため、保険料の値上げは避けられないのが実情です。すでに全市町村の1割を超す390自治体で保険財政が赤字となっています。(茨城県内では5自治体)
 しかし、住民が使ったサービスに見合った分だけ保険料がアップするのは介護保険制度の基本的な考え方であり、値上げイコール悪ではありません。市町村が保険料負担増を意識し過ぎると、住民の希望に反して介護施設の建設を抑えたり、無理に安い保険料を設定して、後で赤字に苦しんだりすることにつながります。
 まさに市町村の見識が試されることになります。しっかりとした計画を立て、住民に理解を得ることが何よりも大事になると考えます。

 1次判定用ソフトの改定 

 厚生労働省は2001年4月28日、要介護認定の1次判定の見直しを決定しました。判定用のコンピューターのソフトを作り替えて、今秋から試験的に運用し、2002年4月から運用します。
 見直しでは、コンピューターによる1次判定で、痴ほうのお年寄りの介護の必要度合いが低く判定される傾向があると指摘されていることに配慮。「場所の理解ができない」「生年月日が言えない」などの指標からコンピューターが「運動能力の低下していない痴ほう性高齢者」と指摘するようにし、2次判定で要介護度の引き上げなどについて配慮を促すことにしました。質問項目についても、「電話の利用ができるかどうか」「飲み水の摂取ができるかどうか」など、日常生活の状況を把握しやすい項目を追加しました。

 今後の見直しスケジュール 

 市町村は、3年ごとに介護保険事業計画を作ることが法律で義務づけられています。5年間のサービス利用の伸び具合を予想し、それに沿った事業者の誘致や施設整備のプランを立てます。計画づくりと同時に、必要な介護費用の見込みを計算します。これに基づいて、全国一律に決められている税金と保険料の負担割合に従い、65歳以上の高齢者から集める1号被保険者の保険料額が決まります。最終的には、来年3月の市町村議会の審議議決を経て決定されることになります。
 一方、介護報酬も保険料額に影響を与えることから、3年に1度の見直しが前提になっている。7月ごろに報酬の数値を空白にした「骨格」を決め、具体的な数字は10月にまとまる経営実態調査(事業者の3分の1が対象)の結果を踏まえて検討。来年1月に審議会の答申を受けて厚労相が決定することになります。

このページは、茨城県議会井手よしひろの公式ホームページのアーカイブ(記録保管庫)の一部です。すでに最終更新から10年以上経過しており、現在の社会状況などと内容が一致しない場合があるかもしれません。その点をご了解下さい。