平成15年3月県議会一般質問

1.行財政改革の推進(知事答弁)

質問:井手義弘
公明党の井手よしひろです。

県政の諸課題について、橋本知事並びに関係部長、警察本部長にご質問いたします。

ご答弁にあっては、単に我々議員に答えるという姿勢ではなく、不況の中、大変な苦労を強いられている300万県民に、「今は大変だけれども、頑張れば、茨城の未来は明るい」と、希望のもてるご答弁を期待するものです。

早速、茨城県の行財政改革の推進について知事にお伺いいたします。

茨城県の財政は、深刻な危機状態に陥っています。家計になぞらえて考えてみたいと思います。

給料にあたる県税は、デフレ不況に直撃され、平成3年のピーク時の半分以下にカットされました。大きな買い物をするときの頼りであった親からの仕送り=地方交付税も、毎年減少傾向。借金返済など削ることの難しい支出=義務的経費が家計を圧迫し、貯金=いわゆる財政調整基金は底をつき。借金=県債を重ねないと日々の生活ができない――といった状況にあります。

さらにその借金も、有利な借り先からはもう借りられなくなり、条件の悪いところから借りなくてはならない。まさに、破産寸前の状況です。

こうした財政難は、地方自治制度の構造的問題や景気の低迷に起因しています。もはや茨城県だけの努力で解決できるものでないことは、火を見るより明らかです。

しかし、その財政危機のしわ寄せを、一般の県民に、特に所得の低い方に押しつけることには承服できません。

県立産業技術専門学院や農業大学校の授業料を新たに徴収することや、この後の質問でも触れます県営アパートの駐車場料金の改定にしても、デフレ経済下での行政の決断としては、余りにも稚拙であるといわざるを得ません。

こうした負担増を県民に強いるのであれば、それに倍する県当局の徹底した歳出削減が、強く強く望まれています。そしてこの現状を直視したとき、どうしても避けられないのは、人件費についての議論です。

義務的経費である人件費の負担は、平成15年度予算では歳出総額の3割を超え、金額ベースで実に3500億円に上っています。また、県のラスパイレス指数は、平成14年4月1日現在103.4であり、東京、静岡、愛知などに次ぎ全国で6番目の高さとなっています。

本年度、警察官の増員があったものの、定員の削減や、人勧マイナス勧告による給与の引き下げ、特別職や幹部職員の給与削減などの、まさに我が身を切り裂くご努力により1.1%の人件費を削減する予算を計上しました。率は少ないように思えますが、金額では、50億円にも達する削減であり、一定の評価をするものです。

私は、平成9年3月の一般質問で、県職員の退職手当について、その見直しを提案いたしました。聖域とされていた職員の退職金に触れた最初の質問ではなかったかと認識しています。

この問題に改めて、視点を当ててみたいと存じます。

030310taisyoku平成14年4月1日現在の在職職員の年齢構成から、年度ごとの退職予定者数と退職金支給見込みを算出してみますと、平成27年度に退職予定者が1300人台に突入します。その負担額は、年間470億円程度となり、現状の2倍近い金額です。平成28年度に1400人台のピークを迎え、33年度まで1300人台が続きます。この7年間で、退職予定者は1万人に迫り、必要な退職金額は、3200億円にも上る見込みです。

この増大する退職金に対して、国は、民間との格差是正という観点から、あらたな動きを見せています。

総務省は、国家公務員の退職金と民間企業の退職金の格差を調査し、結果を昨年秋公表しました。調査結果によると、民間企業の退職金平均2791万円に対して、国家公務員平均は2948万円で、5.6%高いという結果でした。この結果をもとに、20年ぶりに国家公務員の退職金を6%下げる法案が、この通常国会に提出されようとしています。一方、茨城県の退職金の平均金額は、3235万円ですので、民間との格差は、15.9%という計算になります。

国家公務員の退職金引き下げの動きに呼応した、県の退職金に関する対応が、今、大いに注目されています。

また、この調査自体にも、私は疑問を感じています。今回の調査対象となった民間企業の退職者約12万人のうち、会社都合によるのがほぼ半数を占めています。会社都合の場合、通常受け取る退職金より2倍程度が支給されていると言われています。平成11年度の民間退職金は「リストラ効果」で通常の年よりも増えため、結果的に官民格差も縮まった可能性が強く、民間と公務員との退職金格差は、実態として非常に大きいと私は考えています。

民間事業者は、いわゆる団塊の世代が一斉に定年期を迎える期間を想定し、退職金引当金の積み増しや年金制度への移行、分割支給や前払い支給制度の導入といったドラスティックな改革を進めました。

県も一刻も早く、退職金に関する検討機関を立ち上げ、本格的な検討に入るべきだと思います。国家公務員の退職金引き下げが決定した場合の県の対応も含めて、県職員の退職金についての橋本知事のご所見をお伺いいたしたいと思います。

また、退職時の特別昇給制度についても、改めて触れさせていただきます。現在、県の規則等によって、退職するその日に、2号給以内で基本給の昇給が認められております。退職金はその昇給された基本給のもとに支給されるために、勧奨による退職の場合は、約50万円程度が退職金に上乗せされております。

朝日新聞の調査によると、「特別昇給制度」は、国に準じる形で全国の47都道府県と12政令指定市で実施されています。うち32自治体では、茨城県と同じように、国の水準を上回って2号給が加算されています。

この特別昇給制度にも、様々な批判がおこっています。香川県は、外部監査で「退職手当のかさ上げだ」との指摘を受け、15年度から制度を全廃することを決めました。北海道は、これまで認めていた2号昇給を14年4月から1号昇給に下げています。そのほか、新潟県、東京都などが引き下げを職員団体に提案しており、埼玉県、鳥取県、島根県、山口県も検討や調整をしていると報道されています。

県職員の退職金改革の第一歩として、特別昇給の見直しを行うべきと考えますが、知事のご所見をお伺いいたします。

次に、55歳定期昇給停止制度の導入についてお伺いいたします。国においては、平成11年度に55歳昇給停止制度が導入され、経過措置期間が終了する平成17年度から完全実施されることになっております。私は、国に準じた55歳昇給停止制度を早期に導入することが必要であると考えております。

先に提出された包括外部監査の指摘によりますと、一定の条件下で比較した場合、58歳昇給停止制度と55歳昇給停止制度の給与負担に与える影響額は、制度完成時との比較で約1億9000万円であり、今後県職員の高齢化が加速していくことから単年度の影響額も拡大することになります。当然、その影響は給与にとどまらず退職手当にも影響し、55歳定期昇級停止制度を導入すれば、約2億9000万円の人件費負担が削減できます。

定期昇給停止には、一定の経過措置が必要であり、導入に向けて早期の決断が望まれると思います。知事のご所見をお伺いいたします。

次に退職手当基金設置の必要性を、知事にご提案いたします。

平成9年の一般質問でも指摘させて頂きましたように、退職手当は将来必ず負担しなければならないコストであって、それを先送りすることは、将来の県民に負担を強いることになります。その意味で、本年新たに予算計上された退職手当債は、まさに禁じ手であると考えています。厳しい財政状況下であっても、退職手当に充当する資金を手当てすることは必要な課題です。退職手当基金設置について、知事のお考えをお聞かせください。

答弁:知事
井手義弘議員の行財政改革の推進について、のご質問にお答えします。

県の行財政改革の推進や民間の厳しい経済状況等を踏まえますと、人件費の見直しは避けて通れない課題と認識しております。

お尋ねの県職員の退職金でございますが、本県の制度は国に準じたものとなっておりますのでご指摘の国家公務員の退職金との差は、調査対象となった職員の範囲が異なることなどによるものであると思われます。

すなわち、国の場合は、給与水準の高い部局長などの指定職が除かれていることや勧奨退職者の退職時の年齢が本県よりも若いこと、などによるものと考えられます。

なお、ラスパイレス指数の順位が全国第六位とのご指摘でございますが、本県が給与カットを実施していた平成12年は100.2で第45位と下から3番目と全国水準であったというように、その順位はある年度に給与の削減措置を実施したか否かにより大きく変動するものでございまして、現在は、本県よりも遅れて給与カットを行っている県がいくつかあることにより、相対的に本県の順位が上位となっている状況であります。

とはいえ、民間の方をはじめ、いろいろな方のお話を伺っておりますと、景気の低迷が続く中で、民間の給与水準はかなり低下してきており、公務員全体の退職金は民間に比べて相対的に高くなっているのではないかという感じを持っているところでございます。

今後、国の退職手当が引き下げられれば、当然、本県としても、同様に見直しを行っていく必要があると考えております。

さらに、その中で、国より有利な退職時特別昇給の見直しや国に準じた55歳昇給停止措置の導入などにつきましても、人事委員会勧告なども踏まえつつ、鋭意、検討を進めて参りたいと考えております。

次に、退職手当基金の設置についてでございますが、本県では極めて厳しい財政状況が、当面続くものと見込まれますし、しかも、一般財源基金そのものが枯渇寸前の状況が続く中にあって、退職手当基金を新たに設置することは、現時点では、困難であると考えております。

しかしながら、今後における退職金の増大が本県財政に少なからず影響を与えるものと認識しておりますので、徹底して行財政改革を推進し、中期的な財政構造の健全化に取り組んでいく中で、退職金についても対処してまいりたいと考えております。

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