がんとむきあうために〜自分らしく生きる大切さ、がん検診の大切さ〜
 「医者だけど、1回も死んだもこともないし、本当に怖かった!」。がんでなくなった外科医が検診の重要性、患者になり分かったことを語っている動画です。
 第一線で活躍していた消化器外科医が、ある日突然、進行した胃がんで倒 れ、「余命半年」を宣告されました。金沢赤十字病院副院長の西村元一さん。西村先生は、そこから医療者の考えと患者体験とのずれについて積極的に発信を始めましたた。今年(2017年)5月下旬、西村先生は死去。金沢市は、西村さんが生前、がん検診の大切さを訴えていたときの動画を、8月8日に公開し、広く検診を受けるよう呼びかけを始めました。
西村元一医師(故人)
 15分の長さの動画は、亡くなる4日前に収録されました。動画の中で西村さんは「先がどうなるか、どういうことになっていくかは医者だけど1回も死んだこともないし、本当に怖かったというのが実際のところ」と語っています。
 そして、がん検診を受けてこなかったことについて触れ、「後悔しか残ら ず、私を悪い例と考えてほしい。ひと事ではなく自分のことととらえて検診を受けてほしい」と訴えています。
参考:ドクター元ちゃん・がんになる:http://bit.ly/2wb1BKL

がん闘病の医師が奔走…患者が医療者と憩う「元ちゃんハウス」オープン
ヨミドクター(Yomiuri on line)2016年12月1日

 がんの患者や家族がいつでも立ち寄れ、医療者と共に落ち着いて語り合える交流場所「元ちゃんハウス」が12月1日、金沢市内にオープンした。がん闘病中の金沢赤十字病院副院長・西村元一さん(58)が、医師や看護師、管理栄養士らで運営するNPO法人「がんとむきあう会」の仲間と取り組み、市民の寄付で実現した。金沢大学病院や国立病院機構金沢医療センターから徒歩10分の距離で、診療帰りに寄るのに便利な立地。西村さんは、「患者と医療者が互いの壁を取り除き、安心して自分らしくいられる場所にしたい」と願う。

金沢にも「マギーズセンター」を
 この日の午前10時、入り口でテープカットが行われた。西村さんは、テープを切る瞬間涙ぐみ、「いろいろな巡り合わせと人とのつながりがあってこの日を迎えることができ、感極まりました。自分自身、生きて完成を見られるか保証がなかったのですが、これで満足してしまわずに、同じような場が広がっていくよう、しっかりした運営と情報発信を続けたい」と喜びを語った。
 元ちゃんハウスは、地元企業から無償で借りている4階建てのビルを改装して作った。大きなテーブルといすがある1階は地域の人が誰でも気軽に訪れて健康相談ができる場にし、3階はがん患者や家族らが集える場所にする。
 3階のL字形の空間には、1枚板の大テーブルのほか、ソファスペース、畳でこたつがある小あがりスペースなど、4か所に分かれて語れる場を作った。奥には、プライバシーを守る完全な個室もある。西村さんは、「みんなで和気あいあいと語る場も必要ですが、男性と女性、治療中の人と治療を終えた人など、分かれた方が話しやすいこともある」と狙いを語る。
 床や家具は 無垢むく の木で、壁はベージュの 珪藻土けいそうど で塗り、やわらかな間接照明を使って、落ち着ける空間にした。L字側の空間の角にはすべてのスペースを見渡せるキッチンがあり、皆でご飯を作って食べたり、お茶を入れて飲んだりできる。本やイベントのチラシ、パソコンを置く本棚や情報スペースも作った。
 西村さんはがんが見つかる前から、「がん患者が一人の人間に戻れて、生きる喜びを感じられる家庭的な場所を」という狙いがあるイギリスの「マギーズセンター」に関心を抱き、仲間と共に「金沢にもマギーを」と活動してきた。その後の昨年3月、自身に進行胃がんが見つかって計画が加速。名前は、西村さんのあだなにちなんで「元ちゃんハウス」にした。詳しくは編集長インタビュー( 西村元一さん(上)患者になってわかったことを広く伝えたい 、 西村元一さん(下)金沢マギー、元ちゃん基金…がんが与えてくれた贈り物 )を。

「来て良かったと思える場所に…」
 西村さんの妻で、看護師でもあり、がんとむきあう会メンバーの詠子さん(57)は「皆さんの思いが詰まった場所ですし、夫も体の状態がどうなるかわからない状況で始まった計画でしたから、一緒にオープンにこぎ着けられて感無量。内覧会の段階から、治療中の患者さんが訪ねてきてくださっているので、来て良かったと思える場所にできるよう、身の引き締まる思いも感じています」と話す。
 主要メンバーの一人の管理栄養士・櫻井千佳さんも、「闘病中でも少しでも食を楽しめるようにこの場所を使って支援したい。1階でも野菜いっぱいのみそ汁を振る舞う日を作って、通院帰りの患者さんが持参のお弁当を食べながらちょっとおしゃべりしていけるようにできれば」と夢が膨らむ。
 お祝いの鉢植えを持って駆けつけた、悪性リンパ腫闘病中のメーキャップアーティスト、表雪江さん(56)も、「ふだん閉じこもりがちな患者さんは、治療で悩んだり、日常生活でどうしたらいいかわからなかったりする時にこういう場があると話しやすくなる」と喜んだ。メイクの腕を生かして、治療でくすんだ顔色や抗がん剤治療で抜けたまゆ毛の書き方などを教える活動をしている表さんは、「この場を借りて、メイクのコツを伝え、患者さんが笑顔になるお手伝いができれば」と話す。
 平日の日中は1階スペースを午前11時〜午後3時まで開き、看護師や介護士のスタッフが常駐。第2・第4火曜日は午後1時〜4時に3階スペースでがんを抱えた人が交流し、第1土曜日は午前11時〜午後1時にがんの料理教室を開催するほか、午後2時からは「がんと就労」「リンパ浮腫対策」など様々なテーマで勉強会を開く。参加費無料。料理教室のみ予約と参加費500円が必要。
 西村さんは、「検査結果を聞いて1人で自宅に戻りたくない時、仲間を探したい時など、それぞれの使い方をしてほしい。私もできるだけこの場に来て、治療への活力を得たり、癒やしを得たりしたい」と話している。詳細は がんとむきあう会へ(http://gmk.or.jp/)。