8月27日に投開票された茨城県知事選で、6期24年間知事を務めた現職の橋本昌知事を破った大井川和彦氏は、翌28日に記者会見しました。選挙の勝因について、自民党と公明党、県内首長7人の支援を挙げ、「現職が担った24年間のしがらみではなく、茨城の将来を変えたいと有権者が思ってくれた」と述べました。その上で、選挙戦では現職の多選を批判した立場から、多選禁止条例の速やかな制定を図る考えを示しました。「許される期数は世の中の相場観として、最長でも4期だと思っている」などと語りました。
知事や市町村長などの多選(3期または4期以上首長を務めること)について、全国的な流れをまとめておきたいと思います。
首長の多選については、地方自治体の長が条例案を示し、議会の承認を得ることが必要です。しかし、多選について何らかの制約をつけることは、実は簡単ではありません。
そこには、2つの課題があります。多選を制限することが憲法や地方自治法で許されるのか課題です。第2に、そもそも多選とは何期以上を指すのかとという課題です。
知事や市町村長などの多選(3期または4期以上首長を務めること)について、全国的な流れをまとめておきたいと思います。
首長の多選については、地方自治体の長が条例案を示し、議会の承認を得ることが必要です。しかし、多選について何らかの制約をつけることは、実は簡単ではありません。
そこには、2つの課題があります。多選を制限することが憲法や地方自治法で許されるのか課題です。第2に、そもそも多選とは何期以上を指すのかとという課題です。
ここでは、一番目の現行憲法や地方自治法の枠組みの中で、多選を制約する条例を作ることができるのかという課題を取り上げます。
法律あるいは条例で多選を禁止することは、憲法違反ではないかという指摘があります。こについては、平成19年5月、総務省「首長の多選問題に関する調査研究会」では、「長は直接選挙で選ばれるが故に強い民主的正統性を有し、また、幅広い事務を執行する権限を有する独任制の機関でその権力が強大になりやすいという、制度的・構造的に権力が長には集中しやすいという要因が内在している。このため、多選制限をすることは、長の権力をコントロールする合理的な手法の一つとなりうる」「長の日常の行政執行は、事実上選挙運動的効果を持っており、選挙の実質的な競争性が損なわれているとすれば、選挙における競争性を確保し、政策選択の幅を広げる手法の一つとして多選制限を位置づけることができる」などと、主張して以下のように結論付けています。
こうした状況の中で、他県や他の政令市などでの取り組みは、2つに分かれます。
一つは、多選禁止条例を定めたものの地方自治法の改正を待って、条例を実際には施行していない神奈川県などの事例です。神奈川県知事の在任の期数に関する条例は、知事の任期を連続3期までと規定しています。ただし、この条例の施行日は地方自治法や公職選挙法など関係する法改正を踏まえて、附則に「別途条例で定める」としています。前述のように、現在のところ施行に至っておらず、法的な拘束力はありません。
二つ目は、多選を禁止するものではなく、努力規定とする条例です。いわば「多選自粛条例」といえます。埼玉県知事の在任期間に関する条例では、「知事の職にある者は、その職に連続して3期(各期における在任期間が4年に満たない場合も、これを1期とする。)を超えて在任しないよう努めるものとする」と定められています。また、附則には「この条例は、公布の日から施行し、同日に知事の職にある者について適用する」との条文が加えられています。連続3期までの任期とし、制定時の知事のみが対象となっています。この条例を作った上田知事が、この努力規定を破り、4期目に出馬、当選したことは記憶に新しいことです。
横浜市長の在任期間に関する条例でも、「市長の職にある者は、その職に連続して3期(各任期における在任期間が4年に満たない場合もこれを1期とする)を超えて在任しないよう努めるものとする」と規定しています。
翻って、大井川新知事は10月県議会に、どのような多選を制限する条例を提出してくるか、大いに注目されます。国や国会に対して地方自治法改正を促すことも重要ですし、実をとって努力規定でも条例を制定することも大事です。いずれにせよ新知事の腕の見せ所です。
法律あるいは条例で多選を禁止することは、憲法違反ではないかという指摘があります。こについては、平成19年5月、総務省「首長の多選問題に関する調査研究会」では、「長は直接選挙で選ばれるが故に強い民主的正統性を有し、また、幅広い事務を執行する権限を有する独任制の機関でその権力が強大になりやすいという、制度的・構造的に権力が長には集中しやすいという要因が内在している。このため、多選制限をすることは、長の権力をコントロールする合理的な手法の一つとなりうる」「長の日常の行政執行は、事実上選挙運動的効果を持っており、選挙の実質的な競争性が損なわれているとすれば、選挙における競争性を確保し、政策選択の幅を広げる手法の一つとして多選制限を位置づけることができる」などと、主張して以下のように結論付けています。
- 多選制限は、立憲主義、民主主義の基本原理(基本的な考え方)に沿ったものと考えることができる。
- 多選制限は、 日本国憲法の規定に反するものではない。
- 多選制限は在任期間の制限であり、多選制限を行うためには、日本国憲法第92条の「地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基づいて、法律でこれを定める」との規定に基づき、その基本的な内容を法律(具体的には地方自治法)に定める必要がある。
こうした状況の中で、他県や他の政令市などでの取り組みは、2つに分かれます。
一つは、多選禁止条例を定めたものの地方自治法の改正を待って、条例を実際には施行していない神奈川県などの事例です。神奈川県知事の在任の期数に関する条例は、知事の任期を連続3期までと規定しています。ただし、この条例の施行日は地方自治法や公職選挙法など関係する法改正を踏まえて、附則に「別途条例で定める」としています。前述のように、現在のところ施行に至っておらず、法的な拘束力はありません。
二つ目は、多選を禁止するものではなく、努力規定とする条例です。いわば「多選自粛条例」といえます。埼玉県知事の在任期間に関する条例では、「知事の職にある者は、その職に連続して3期(各期における在任期間が4年に満たない場合も、これを1期とする。)を超えて在任しないよう努めるものとする」と定められています。また、附則には「この条例は、公布の日から施行し、同日に知事の職にある者について適用する」との条文が加えられています。連続3期までの任期とし、制定時の知事のみが対象となっています。この条例を作った上田知事が、この努力規定を破り、4期目に出馬、当選したことは記憶に新しいことです。
横浜市長の在任期間に関する条例でも、「市長の職にある者は、その職に連続して3期(各任期における在任期間が4年に満たない場合もこれを1期とする)を超えて在任しないよう努めるものとする」と規定しています。
翻って、大井川新知事は10月県議会に、どのような多選を制限する条例を提出してくるか、大いに注目されます。国や国会に対して地方自治法改正を促すことも重要ですし、実をとって努力規定でも条例を制定することも大事です。いずれにせよ新知事の腕の見せ所です。