井手よしひろ県議
 「希望の党」は、2019年10月に予定する消費増税凍結後の財源として、内部留保金への課税の大企業への導入を検討するとしています。しかし、内部留保金への課税は企業に賃上げや設備投資を促す効果などが指摘されるものの、法人課税後の剰余金への課税は二重課税になります。消費増税凍結により軽減する家計の負担を企業に強いる形になります。
 純利益から配当金を差し引いた剰余金の残高である内部留保(利益剰余金)は増加傾向にあります。第2次安倍晋三内閣が発足した2012年度は304兆円だったのに対し、2016年度は過去最大の406兆円に達しました。
 また財務省の法人企業統計によると、全規模・全産業の16年度の経常利益は12年度比54.7%増と大幅に増加して過去最大になった一方、人件費は2.5%増、設備投資は23.9%増にとどまっています。2012年度に37%だった法人実効税率を2016年度に29.97%に引き下げたこともあり、利益が賃上げや投資に還元されていない状況を懸念する声も政府・与党内から聞かれます。
 麻生太郎財務相は9月末の会見で、内部留保に課税して企業に賃上げや投資を促す考え方について「検討に値する話だと思う」と指摘。希望の党が消費増税凍結後の財源と位置づける発想とは異なるが、経済好循環を実現する手法として政府・与党内には以前から“内部留保課税論”がくすぶっています。
 内部留保をこれ以上増やさないためには、賃上げや設備投資(減価償却費)を増やすか、配当性向を引き上げる必要があります。ただ、そもそも利益の使途のあり方は企業が決めるもので、二重課税の問題も浮上します。経営者マインドや株価に影響する懸念もあります。
 井手よしひろ県議は、10月9日に行われた公明党の時局講演会で「二重課税問題もあり、税理論的に導入はあり得ない。政府が実施した投資減税などをさらに効果的に実施するほか、企業が中期的に抱く不安を取り除く施策が重要です」と指摘しました。また、日立製作所の事例を通し、「
日立製作所の内部留保は毎年積み増しして、2015年3月期で3兆874億円にもなっています。確かに設備投資に向けるべきだとか、労働者に還元するべきだという議論はあると思います。しかし、その内部留保金は経営者が努力して、労働者が汗して積み立てた果実であり、安直に課税して良いというものではありません」と訴えました。