都道府県別地域ブランド調査結果の推移(ワースト7)
都道府県の魅力度ランキング、茨城県は5年連続最下位
 10月10日、民間の調査会社・ブランド総合研究所が行った全国の各都道府県の魅力度ランキングの2017年度版の調査結果が公表されました。下位脱出を悲願としていた茨城県は、残念ながら5年連続で最下位という結果になりました。
 稀勢の里やアントラーズ、そしてNHKのひよっこなど、茨城の露出度が高まった中での最下位評価でもあり、県関係者や議会関係者にも落胆の声は大きなものがあります。大井川知事は「魅力度ランキングの順位が5年連続で最下位になってしまったことは非常に残念だ。結果を真摯に受け止め、新たな魅力の掘り起こしや情報発信強化に取り組みたい」とコメントしています。

調査の母数は3万人ではなく、わずか600人
 地域ブランド調査は2006年からスタートし、2017年で第12回を迎えています。都道府県ランニングでは「魅力度」が主に強調されていますが、実際には「観光意欲度」や「居住意欲度」など70項目以上の質問項目が含まれています。インターネットを使ったアンケート調査です。その調査数は3万件程度であり、調査対象の件数としては充分にあるように思われます。しかし、3万人の回答者全員がすべての地域について回答するわけではありません。各回答者に一定の数の地域が割り当てられてており、最終的に、一つの地域あたりの回答者数は600人前後となっている。都道府県の魅力度を測るのに、その母数が600というのは余りに少なすぎるのではないかというのが実感です。
地域ブランド調査2017
「地域の魅力度」は客観的評価でなく、あくまでも回答者の主観的評価
 各指標の評価は、回答者の主観的な評価に過ぎません。例えば、魅力度の場合、「以下の自治体について、どの程度魅力を感じますか?」という質問文に対して、「とても魅力的」「やや魅力的」「どちらでもない」「あまり魅力を感じない」「全く魅力を感じない」の5つの選択肢がある。「とても魅力的」には100点、「やや魅力的」には50点、その他の3つには0点が与えられます。都道府県によって回答者数は異なるため、各選択肢の選択割合に点数が乗じられます。さらに各都道府県の人口比率や年齢層比率を考慮して集計された上で、各都道府県の得点が算出されます。
 魅力度について、一つの質問だけで評価することには、大いに疑問を感じます。一言で「魅力を感じる」といっても、その地域のどのような面についてなのかによって、魅力は変化するからです。たとえば「観光にはとても魅力的ですが、あまり住みたいとは思わない場所」については、先の質問でどのように回答すべきか思い悩みます。例えば、真夏の観光に最適で、そこに行くことに大きな魅力を感ずる人は、その地域に「とても魅力的」と回答するでしょう。反対に、そこに一年中住むことを考えて、冬の気候の厳しさ、住みづらさに重きをおいた人は、「あまり魅力を感じない」と回答するでしょう。こうした主観的なアンケート調査を、地域の魅力度として評価することにどのような意味があるのでしょうか。
 マスコミには大きな話題を提供し、繰り返し地方議会の話題となって大きく取り上げられる「魅力度ランキング」は、学術的には冷ややかに受け止められています。学問的な研究対象からは一線を画されてきました。その大きな理由は、この調査が「回答者による主観的評価であり、客観的な評価ではない」からです。また、「回答者が対象の地域についてどれだけ知織・情報を有しているのか?」という疑問も、あります。すなわち、あくまで個々人の好き嫌いや先入観・僻見が反映されている恐れが高く、地域の魅力を客観掛に評価した指標ではないことを、専門家はよく知っているからなのです。
 「地域の魅力度」について、これだけの規模で経年的に調査している調査は他にないことから、「地域の魅力度」に対する主観的評価のデータとしては重用されているわけです。(繰り返しですが、客観的評価でなく、主観的評価です)

極論すれば「魅力度ランキング」は大都市目線の他者評価
 また、「魅力度ランキング」はあくまで外からみた魅力度を図ったものであることもしっかりと理解すべきです。
 魅力度ランキング最下位の茨城県民が、住み心地が良いと感じていることが何よりの証明です。東洋経済が発表している「住みよさランキング2016」では、茨城県の守谷市が全国11位、つくば市が12位に入っています。こうした住み心地の良さは、あくまでも居住者にとっての「魅力」であれり、必ずしも他地域の人たちへの魅力のアピールにはつながらないのです。居住者にとってではなく、他地域の人たちにとって訪れるのに魅力的な土地かどうかが「魅力度ランキング」では測られているのです。
 また、魅力度ランキングのアンケート対象者が首都圏や近畿圏など大都市圏に多いことが、ランキングに関係していることも見逃してはなりません。大都市目線の魅力度ランキングなのです。
 魅力度を測る対象が大都市圏居住者であることから、あえてランキングを上げようとするならば、これら大都市圏の居住者にいかにアピールするかが重要となります。この点、茨城県は当に灯台もと暗しの存在になっています。東京大都市圏への近接性は、これらの地域にある名勝や旧跡を訪れる機会は多いものの、魅力的な地域としてはあまり意識されず、観光の醍甜味である「あらたな魅力発見」をするには、あまりにも身近すぎるといえるのではないでしょうか。
 大都市目線の「魅力度ランキング」を上げようとすると、大都市の人々に気に入ってもらう必要があります。「地域の魅力」とは、何かという原点に戻って考えるならば、果たして現にそこに住む住民ではなく、他地域の人々におもねる地域づくりが、地域の魅力を高めることに通じるのでしょうか。
 地域の魅力を高めるために、あえて「他人の目」を気にすることは重要です。しかし、それだけでは本質的な地方創生につながるかは大いに疑問です。

 魅力度ランキングが5年連続で47位になってしまったことは非常に残念であり、食や観光、暮らしやすさといった茨城県の魅力が、まだまだ全国に伝わっていないのがその大きな要因です。
 結果については、真摯に受け止め、新たな発想や切り口でPRできる魅力の掘り起こしや、ネットメディア等をフル活用した情報発信の強化に取り組み、順位を上げられるよう努力してまいります。
 さらに、県民として本当に住みやすい茨城をつくってまいります。