茨城県庁舎
 茨城県内における映画やテレビドラマなどの撮影の窓口となっている「いばらきフィルムコミッション(FC)」が、創設から15年を迎えました。今年3月までの支援作品は累計5374に上り、全国一の規模です。茨城県は、首都圏に近い、気候が温暖で雨も少なく、四季を通して撮影が可能である。歴史的建造物、農村の姿、近未来的情景と、どんな風景にも対応できるというのが絶対の強みです。
 そして公共施設での撮影にも寛容。他の公共施設やホテル、オフィスビル…など、さまざまな撮影に使われているのが、実は県庁舎です。重厚感のある旧県庁の県三の丸庁舎は、ドラマに映画に引っ張りだこ。土日になれば笠原の現県庁や県議会棟も頻繁に撮影が入ります。ドラマ「相棒」「グ・ラ・メ!〜総理の料理番」、映画「図書館戦争」など、年間30以上に上ります。県議会棟の正面階段は、首相官邸としてよく登場します。さすがに、ドローン撮影などはできませんが、平日は職員が仕事をしている部屋での撮影が可能。「スタジオに作るのと違って、官公庁の部屋のリアル感が出る」と、制作会社からは高評価をいただいています。
 羽田や成田では難しい空港の撮影も茨城空港は相談にのるなど、極力要望に応えようとする姿勢が撮影関係者の間で広まっています。
 昨年度の支援作品は526本、撮影日数は延べ1147日、経済波及効果は過去最高の推計約6億2000万円に上りました。ほぼ毎日、3組以上の撮影隊が茨城に入っていることになります。
旧県庁舎(三の丸庁舎)
 いばらきフィルムコミッションは、設立の目的を十分に達成していると評価します。その上で、3点の提案をしたと思います。

 その第1は、単なるロケ隊を誘致するだけではなく、茨城の魅力を発信する場として充実するということです。茨城を舞台に撮影いていることを、視聴者、鑑賞者にしっかりと理解していただけるような仕組みを作るべきです。単に制作協力・いばらきフィルムコミッションとエンドロールに小さく紹介されるだけではダメです。明確な契約を交わし、表示するロゴなども統一し分かりやすく訴求すべきです。出演するキャストにも、茨城の素晴らしさを訴えるポスターやネット媒体などにも登場していただけるよう交渉すべきです。

 その第2は、フィルムコミッションを一段進めて、ロケツーリズムにつなげていく必要性です。映画やアニメの撮影地やモデルとなった舞台を巡る「聖地巡礼」が話題となっています。11月16日、茨城県は映画撮影などに使われた場所を観光誘客に生かす「ロケツーリズム」の研修会を、県内市町村のフィルムコミッション関係者を招き開催しました。水戸市内で開かれた県フィルムコミッション等協議会には、ロケ地情報誌「ロケーションジャパン」を発行しロケツーリズムに通じた「地域活性プランニング」の社員らが講演しました。
 山田実希編集長は「ロケ実績ナンバーワンの茨城は関係者に知られている。あとは活用するだけ」と指摘。放映中の民放ドラマの撮影地や、大ヒットアニメ映画「君の名は。」の舞台となった岐阜県飛騨市、人気朝ドラ「あまちゃん」の舞台となった岩手県久慈市など、まちを挙げた支援やもてなしの工夫が誘客に結び付いている事例を挙げました。山田編集長は「ロケツーリズムとは風景や食を堪能し、もてなしに触れ、地域のファンになること。ひよっこ(の放映)が終わって終わりではなく、別の大きい作品が来るかもしれない。継続してほしい」と呼び掛けました。作品の利活用には権利関係の処理が必要となる。「規約書でルールを明確化し、書面化してほしい」とトラブルを避ける方策を伝授しました(地元紙茨城新聞の記事より引用)。
 映画やドラマによって茨城の素晴らしい風景が紹介され、交流人口の拡大につながるためには、どうすれば良いのか、茨城県のフィルムコミッション担当者の意識改革、一層のレベルアップが不可欠です。
 また、こうした取り組みの一環として、海外の撮影隊の誘致にも力を入れるべきです。映画大国である台湾、香港、インドなど茨城空港という最強のツールを活かした戦略を展開すべきです。
さらには、次に述べる「映画・映像創造特区」の実現を図るべきです。

ワープステーション江戸(つくばみらい市)
 第3の提案が「映画・映像創造特区」です。映画やドラマの撮影の際の様々な届け出や制限を緩和し、煩瑣な申請や交渉の窓口をワンスットプサービス化しようとするものです。
 具体的には道路使用の許可、爆発物や燃焼物の使用許可、航空機やドローンの飛行許可、調理や料理に関する許可、国立公園や国定公園、天然記念物などに関する許可など、一定のルールに即して規制を緩和するものです。先の海外からの撮影隊誘致に関しては、入国査証や就労に関する制限の緩和などが必要です。
 実は、こうした映画撮影に関する特区は、札幌市がすでに「札幌コンテンツ特区」として申請した経緯があります。しかし、残念ながら、札幌市は国からの規制緩和を受けることができず、特区としては認められましたが、平成28年に特区を辞退してしまいました。
 札幌での失敗を茨城で是非実現できるよう、大井川知事に強く要望したいと考えています。
 さらに、映画づくりを支援する立場からも、こうした提案を具体的に展開したいと行動しています。映画「ある町の高い煙突」を応援する会の取り組みについては、別のブログに書きたいと思います。