LINEでの活用イメージ 12月19日、政府は神奈川県座間市のアパートで9人の遺体が見つかった事件に関する関係閣僚会議を開き、再発防止策を取りまとめました。自殺やいじめなど若者・子どものさまざまな悩みをより広く受け止め、問題の深刻化を未然に防ぐ観点から、インターネット交流サイト(SNS)上の相談窓口整備や、自殺をそそのかす書き込みなどの削除徹底に向けたサイバーパトロールの強化などが盛り込まれました。特にSNSの相談体制の早期整備をリードしてきた公明党の主張が反映されました。
 従来、自殺予防の相談窓口は電話が中心でしたが、若者に欠かせないコミュニケーション手段のSNSを積極的に活用することになります。文部科学省はSNSやアプリを通じた児童生徒の相談窓口整備のための補助事業として、都道府県や政令指定都市25自治体に対し、上限1000万円の補助を検討しています。厚生労働省は、SNS相談事業を委託する民間事業者の公募を年内にも開始する方針です。
 また、自殺に誘い込むような書き込みなどネット上の有害情報を削除するため、来年1月から民間団体にサイバーパトロールを依頼します。警察庁が違法情報などの排除を委託している「インターネット・ホットラインセンター」(IHC)の業務範囲にも、人を自殺に勧誘する情報を新たに追加します。

■公明提案で政府が検討
 公明党は、「座間事件」が今年10月に発覚する以前から、若者のいじめや自殺願望の早期発見・対応に向け、SNSを活用した相談体制の構築を提案し、一貫して強力に推進してきました。
 今年3月に、浮島智子衆院議員が文部科学相への要請を行い、4月に吉田宣弘衆院議員(当時)が衆院文科委員会で取り上げたことなどがきっかけとなり、文科省が7月から有識者会議を設置し具体的な検討を協議してきました。今年11月には党文科部会が安倍晋三首相に対しても申し入れを行い、首相は検討する考えを示していました。
 長野県など地方自治体でも、公明党県議の推進でSNSの民間事業者(LINE)と連携した取り組みが進められています。
■LINEとトラコス、「全国SNSカウンセリング協議会」を設立
 12月6日、LINEとトランスコスモスは、「全国SNSカウンセリング協議会」を設立しました。SNS関連事業者、電話相談事業者、カウンセラー、研究機関、教員らが幅広く連携し、(1)SNS相談員のスキル向上の研修、(2)SNS相談のノウハウの研究、(3)高品質なSNS相談の普及、などを目的に活動します。
 LINEは、CSR活動の一環として、滋賀県大津市と「LINEを利用した子どものいじめ防止対策に関する連携協定」、長野県と「LINEを利用した子どものいじめ・自殺対策に関する連携協定」を締結。LINEを利用した相談窓口の開設や、今後の相談事業の検討に取り組んでいます。また、トランスコスモスはこれらの事業に参画し、システムの提供や数値解析などを行っています。
 これまでの知見を生かし、SNSを利用した相談窓口の開設や情報発信により、自殺やいじめなどの防止対策を実施すべく、SNSカウンセリング協議会を設立することにしました。
 両社によると、今の若者は電話を使わずSNSを活用していますが、既存の相談窓口の多くはいまだに電話であり、若者と相談窓口のコミュニケーションにミスマッチが起きています。また、SNSでの自殺志願者の事件に関連し、国が「SNS自殺相談」を進めるという方針を重視し、SNSを活用した相談窓口の整備とその品質向上が急務になっていると説明しています。

■LINE公共政策室長 江口清貴氏のコメント
 「若年層のコミュニケーション手段も電話や対面などから、ネットを通じたSNSへと大きく変容しています。そこで、電話や対面だけでなく若年層に身近なSNSを利用した各種相談窓口を作り、相談をしやすくする事により、いじめや自殺等を未然に防げるのではと考えました。すでに、長野県等でLINEを用いた相談を試みており、想像をはるかに超えた高いニーズが証明されると同時に、解決すべき課題も見えてきました。テキストを用い相談を受け、その問題を解決に導くためには、テキストでの相談手法の基礎研究、相談員の育成、対応能力向上が重要で不可欠です。そのため、関係者が一丸となって英知を結集する必要があると考え、本協議会を起草しました。この協議会を通じて、全国の一人で悩む若者が減ることを目指してまいります」
全国SNSカウンセリング協議会 https://www.trans-cosmos.co.jp/company/news/171206.html

■ヤフー、グーグルなど検索7社、自殺対策に向け連携を強化
 12月18日、「検索サービスの健全な発展に関する研究会」は、座間市の事件を受けて臨時会合を開催しました。自殺予防に関する各社の取り組みを共有し、同様の事件の再発防止に向けて連携を強化すると発表しました。
 この研究会は、検索サービスを提供する事業者間の情報・知見などを共有し、検索サービスの健全な発展に寄与するための諸提案と、業界内に発信することを目的として2011年9月に発足しました。
 臨時会合では、「死にたい」「自殺したい」などの自殺願望と関連するキーワードに対して相談機関の連絡先を表示する取り組みをはじめ、各社で自殺予防のために実施してきた取り組み等について情報共有を行いました。また、自殺対策に取り組む厚生労働省、総務省、法務省、経済産業省も参加し、事業者と意見交換も行われました。厚生労働省からは、これまでの電話による相談窓口だけでなく、メールやSNSによる相談を受け付けるための窓口を準備していることが報告されました。
 参加・賛同事業者は、NTTドコモ(dメニュー)、NTTレゾナント(goo)、グーグル(Google)、ニフティ(@nifty)、日本マイクロソフト(Bing)、ビッグローブ(BIGLOBE)、ヤフー(Yahoo!JAPAN)。また、厚生労働省、総務省、法務省、文部科学省、経済産業省が協力しています。
検索サービスの健全な発展に関する研究会 https://about.yahoo.co.jp/pr/release/2017/12/18a/