■私立高の授業料/20年度までに実現明記/年収590万円未満の世帯
12月8日、政府が2020年に向けて進める政策をまとめた「新しい経済政策パッケージ」が閣議決定されました。このパッケージには、経済的な事情にかかわらず、希望すれば誰もが必要な教育を受けられる社会の実現をめざし、公明党が、一貫して訴えてきた幼児教育や私立高校の無償化などが盛り込まれ、教育費の負担軽減を大きく前進させる内容となっています。
高校などへの進学率は99%近くに上るものの、多くの世帯で授業料が実質無償化されている公立を希望してもかなわず、さまざまな事情から、経済的な負担の重い私立に通うケースは少なくありません。こうした公私間格差の是正へ、公明党が先の衆院選で公約に掲げ、強く主張したのが私立高校授業料の実質無償化です。政府の新しい経済政策パッケージに、2020年度までに「年収590万円未満世帯を対象とした私立高校授業料の実質無償化を実現する」と明記されました。
年間で約640億円と試算される費用について、政府は、消費税率引き上げによる増収分の使途変更で生み出される財源に加え、「政府全体として安定的な財源を確保」することで捻出していく方針です。
高校の授業料は、年収約910万円未満の世帯を対象に、少なくとも公立高校授業料相当分(年間11万8800円)の国の就学支援金が助成されており、公立ならば、すでに授業料は実質無償化されています。しかし、それだけでは全国平均で年間約39万3524円(16年度)に上る私立の授業料を賄うことはできず、子育て世帯の大きな負担となっています。
そこで、今回、年収590万円未満の世帯を対象に、就学支援金の上限額を私立の授業料相当額まで引き上げることで、実質無償化します。全国の私立高校に通う約120万人の約4割に当たる約50万人が対象になります。
■各自治体で対象拡大も
私立高校の授業料を巡っては、都議会公明党が主導し今年度から年収約760万円未満の世帯で実質無償化している東京都をはじめ、多くの自治体で独自の取り組みを行っています。私立高無償化のために国の就学支援金が拡充されると、自治体の費用負担を軽減することが可能になります。
公明党は、その分を各自治体が地域の実情に応じて、無償化のさらなる対象拡大をはじめとする教育費の負担軽減など有意義な形で活用していけるよう、今後、国会議員と地方議員のネットワークの力を生かして取り組みます。
■幼児教育の無償化も大きく前進
「新しい経済政策パッケージ」では、3〜5歳児について、「全ての子供たちの幼稚園、保育所、認定こども園の費用を無償化する」と表明。0〜2歳児は「当面、住民税非課税世帯を対象として無償化を進める」としています。
就学前の障がい児の発達支援(いわゆる障害児通園施設)についても、公明党の主張を受け「併せて無償化を進めていく」と明記しました。
これらの無償化を、2019年4月から一部スタートさせ、20年4月から全面的に実施することとしています。
幼稚園、保育所、認定こども園以外の保育サービスをどこまで無償化対象にするかなどについては、「専門家の声も反映する検討の場を設け、現場及び関係者の声に丁寧に耳を傾けつつ、保育の必要性及び公平性の観点から、来年夏までに結論を出す」としました。
また、0〜2歳児保育のさらなる支援については、引き続き「安定財源の確保と併せて、検討する」との方針を示しました。
人工呼吸器などの管理が必要な医療的ケア児に対しては、看護師の配置・派遣によって受け入れを支援するモデル事業を一層拡充するとともに、医療行為の提供のあり方について議論を深めながら「改善を図る」としました。
■待機解消へ20年度末までに「32万人分」
パッケージでは、幼児教育の無償化とともに、保育所などの待機児童の解消を進める方針も強く打ち出しました。19年度から無償化が一部開始することも見据え、少しでも多くの保育の受け皿を確保できるよう、18年度から5年間で32万人分を整備する「子育て安心プラン」を前倒しで実施し、20年度末までに実現するとしています。既に、13年度から17年度末までで、約59・3万人分(見込み、企業主導型保育も含む)の受け皿が拡大しています。
保育の受け皿確保には、担い手となる保育士の確保が欠かせません。処遇改善に向けて、今年度の人事院勧告に伴う賃金引き上げに加え、19年4月からさらに1%(月3000円相当)の賃金引き上げを行うことにしています。
■授業料の減免、給付奨学金など大学教育の負担軽減
政府の「新しい経済政策パッケージ」では、公明党の一貫した主張に沿って、「貧困の連鎖を断ち切り、格差の固定化を防ぐため、どんなに貧しい家庭に育っても、意欲さえあれば専修学校、大学に進学できる社会へと改革する」と明記。大学などの高等教育について、2020年4月から「所得が低い家庭の子供たち、真に必要な子供たちに限って」無償化を実現する方針を明らかにしました。
これは、最終学歴によって生涯賃金に差があることなどを踏まえたものです。
パッケージに明記された無償化は、これまで公明党が進めてきた授業料の減免の拡充と、公明党の長年の訴えで今年度から創設された給付型奨学金の支給額の大幅増額によって実現します。
授業料の減免は、住民税非課税世帯を対象に、国立大学に通う場合は授業料を免除し、私立の場合は、平均授業料を勘案した一定額を上乗せします。給付型奨学金は、「学生が学業に専念できるようにするため、学生生活を送るのに必要な生活費を賄えるような措置」を講じます。
公明党の指摘を受け、入学金の免除(国立大学の額が上限)や在学中に家計が急変した学生への対応も行われます。全体として支援の谷間が生じることがないよう、住民税非課税世帯に準ずる世帯であっても「非課税世帯の子供たちに対する支援措置に準じた支援を段階的に行い、給付額の段差をなだらかにする」ことになります。
支援対象者の要件も、「給付型」創設に向けた議論における公明党の訴えを反映し、高校在学時の成績だけで判断せず、本人の学習意欲を確認します。進学後については、単位数の取得状況や平均成績、処分などに応じて支援を見直します。
大学などの無償化は、まだ定まっていない部分もあることから、「詳細部分については、検討を継続し、来年夏までに一定の結論を得る」ことになります。
また、塾などに通えず進学する学力が不足するといったことがないよう、生活困窮者自立支援の「子どもの学習支援事業」について、中退者を含む高校生世代への取り組みを強化します。さらに「社会的養護を必要とする子どもや生活保護世帯の子どもの大学進学を後押し」していきます。いずれも公明党の提案を踏まえたものです。