福島県内の避難先
 12月20日、日立市は日本原子力発電東海第2原発の過酷事故を想定した広域避難計画の素案をまとめました。
 小学校区単位の地区ごとに福島県内17市町村の避難先が割り振りました。住民は設定された4つのルートから、最初に福島県内の避難中継所を目指します。中継所では、福島県の各市町村内の避難所を指定することになります。
 半径5キロ圏内(PAZ)からの避難ルートは複数化されました。
 日立市では、来年1月中旬から市内全23地区で住民説明会を開いた上で、年度内に計画を策定する方針です。
 日立市は全域が東海第2から半径30キロ圏内(UPZ圏内)となります。人口は約18万人で、人口は30キロ圏内の14市町村で水戸市に次ぐ規模です。
 素案では、8月に福島県内17市町村と締結した避難協定を踏まえ、小学校区単位に設けられた全23地区ごとに避難する市町村が割り当てられ、避難先で実際の避難所の指定を受ける避難中継所を明記しています。
 避難は原則マイカーを利用します。国道6号などの幹線道路から常磐自動車道に入るか、県道で常陸太田市方面に向かい、国道349号を北進して東北自動車道を使うかして福島県内に避難します。学区ごとに4つのルート(日立中央ICから常磐道、日立北ICから常磐道、高萩インターから常磐道、国道349経由で東北道)が設定されました。
 5キロ圏内(PAZ圏内)からは常磐道の日立南太田IC経由に加え、山側道路を利用して日立中央ICに向かうルートも設定されました。
中継所
 地震や津波などとの複合災害については、県が「第2の避難先」に関し他県と協議していることから、福島県内の避難先が被災して受け入れが困難な場合には別の避難先に向かいます。また、避難ルートとなる道路が通行不能になった際に、住民への迅速な情報提供や代替ルートの選定を行う考え方が盛り込まれました。
 具体的に、井手よしひろ県議の居住する金沢学区の場合の避難想定は以下のようになります。「自宅=日立中央IC=常磐道=磐越道=東北道=郡山南IC=中継所(郡山カルチャーパーク)=指定された避難所」ということになります。移動距離は159キロです。

 今回の素案は、単に受け入れ市町村と日立市内の小学校区を組み合わせたに過ぎません。とても、過酷事故に対応できる避難計画ではありません。
 例えば、マイカーで避難できない住民のためのバスや福祉車両の確保の見通しは全く立っていません。避難に支援が必要な在宅の避難行動要支援者への対応も難しい課題として残っています。
 3〜30キロ圏内(UPZ)の住民に対する安定ヨウ素剤の配布場所なども未定のままです。
 そして何よりも日立市内の慢性的な渋滞対策をどう進めるかが最大の課題です。避難ルートも4つ想定されていますが、乗るインターチェンジは違っても全て常磐道を利用することになります。地震などの大規模災害で使えなくなったり、事故で不通になったときのは、全く避難が出来なくなります。
 日立市だけの避難計画では辻褄が合っているかもしれませんが、より広域にみてみると矛盾はさらに大きくなります。例えば、高萩市は、日立より東海第2原発より遠方にあるにもかかわらず、避難先はいわき市です。国道349を使って常陸太田市や那珂市の住民も避難することになるでしょう。狭隘な国道に避難車両が殺到した場合、どのような状況になるか、避難が困難なことは火を見るより明らかです。
 実効性ある避難計画をつくるためには、高速道路をもう一本つくるほどの社会資本の拡充が必要です。さもなければ、東海第2原発を再稼働させず廃炉にするしか選択はありません。

参考資料

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