休眠預金等活用法ポスター
 1月1日、預金残高がありながら長期間放置されている「休眠預金」を、民間の公益活動に活用するための休眠預金活用法が全面施行されました。毎年発生している休眠預金を使うことで、行政の手が届かない社会的な課題に、きめ細かく対応できるようになると期待されています。
 休眠預金とは、預金者が亡くなったり転居などに伴って、10年以上放置され、連絡が付かない預金を指す。毎年、新たに約1000万口の休眠口座が発生し、700億円程度が銀行の収入として計上されています。出入金などの取り引きがないまま9年以上がたち、1万円以上の口座残高がある預金者には金融機関から個別に通知されます。
 休眠預金活用法は、超党派による議員立法として2016年12月に成立しました。休眠預金を使って、福祉や教育など公益性の高い取り組みを支援することで、共助社会の担い手育成をめざしています。
 活用するのは、2009年1月1日以降に最後の取り引きがあってから、10年以上放置されている口座です。2019年1月1日時点から発生する休眠預金は、既存の預金保険機構に移管した上で、国が指定・監督する指定活用団体に資金として交付されます。その後、指定活用団体は、公募で選んだ資金分配団体に助成・貸付を行う仕組みです。現場で活動するNPO法人などに対し助成・貸付・出資を行うのは、この資金分配団体となります。実際には、19年秋ごろにNPO法人などに資金が届くとみられます。
 休眠預金となった後でも、預金者が銀行などに払い戻しを請求すれば、預金保険機構から銀行などを通じ、元本とそれまでの利息分も含め返還されます。預金者の権利は十分に守られます。
 休眠預金の活用に際しては、透明性と公平性の確保が最も重要となります。現在、休眠預金活用法に基づく審議会で、活用に関する基本方針の策定に向けて議論が進んでいます。活用の基本原則や指定活用団体が守るべきルールなどを含め、今年3月までに取りまとめる予定です。
 休眠預金で後押しする団体の活動分野は(1)子どもや若者への支援(2)日常生活などを営む上で困難を有する者の支援(3)地域活性化などへの支援――の三つ。社会の変化に伴う新たな課題への対応も視野に、対象事業を幅広くしています。
 現時点では、「児童養護施設入所者の進学支援と、退所者への共同住宅の提供」「障がい者の自立と社会参加を支援するためのベーカリー&カフェの運営」「高齢者の介護予防ストレッチの促進」などの活動がイメージされています。
 福島市の県立医科大学付属病院で、がん治療などを受ける子どもと家族の滞在施設を運営する認定NPO法人「パンダハウスを育てる会」の山本佳子理事長は、休眠預金の活用について、「法的援助がない分野に取り組むNPOにとって、新たな支援の窓口が開かれることになり、とても貴重だ。多くの課題に社会の目が向けられる機会にもなる」と評価しています。

公明党が法整備を一貫してリード
 公明党は、2014年1月から休眠預金の活用について検討を開始。2014年11月に検討プロジェクトチームを立ち上げ、NPO法人の現場関係者らからヒアリングを実施するなど、精力的に議論を重ねてきました。
 一方、超党派議員連盟では、公明党が提案した「指定活用団体→資金分配団体→現場の団体」という活用スキームを反映した、自民・公明両党の有志による骨子案をベースに協議。2016年12月の法律成立まで、一貫して公明党が議論を主導してきました。

英国、ネットで検索可能
 休眠預金の活用は、海外の先進事例を参考に検討されてきました。
 英国では2012年4月から、15年間取り引きのない預金について、協同組合銀行が管理する請求基金に移管して活用しています。
 現在は(1)低所得者などへの住宅提供(2)課題解決に向けた地域コミュニティーの形成(3)社会的課題が顕在化する前への対応――の3テーマに取り組む団体などに投資を行っています。
 さらに、預金者保護の観点から、インターネットを通じて休眠預金をチェックできる検索システムを提供。休眠口座を簡易に探せるようにすることで、預金の返還に力を入れています。
 2001年に法律が成立し、いち早く活用を始めたアイルランドでは、15年間取り引きのない預金を国立財務管理局の休眠口座基金に移管。経済的・社会的弱者への支援、教育支援、障がい者への支援の3分野で活用しています。