農産物の輸出 1月12日、農水省は昨年1〜11月の農林水産物、食品の輸出額が前年同期比6.8%増の7158億円だと公表しました。これまでの最高額だった2016年の年間実績7502億円を上回る勢いで、来月上旬にも発表される2017年の通年実績は、初の8000億円台が期待されています。
 農産物の輸出のけん引役は牛肉です。2001年の牛海綿状脳症(BSE)問題で中断した台湾への輸出が2017年9月に解禁されたことを追い風に、1〜11月の輸出額は前年同期比42.2%増の約162億円となりました。また、健康志向の高まりを背景に、緑茶は前年同期比26.3%増の約130億円。農産物の中で最も伸びたイチゴは前年同期比59%増の約15億円となりました。
 政府は農林水産物と食品の輸出額を2019年に「1兆円」まで増やす目標を掲げています。目標達成のカギは、各国の輸入規制を、どれだけ緩和・撤廃できるかにあります。
 2011年の東京電力福島第1原発事故後、54カ国・地域が日本産品の輸入を規制していましたが、政府や自治体の取り組みの結果、現在までに26カ国が規制を完全撤廃。昨年12月には欧州連合(EU)が、福島県産米を含む10県の農水産品の一部または全ての規制を対象から除外。放射性物質に関わる検査証明書の添付が不要となり、煩雑な手続きが省けるようになりました。
 農水省輸出促進課は「日本産品輸出の機運が高まっている。特にEUが福島県産の安全性を認識したことは、地元にとって“大きな力”だ」と強調します。
 全国農業協同組合連合会(JA全農)は1月12日、5億人の利用者がいるといわれる、中国のネット通販最大手のサイトで、日本産米の販売を始めたと発表しました。巨大な中国市場に対する関係者の期待は大きくなっています。一方で、中国では日本の一部産地に対して規制が続いており、規制の緩和・撤廃に向けた政府間協議の進展が期待されています。
茨城県の常陸牛の輸出
茨城県産品の海外輸出は2014年から3年間で8倍以上に急拡大
 茨城県でも農産物の海外輸出に力を入れています。特に、日本貿易振興機構(ジェトロ)の「茨城貿易情報センター(ジェトロ茨城)」は、茨城県産品の海外輸出に大きな役割を果たしています。2014年6月、ジェトロ茨城は国内40番目の貿易センターとして水戸市内に設立されました。ジェトロ茨城が最初に手掛けたのは、常陸牛の輸出でした。東南アジア地域では富裕層を中心に高品質の和牛や果物などの人気が高まっていることに着目。和牛の輸入を解禁したベトナムへの売り込みに成功し、その後の継続的な輸出の足掛かりをつくりました。常陸牛の輸出量は、2014年度の0.4トンから2015年度に1.8トン、2016年度は3.4トンと、3年間で8倍以上に急増しました。
 また、県内青果物の輸出量は、2014年度の2トンから2015年度は41トン、2016年には179トンまで急激に伸びました。
 主要品目のメロンは、2015年度に4.1トンから2016年度に13.2トンと3倍増。ナシは2014年度の0.3トンから15年度に8.1トンに増加しました。輸出する産地や輸出先も年々増えていまする。

みずほの村市場とJALの連携
いばらきの高級果物をタイへ輸出、“みずほの村市場”の挑戦
 民間事業者も県産品の海外輸出の大きな原動力となっています。農産物直売所「みずほの村市場」を運営する農業法人みずほ(つくば市、長谷川久夫社長)は、日本航空(JAL)と業務提携し、果物の輸出拡大に向けた事業を強化します。1月下旬にもJAL便でタイに空輸し、「みずほの村市場バンコク店」で収穫した翌日には販売できる体制を整えます。鮮度の良さで勝負し、日本産果物の高品質をアピールしていく戦略です。
 この事業は、朝どりの果物を昼までに成田空港に搬入、深夜にバンコクに到着するJAL便で空輸する仕組みです。JALグループ関連会社が通関手続きやタイでの搬送を行うことで、迅速化を図ります。
 みずほの村市場は、4年前から羽田空港からの深夜便を使ってタイに輸出を行っています。その第一便の出荷の際は、井手よしひろ県議も、タイ向けのいちごのPR動画を作成したり、海外輸出に挑戦するいちご農家を紹介するなど、この取り組みを全面的に支援しました。今回の事業では、茨城県を含む全国13県の農産品を取り扱うまでに成長しました。品目はイチゴやメロン、サクランボ、ブドウ、モモ、リンゴなどで、いずれも各品目の最高級ブランドを取り扱っています。みずほの村市場では、日本国内の小売価格の約3倍で販売します。富裕層をターゲットとしていますが、商品ラインアップの拡大により客層の広がりも期待されます。
 タイの輸入果物の市場規模約400億円、その中で、日本産のシェアは約1%にとどまっています。みずほの村市場では、ノウハウを共有し、鮮度の高い高品質な果物を提供できる仕組みをつくることで、タイでのシェア拡大を目論みます。今後10年間に前年比2桁以上の成長を目指しています。タイ以外の新たな国・地域への出店も検討しており、香港が候補地に挙がっています。
 さらに、1月15日には、成田空港内で訪日外国人客(インバウンド)向けに日本産果物の常設販売をスタートさせました。タイの店舗と同様の果物を扱い、購入のきっかけづくりの場としていく。将来的には訪日客などを対象に、日本国内の農園を訪れて収穫体験を行うグリーンツーリズムにも着手する考えで、果物を観光促進に結び付ける計画です。


茨城の美味しい苺をタイの皆さんに食べていただくプロジェクトを支援するために、2014年作成した動画です。
2014年1月24日からのタイ・バンコクで販売するために、1月22日、筑波のいちご農家で出荷作業が行われました。
摘み取りから、選別、箱詰め、真心込めて行っています。その模様を動画にまとめました。
2014年1月22日公開