15〜49歳人口10万人当たりの産婦人科医師数 茨城県の少子化対策、人口減少対策で大きなポイントとなるのが、産婦人科医や小児科医の数です。それらの診療科の医師の過不足度合いを、医師の数を「15〜49歳女性人口比」で、厚生労働省の「医師・歯科医師・薬剤師調査」の最新版の公開値をもとに比較してみたいと思います。
 産婦人科・産科について、その資格を有する主たる医師数(その診療科のみの医師と、複数の診療科に従事しているが主には対象となる診療科に従事している医師数)を、それぞれの都道府県別で、産婦人科・産科は「15〜49歳女性人口10万人比」で算出したのが右のグラフです。
 産婦人科・産科では東京都は51.5人。これは産婦人科・産科を利用する可能性が高い15〜49歳女性10万人あたり、該当医師は51.5人いることになります。逆算すれば人口約1942人あたり産婦人科・産科の医師が1人いるという計算になります。
 該当人口数比率で産婦人科・産科医が一番多い都道府県は鳥取県です。次いで秋田県、和歌山県が続きます。少ないのは埼玉県で28.9人となり、2倍強の開きがあります。
 茨城県は38.8人で全国38位となっています。厚生労働省の2016年12月末現在の統計によると、県内で開業・勤務する産婦人科医は217人。市町村別では、常陸太田、那珂、鉾田など計20市町村で産婦人科医の人数がゼロとなっています。特に、県北地域ではその中心の日立市でも5名と極端に産科・産婦人科医が不足しています。
茨城県内の市町村別産科・産婦人科医師数
 深刻化する産婦人科医不足の解消に向け、茨城県内の自治体による独自の取り組みが出始めています。
 水戸市は2018年度、産婦人科と小児科を対象に、診療所など新たな医療機関の開業資金を支援する計画を打ち出します。市内で一定期間開業することが条件で、1施設程度の開業を想定する。市の3カ年実施計画の中で、単年度事業として盛り込みました。
 このほか、産婦人科や小児科、救急科の医師として就業を目指す医学生に、修学資金支援も行う計画です。開業支援と同様、研修後は市内で勤務することを条件に返済を免除します。年に2人程度を支援する方針です。
 水戸市内で診療を行っている産婦人科は、2017年8日現在で、公的病院を含め11施設にあります。ただ、過去20年間、新規開業はまったくありません。この3年間で4施設が閉院、または診療を休止しています。水戸市内で開業医として勤務する産婦人科医の平均年齢は63.7歳。あと10年持たない病院も多いと指摘されています。
 水戸市内の病院で、産婦人科医療の中核を担っているのが日本赤十字水戸病院です。現在、9名の医師を抱えています。こうした公的病院が水戸市のみではなく、県北地域全体の産婦人科医療を支えています。
 産婦人科医師の確保は、新規の医師確保と既存の公的病院の医師確保の両面の政策が不可欠です。