東海第2原発
 今週、東海第2原発を巡る気になる新聞記事が、2月21日の読売新聞社会面と22日の朝日新聞地方版に掲載されました。
 日本原子力発電(原電)は、今年11月28日運転開始から40年となる東海第2原発について、20年の運転延長を原子力規制委員会に申請しています。東海第2原発を取り巻く環境は非常に厳しいものがあります。半径30キロ圏内に96万人が暮らし、県庁所在地の水戸市もその中に位置しています。首都圏に立地するだけに、重大事故が起これば首都東京にまで影響を及ぼしかねず、日本の政治、経済の中枢に関わることになります。福島の現実を踏まえれば、いかに安全体制を強化しても、あのような事故は二度と起こらないという保証は全くありません。事故は起こるものという考えかたを肝に銘じるべきです。
読売新聞社会面2018/2/21
 こうした現状の上に、21日付の読売新聞は、原電の準備不足を指摘して、原子力規制員会の審査が間に合わず、結果的に廃炉となる可能性を指摘したものです。読売新聞によると、原子力規制委員会はと20日、「(運転延長に必要な審査の手続きが)終わる見通しが立たない」との見解を明らかにしといいます。日本原電による資料の提出が遅れているためで、「東海第2原発は時間切れで廃炉に追い込まれる可能性が出てきた」と報道しています。
 福島第1原発事故後に改正された原子炉等規制法では、原発の運転期間を原則40年と定めています。その上で、例外的に1度だけ最長20年間の運転延長を認めています。運転延長を認めてるためには、新たな規制基準適合審査と各設備の詳細な設計をまとめた工事計画、さらに運転延長の認可の3つの審査を11月までに終える必要があります。期限切れまで9か月を切った現在、東海第2原発はいずれも完了していません。
 2月20日には、3種類の手続きのうち安全対策の詳細をまとめた「工事計画」の審査会合がありました。規制委事務局が審査の現状に触れ、担当者は、日本原電から資料が6割程度しか提出されていない点を説明し、「本当に間に合うのか不安を持ち始めている」と述べたと読売新聞は伝えました。
 さらに、読売新聞によると、これまで規制委に運転延長を認められた原発は関西電力の3基だけ。東海第二原発は3基と原子炉の型が違う「沸騰水型」で、規制委事務局の間では「先例がなく、審査に時間がかかる」と指摘しています。

朝日新聞茨城版2018/2/22
 2月22日付の朝日新聞は、原子力安全協定の範囲拡大の問題を報じました。茨城県と東海村が日本原電が結ぶ原子力安全協定には、法的拘束力はありません。しかし、原子力施設の新増設、変更などを行う場合、事前に県や村の了解を得るものとしているほか、安全面から立ち入り調査や運転の停止、改善を求めることができとしています。事前了解はそうした点を踏まえての紳士協定的な位置付けとなりますが、この協定を無視して原発を再稼働させることは実態的にできません。
 現在、この安全協定に30キロ圏内の周辺5市(日立市、常陸太田市、那珂市、ひたちなか市、日立市)に拡大する協議を、日本原電と東海村を含めた6市村が行っています。
 朝日新聞は、6市村がつくる首長懇談会が2月20日行われ、日本原電が提案した新たな原子力安全協定の修正案について、おおむね了承することで一致。今後は条文の一部修正を原電に再び求め、今年度内の協定締結をめざすことを伝えました。
 原電は昨年11月、事前了解の権限を「実質的に」周辺5市にも拡大する方針を表明しています。現行の安全協定を改定せず、新たな安全協定を結びたい意向を示し、協定案も提示しています。この新協定を首長懇談会は概ね了承していましたが、事前了解にかかわる権限を明確化するために一部の文言の修正を求めています。
 首長懇が不満を示したのは、協定案原案にある事前了解の部分の表現と朝日新聞は説明しています。原案では、原発の再稼働をする時、6市村が意見を言ったり、安全対策を求めたりする機会を設けることで、事前了解の権限を6市村に「実質的に」担保するとしています。一方、同じ条文のなかで、「いわゆる事前了解に関する事項は規定されていない」という文言もあります。周辺5市に事前了解の権限があるかどうか、逆に言えば再稼働を拒否る"拒否権"があるのか、あいまいな表現となっています。
 原電が昨年末に、首長懇に示した協定の修正案では、「いわゆる事前了解に関する事項は規定されていない」といった文言は削除されました。朝日新聞は「20日の会合で首長らは修正案をおおむね評価したが、条文の文末の表現を少し変えるよう求める方針で一致した」と報道しています。
 新たな安全協定では、6市村は個別に事前了解の権限を与える条文にはなっていないようが、1つの自治体でも明確に再稼働に反対する意思を示せば、再稼働の敷居は非常に高くなると思われます。現行の安全協定の当事者である茨城県も、周辺自治体の意思を無視して、再稼働を認めることは困難になるのではないでしょうか。
 
 井手よしひろ県議ら茨城県議会公明党は、日本原電は高いリスクをかけて東海第2原発の運転延長、再稼働を目指すことより、"廃炉専業事業者"への業態変更などを目指すべきだと強く主張しています。