収量減少や価格下落時など 基準収入の最大8割以上確保
 農家の経営を安定させるため、自然災害などにより売り上げの予期せぬ減少に直面した場合に、その一部を補てんする「収入保険制度」が、来春(2019年)1月からスタートします。
 農林水産省は、基準収入(過去5年間の平均売り上げ)が1000万円の農家が収入保険制度に加入し、毎年の保険料7万2000円と積立金22万50000万円の計29万7000円を支払う場合を試算しています。
 これによると、保険期間の収入が700万円まで減っても、180万円の補てん金が支払われ、880万円を確保、収入がゼロになっても810万円が補償されます。
農家の収入保険制度 制度の仕組みを順に見ていくと、基準収入については、経営規模を拡大する場合や過去の売り上げに上昇傾向がある場合は上方修正され、単価の低い作物に転換する場合は下方修正されます。
 補てん金は、保険金(保険方式)と特約補てん金(積立方式)の組み合わせによって決まり、その上限は基準収入の9割を下回った場合にその下回った額の9割となります。前述の試算は保険料と積立金をそれぞれ複数の選択肢の中から最大補償を選んだもので、収入の減少額にかかわらず、基準収入の8割以上を維持できる仕組みとなっています。
 加入者から徴収した保険料は掛け捨てとなります。積立金は補てんに使われない限り、翌年に繰り越せます。
 収入保険制度の財源には国の補助が入っていため、農家は保険料の50%、積立金の25%の負担で済みます。

対象は全ての農産物。けが、為替差損にも対応
 収入保険制度には、収入減少を補てんする既存の類似制度と比べ、二つの大きな特徴があります。
 一つが、農家経営の全体をカバーするセーフティーネット(安全網)になっている点です。例えば、既存の収入減少影響緩和対策(ナラシ対策)は米、麦、大豆など5品目に限定されていますが、収入保険制度は栽培管理される全ての農産物(精米、荒茶、梅干しなどの簡易な加工品を含む)を対象としています。
 もう一つが、補てんの対象となる収入減少の要因について、自然災害による収量減少はもちろん、農家の経営努力では避けられない価格低下なども幅広く認めている点です。農水省は、けがや病気によって収穫できない、倉庫に保管中の作物が洪水などで水浸しになって売り物にならない、輸出した時の為替変動で売り上げが落ちたといった事例も含まれるとしています。
 ただ、収入保険制度に加入できるのは、収入を正確に把握できる青色申告を行っている農家や農業法人などに限られます。青色申告は、正規の簿記(複式簿記)でなく、現金出納帳などに日々の取引と残高を記帳するだけの「簡易な方式」でも構いません。申請時に青色申告の実績が1年分あれば、加入できます。
参考:農水省の「収入保険のHP」http://www.maff.go.jp/j/keiei/hoken/saigai_hosyo/syu_nosai/