SDGsの詳細
貧困問題の取り組み不可欠、高い視点から最善策議論を
 国連は2015年9月のサミットで、2030年までに達成を目指す、新たな17項目の国際目標・SDGs(Sustainable Development Goals)を採択しました。「誰一人取り残さない」持続可能な世界の実現をめざすSDGsは、気候変動や格差の拡大などの地球的課題に対し、先進国と途上国を問わず、国内政策として取り組むよう求めています。
 SDGsで掲げる17の目標は、一つ一つが互いに関連しており、経済、社会、環境におけるさまざまな課題解決の糸口となります。
 地方自治体にとっても、11番目に掲げられた「住み続けられるまちづくりを」との目標が最も取り組みやすく、ほかの目標も既存の施策に反映しやすいのが特徴です。
 また、企業にとっては、SDGsに基づき環境や社会問題などの解決を事業と結び付けることで、社会的責任を果たすことにつながり、新事業創出の機会にもなります。
 また、既存の政策を評価する切り口として、SDGsを活用することは重要です。なぜ達成しなければならないかを政府、政治家、われわれも含めて、もっと深く理解し、達成に向けた具体的な政策目標を作るというアプローチで臨むべきです。
 例えば、1番の「貧困をなくす」という目標ですが、数値目標までは踏み込めていません。2015年時点の国内の貧困率は15.6%なので、それを半減するとなれば北欧並みの7.8%に下げなければなりません。それには所得の格差をなくし、所得を全体的に上げる必要があります。最低賃金の引き上げや無年金、低年金者への手当てなど政策の総動員が不可欠です。
 貧困の解決のために、労働、住まい、ジェンダーなどいろいろな課題とリンクしながら取り組むことがSDGsの特徴です。SDGsを国家目標に反映させることは重要で、その視点から政策を組み替えることが重要になります。
 同じことが地方自治体にもいえます。自治体の長・中期の総合計画などにSDGsの視点から具体的な目標を設定すべきです。
 具体的には、大学も含めて全ての学費を今すぐ無料にすることは、かなり困難です。しかし、将来的にめざそうという目標の下であれば、貧困家庭の子が進学できるよう支援するとか、今は予算の制約から優先順位を付けるが、いずれは誰もが行けるようにするという道筋をはっきり示すことが重要です。
 単年度予算の日本では限界がありますが、理想に向けたメルクマール(指標)も明確になるので、SDGsの理念に基づく政策の組み立て方は、非常に有効です。大きな目標に向けて今やるべき最善の策は何が良いかが議論が可能となります。
 地方自治体がSDGsの達成に取り組む際に、持続可能な開発目標という和訳も含めて言葉が分かりづらい欠点があります。地域で「子ども食堂」を運営する一般のボランティアに"SDGs"と言われてもピンとこないかもしれません。しかし、そうした人たちと共感することが大事です。子ども食堂で「地域の余った食材を使うことはSDGsに直結する」といった結び付きができれば、分かりやすくなり、浸透しやすくなるかもしれません。