トークフォーラム
新田次郎の小説 『ある町の高い煙突』の映画化が進んでいます
 新田次郎氏の小説『ある町の高い煙突』の映画化が、今年の年末から来年年明け頃の公開を目指して進められています。
 この映画化に取り組む松村克弥監督や、映画『ある町の高い煙突』を応援する会の原田実能(はらだ みのう)事務局長に、この映画や、大煙突と桜の歴史に対する思いを聞きました。

 さくらのまち日立市の原点 小説『ある町の高い煙突』
ある町の高い煙突 映画「ある町の高い煙突」、2018年春撮影開始。2019年春公開予定。
 明治38(1905)年、買収によって茨城の地に開業した日立鉱山。やがて鉱山の宿命ともいえる煙害が発生。亜硫酸ガスが山を枯らし、農民たちの命である農作物までも奪っていく。
 そこで、立ち上がったのが地元の若者・関根三郎(モデルとなった実際の人物は関右馬允)である。郷士であった名家に生まれ、旧制一高に合格、外交官という夢に向かって進んでいた。しかし、祖父・兵馬が煙害による心労で倒れ、人生が変わる。
 こうして、地元住民たちと日立鉱山との苦闘のドラマが幕を開ける。
試行錯誤の末、1914年、当時としては世界一の高さを誇る155.7mの大煙突を建設し、危機を乗り切るのであった。
 足尾や別子の悲劇がなぜこの日立鉱山では繰り返されなかったのか。
 青年たちの情熱と今日のCSR(企業の社会的責任)の原点といえる実話を基にした力作長篇。
 2018年3月9日、映画制作をキッカケに、絶版となっていた文庫本「ある町の高い煙突」が文春文庫から再版されます。
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エキストラ・オーデション
映画化されていない傑作、当時を生きた人間像を描きたい 松村克弥監督
 映画「ある町の高い煙突」のトークフォーラムやエキストラ・オーディションにたくさんのかたが参加してくださり、日立の皆さんのこの作品、そして大煙突に対する熱い思いを実感しているところです。
 実は私の母は日本鉱業の東京本社でキーパンチャーの仕事をしていたことがあり、まさか自分がこの作品に監督として関わることになるとは・・・。本当に不思議な縁を感じます。
 新田次郎さんの小説では「八甲田山」や「劔(つるぎ)岳」などが映画化されていますが、「ある町の高い煙突」はまだ奇跡的に映画化されていない傑作だと思います。
 非常にドラマチックな作品であり、すばらしい脚本もできています。
 描きたいのは、当時を生きた人たちの人間像。農村に生きる青年たち、鉱山の経営者たちの葛藤。そして最後には両者が手を取り合って煙突をつくるという実話をベースにした奇跡の物語です。
 今年の年末から来春の公開を目指して鋭意作業中です。ぜひ公開を楽しみにしていてください。

大煙突マップでまちあるき
映画「ある町の高い煙突」を応援する会 原田実能事務局長
 映画化の話を監督やプロデューサーから伺ったときに、非常に熱い思いを感じました。私の役割はスポンサー探しや広報活動などがメインですが、映画をきっかけとして、「いいね!」がいっぱいの日立の魅力と魅力をつなげながら、多くの観光客が継続して日立市を訪れてくれるようなまちづくりのカタチを作りたいと考えています。
 角弥太郎さん(小説の加屋淳平のモデル)は、広島県府中市(旧大正村)出身で私と同郷。彼がまちの景観まで考えて植林をしていなければ、今の日立の桜はないと思うと感慨深いです。
 本来であれば煙害の被害者・加害者という相容れない両者が歩み寄り、共存・共栄の精神、そして勇気と忍耐で、まちの存続、発展に寄与したという100年も前のエピソード。
 海や山だけではなく、こうした背景を持つ大煙突や桜があるまちは他にありません。これこそが日立市の誇りなのです。美しさはもちろんですが、私たちが心惹(ひ)かれる、日立の桜の根本にある理念を、この歴史を知らない人たちや大煙突を知らない若い世代、市外のかたを含め、より多くのかたに伝えたい。
 角さんや、あの時代に生きた人たちに恥じないよう、熱意を持って取り組んでいきたいと思っています。