部活道のイメージ
 中学校における部活動について、教員の働き方改革と子ども達の健康面や生活面での負担軽減の両面から様々な議論が喚起されています。
 井手よしひろ県議は、3月19日の県議会予算特別委員会で、中学校での部活動の在り方について教育長に質問しました。特に始業時前の部活動、いわゆる『朝練』について問題にしました。
 中学校での朝練については、そのメリットとして、1.早起きをし朝から運動することで、食欲が増進したり、疲れて夜早く眠ることで、生活リズムが出来る。2.意欲的に朝練をすることで、練習量が増加し、技術面での向上が期待できる。3.毎朝部活のメンバーが規則的に集まることで、チームへの忠誠心や団結力が生まれる、などが考えられます。
 一方、朝練のデメリットとしては、朝が早いため寝不足になりやすい。2.まだ体が起きていない状態で練習をすると、ケガをし易い。3.強制的な朝練だと、ストレスが溜まりその競技が嫌いになったり、逆に技術が後退してしまうなどのデメリットが指摘されています。
 茨城県教育委員会は、昨年3月「朝練習(始業時前練習)については、生徒の健康や生活リズム等に配慮するとともに、生徒や保護者に対して十分な説明と理解を得た上で実施すること」との通達を出しています。
 井手県議は、先の一般質問での「朝練習を行っている学校数が、他県よりも多い」との知事答弁を受けて、教育長の朝練についての所感を訪ねました。
 教育長は、「朝練については、早起きの習慣が付くとか、集中力が高まるといったメリットの他に、逆に、スポーツ障害のリスクが高まるとか、疲労感が高まるといった事例がございます。そういうことにつきましては、現在、検討委員会で検討しておりますが、教育長の所見ということでございますので、お話をさせていただきます。私も教員時代ずっと運動部の顧問をしておりました。生徒が朝練習をしたいと言った時には、認めてやらせてきましたが、顧問として、朝練をやれと言った記憶はございません。様々な理由がございまして、放課後部活動で一緒にいますから、せめて、朝、授業の前は、クラスの生徒達に一緒に過ごしてほしいという思いがございましたので、私としては、生徒とそう接してきました」と所感を述べました。
 その上で、井手県議は、朝練習は試験前の一定期間行わないとか、その計画を生徒や保護者に事前に書面で説明するなどのルール付けが必要だと主張しました。

 他県の動きに目を転じてみると、長野県や滋賀県で朝練を原則禁止とする方針が決まっています。
 長野県では、2014年4月から中学校の運動部の朝練習を、日没が早い冬季などの例外を除いて原則禁じる指針を正式に決めました。長野県教委はその年の1月に指針の素案をまとめ、市町村教委や各校、PTAと意見交換。「朝練は必要」との意見も出たが、県内のほぼすべての中学校で一年中行われている現状は睡眠不足などで生徒の心身の成長を妨げる恐れがあると判断しました。
 滋賀県教育委員会教委は、学校での働き方改革の方針をまとめ、1月31日に発表しました。多忙さが指摘される教員の労働時間を抑えるため、平日は午後7時までの勤務を原則とする基準を設ける。また部活動では休養日を定め、授業前の朝練習は原則禁止にします。この取り組み期間は2020年度までとしました。

 朝練が中学生の成長にどのような影響を与えるのか、知人が紹介してくれた海外の記事を紹介します。
 「Lifehacker US」に掲載された「Schools Should Start Later When Teen Brains Are Ready to Learn」との記事の日本語訳を引用します。

中学や高校の始業時間はもっと遅らせるべき
2017.09.17
Image: Stuart Monk/Shutterstock.com教室で10代の若者たちが居眠りをするのには理由があります。それは、最後のコマが数学の授業だからではありません。彼らは純粋に眠いのです。
なぜ眠いかといえば、学校がはじまる時間が早すぎるからです。
毎朝7時に学校に行かなければいけない生徒たちのために、中学や高校の始業時間を遅らせようという運動が⾧い間続けられてきました。
運動の主体となっているのは、米国小児科学会、米国心理学会、米国立睡眠財団、米国疾病予防管理セ ンター(CDC)などの団体です。しかし、未だほとんどの地域で、学校のスケジュールは青少年期の生物学に合致していないのが現状です。
幼い子どもは基本的に早起きですが、思春期になると睡眠覚醒周期に変化が表れ、10代の若者の大部分が、夜11時から朝の8時に最も良質な睡眠をとるようになります。
もし生徒たちが朝の6時に起きなければならないとすれば(あるいはバスに乗る ためにもっと早く)、毎日2時間以上の、回復できない睡眠負債を積み重ねていくことになります。
Learning, Media and Technology に掲載された研究では、「思春期後期の生徒の朝7時は、50歳代の教師の朝4時半に相当する」という結論が出ています。 当然ながら、うつ病や肥満、偏頭痛、免疫力の低下といった、不十分な睡眠と関 わりのある問題が引き起こされるリスクもあります。また、十分な睡眠を取っていない十代の若者は、交通事故を起こしたり、喫煙、飲酒、薬物乱用などの危険な行動をとる可能性が高くなります。
良いニュースは、事態がようやく動き出したことです。45の州の学校が、健康ガイドラインに従って開始時間を遅らせようとしています。カリフォルニア州では、中学と高校の始業時間を朝8時30分より早くしてはならないとする法案が議論されています。こうした動きから恩恵を受けるは生徒たちだけではありませ ん。ランド研究所による最近の調査で、始業時間が全国的8時30分になれば、 米国経済に10年で830億ドルの貢献があることがわかりました。もちろん生徒たちの学業成績もアップし、より健康で安全に過ごせるようになります。
とはいえ、反対意見もあります。一部の人たちは、始業時間を遅らせることで、課外授業の時間がなくなってしまうことや、親が仕事に遅れてしまうこと。また、全校生徒に同時に授業を受させるスペースがなく時差通学が必要な学校があることなどを懸念しています。
Start School Later はサイト上で、そうしたさまざまな懸念に対し答えを提示しています。親たちにも大切な役割があります。スマートフォンやテレビを見る時間を制限したり、良質な睡眠がとれるようサポートすることです。
Image: Stuart Monk/Shutterstock.com
Source:Taylor & Francis Online, RAND Corporation, Start School Late
Michelle Woo - Lifehacker US