副作用のイメージ
 薬の副作用による被害をできる限り抑えたい。厚生労働省は平成30年4月から、医薬品の副作用を迅速に把握するため、医療機関が保有する処方状況や患者の診療に関する情報を収集・解析できる「医療情報データベース」MIDーNET(Medical Information Database Network)の本格運用を開始しました。
 医療情報のデータベース化は、薬害C型肝炎などの被害者が要望を重ねてきたものであり、公明党も実現を訴えてきました。医薬品の安全性向上に貢献するものとして期待されています。
 MIDーNETは、電子カルテや診療報酬明細書から氏名など個人情報を削除したものを、国が医療機関から提供を受けてデータベース化し、薬を投与された患者にどのような症状が出たのか把握する仕組みです。
 この情報を、国はもちろん製薬会社や研究者が調査・解析し、医療機関への迅速な注意喚起に役立てて被害の拡大を防ぐ仕組みです。
副作用
 ここで注目したいのは、国が医療現場から情報を、直接収集できるようにした点です。
 副作用に関する情報はこれまで、医療機関からの報告をもとに主に製薬会社が把握してきました。しかし、患者の症状が疾病によるものか副作用によるものかの判別は難しく、医師が副作用を疑わなければ報告されませんでした。
 過去には製薬会社が報告を怠った事例もあります。製薬会社には、患者の死亡や障がいが副作用によるものと疑われる場合、国への報告が義務付けられています。しかし、2015年には大手製薬会社が5000件以上の重い副作用を報告せず、15日間の業務停止を命じられました。
 厚労省のまとめによると、2015年度に国が受けた医薬品の副作用報告のうち、医師や薬剤師など医療従事者からの報告は6129件だったのに対し、製薬企業からの報告は5万977件。企業からの報告は医薬品の安全対策の要ですが、過去を振り返っても報告漏れは後を絶ちません。
 2015年、ノバルティスに調査を行ったところ、26製品で3264例に上る報告漏れがあったことが判明。2015年3月、副作用報告義務違反としては初めて、業務停止命令(15日間)を受けました。同じ年の11月には57製品5475例の報告漏れが新たに分かり、業務改善命令の処分を受けています。
 こうした教訓から、医療機関や製薬会社の報告だけに依存せず、国が直接情報を収集することになりました。
 既に米国の食品医薬品局(FDA)は約2億人の大規模なデータベースを構築し、服薬による重篤な出血例の掌握などで実績を上げています。
 現在、データベース化に協力するのは全国の23病院で、患者数は400万人に上ります。希少な疾病に関する薬の副作用の解析には、まだ足りないとされています。今後は対象病院の拡大が焦点になります。
 極めて高度な個人情報を扱うだけに運用に関する透明性を可能な限り確保し、国民の信頼を得る努力も不可欠です。
参考:独立行政法人医薬品医療機器総合機構
https://www.pmda.go.jp/safety/info-services/drugs/adr-info/0001.html
参考:MID−NET(Medical Information Database Network)
https://www.pmda.go.jp/safety/mid-net/0001.html