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権利制限適正化法案、公務員や警備員、医師、介護士 一律の失職、資格剥奪を防ぐ
 成年後見制度は2000年にスターとしました。それまでは禁治産制度でした。明治以来のこの制度では、心神喪失状態の人に裁判所が禁治産と宣告すると、さまざまな法律行為が制限されました。選挙権含め、約150にも上る「欠格条項」がありました。「ただし禁治産者を除く」というような条文がさまざまな法律に書き込まれていたのです。
 禁治産制度から成年後見制度に移行しても、この欠格条項が残り問題となっていました。
 特に、選挙権が剥奪されてしまうことは大きな問題となり、2013年に公職選挙法が改正され、その年夏に行われた参院選から適用されました。知的・精神障害者や認知症の人を中心に、2012年末時点で約13万6400人にも上る人々が、一律に選挙権を回復し、投票できることとになりました。
 公職選挙法はいち早く改正されましたが、残っている欠格条項を一括して削除する「成年被後見人等権利制限適正化法案」が閣議決定され、関係者から今国会での成立が期待されています。
 成年後見制度は、認知症や知的障がい、精神障がいなどで判断能力が十分でない人の財産や権利を法律的に守る制度です。にもかかわらず、利用すると一律に公務員や警備員の職を失ったり、医師や介護士の資格を失ったりするのはおかしい。かえって制度を利用する人の権利を制限しています。
 成年後見制度を利用して、実際に仕事や資格を失った事例が各地に存在します。中には、国を相手に訴訟を起こすケースもあり、障がい者団体などからは、早急な対応が求められてきました。
 そもそも、成年後見制度は財産管理能力に着目した制度であり、各資格や職種に求められる能力とはズレがあります。成年後見制度を利用しただけで排除されてしまうのでは、能力を発揮する機会を奪われているといっても過言ではありません。
 見直しのポイントは、国家公務員法や医師法など188本の法律を一括して改正し、制度利用者を一律に「職務不適格者」として排除している仕組みを改めます。そして、試験や面接などで、それぞれの心身の状況に応じ、職務に必要な能力の有無を判断する個別審査を設けます。これにより、制度利用者が自動的に仕事を奪われることはなくなります。
 公明党はこの欠格条項問題に、約5年半にわたり議論を重ね、権利制限適正化法案の基となった成年後見制度利用促進法の制定を実現したほか、制度利用者の選挙権回復などにも力を尽くしてきました。
 また、党の強い主張が反映され、適正化法案の付則には、今回は対象外となった会社法と一般社団・財団法人法の2法の欠格条項についても、公布後1年以内を目途に削除することが明記されました。
 欠格条項が削除されれば、成年後見制度を利用しながら働く人が増えると期待されます。党として、判断能力が十分でない人が働きやすい環境の整備を進めていきます。そのためにも、何としても、今国会での適正化法案の成立をめざしたいと考えています。