大川小学校
 子どもたちの命をいかに守るか。学校の防災対策のあり方を今一度、見直したい。
 東日本大震災の津波で亡くなった宮城県石巻市立大川小学校の児童の遺族らが市と県に賠償を求めた裁判で、仙台高裁は、学校側の防災体制に不備があったことを認めました。
 1審の仙台地裁は地震後の避難についての過失を認めましたが、仙台高裁は、地震発生前の防災対策も不十分だったとして1審より約1000万円多い賠償を市と県に命じました。
 公明党の井上義久幹事長が「さまざまな危険に対応できる体制整備を求めた判決」と指摘する通り、国をはじめ、自治体や教育現場は重く受け止める必要があります。
 そもそも学校の安全対策については、学校保健安全法で、防犯面も含めた「危機管理マニュアル」の策定を学校に義務付け、関係機関と連携するよう求めています。
 ここで大事なことは、マニュアルが万一に役立つのかどうか、検証作業を怠ってはならないということです。
 大川小のケースでは、津波襲来の7分ほど前に市の広報車が津波が来ていることを告げていましたが、児童らは標高の高い裏山には避難しませんでした。市が作成したハザードマップで、大川小が津波の予想浸水域外に立地していたことが理由の一つとみられています。
 学校と市の連携がしっかり取れていれば被害は防げたかもしれません。地域が一体となった協力体制を築くことの重要性を改めて痛感します。
 この点、南海トラフ巨大地震に備えた高知県のある小学校の取り組みを紹介します。高知県の小学校では2016年度に、避難生活や炊き出しの訓練を地元消防団などと連携して行ったほか、識者の指導の下、学校周辺の危険箇所を調査し、防災マップにまとめて地元住民に配布しました。
 政府も、昨年(2017年)3月に策定した「第2次学校安全推進計画」や、今年度の学校安全総合支援事業で、学校と保護者、地域住民、外部専門家らとの連携体制の構築を強く推進しています。
 大川小の悲劇を繰り返さないために、学校が地域と協力して実効性のある対策をどう構築するか。この課題に関係者は真剣に向き合うべきです。